熊 各地で被害相次ぐ 対策は地域ぐるみで

6月下旬、集落と山の境に仕掛けていた、イノシシ用の檻の付近に出没した熊。檻に設置していたカメラが夜間に捉えた(富山県立山町で=同町農林課提供)

 各地で5、6月に入り、熊の出没や被害が相次いでいる。岩手県では24日、農作業中の男性が熊に襲われ緊急搬送されるなど、各地で深刻な人身事故が続く。猟友会などが対策するが、熊の捕獲ができる狩猟者は限られ、負担が重くのしかかる。高齢化や担い手不足が進む現状に、専門家は「耕作放棄地の解消など地域ぐるみの対策が必要だ」と指摘する。
 

狩猟者不足、放棄地増加 分布域拡大か


 富山県での目撃、痕跡情報は、6月に既に50件を超え、過去10年で最多だ。5月に猟友会の男性が熊に襲われた上市町では、狩猟免許を持つ人は40人。猟の名人とされる同町猟友会会長、廣島丈志さん(70)によると、「熊の捕獲ができる狩猟者は実質、3人しかいない」という。廣島さんらは、わな免許を取得した若者の捕獲を支援するなど、後継者育成に励んでいる。

 廣島さんは「人里から遠ざけることが肝心。やみくもに捕獲はしたくない」と、思いを話す。狩猟だけで熊の対策はできないと考え、住民らに対し、朝や晩に山際に出歩かない、誘引する果樹の早期収穫などの対策を呼び掛ける。

 熊の捕獲には、第1種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)が欠かせず、大きな熊の捕獲に使うことの多いライフル銃の所持は、散弾銃の10年以上の所持実績が原則必要となる。しかし、全国的に銃の狩猟者の高齢化が進み、ライフル銃を扱える人は年々減っている。

 一方、耕作放棄地の増加などで「分布域が広がっているのではないか」(西日本の複数の県担当者)との見方が広がっている。

 生息頭数が900頭まで増え、3年前から熊の捕獲を始めた兵庫県。姫路市では、昨年0件だった同時期の目撃が、今年は22日現在、既に9件。地元の猟友会が対応に追われる。同県猟友会姫路支部の支部長で、狩猟歴約40年の橋本景毅さん(69)は「行政からの打診があれば、曜日関係なく出動しないといけないが、高齢化も著しく狩猟者不足が深刻だ。民家の近くへの出没情報もあり、住民の不安感を少しでも解消したい」と見据える。
 

電気柵、ゾーニング 知恵絞る


 各地で対策が進む。富山県立山町では昨年、希望した高齢者10人の家の柿の木、65本を役場職員が伐採した。同町の担当者は「伐採により、今年以降の熊被害が少しでも減ればと願っている」と話す。

 岩手県では鶏が襲われたり、小屋が壊されて米を食べられたりと農業被害が発生。同県釜石市では24日、農作業中の男性が熊に襲われて大けがをするなど、人身事故が続く。同県では電気柵を設置、防災無線による注意喚起、猟友会や警察による巡回を実施する。

 秋田県では4月以降、197件の目撃情報が寄せられている。北秋田市では21日、近くの農業用ため池の様子を見に来た70代男性が襲われ、右手首を骨折した。同県は、人と熊の生活圏に緩衝帯を設けてすみ分けをするゾーニング管理の構築や、熊を追い払うベアドッグの導入などを検討する。

 福島県では放置された生ごみや果樹の除去、里山の刈り払いで熊が隠れる場所をつくらないなどの対策も呼び掛ける。
 

「出没減」予想も警戒緩めないで


 森林総合研究所東北支所動物生態遺伝チームの大西尚樹チーム長の話

 昨年はドングリやブナの実など山の実りが少なかったことで熊の出没はかなり多かった。実りの悪い年が2年続くということはないため、今年の熊の出没件数は少なくなると予想される。ただ、一昔前と比べると生息頭数が大きく増えており、出没数が少ないから安全だという認識は危ない。

 また、(一部で指摘される)昨年の暖冬が熊の出没に変化を及ぼすことはない。生物学的に、多少の気温の変化があっても、熊の行動に大きな影響を与えない。

 今後は、柵の設置や耕作放棄地の解消など、地域ぐるみの熊対策が求められる。熊の出没情報が多い朝と夕方の薄暗い時間帯は、目撃された場所の付近には近付かないよう、基本的な対策も進めてほしい。
 

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