緊急事態全面解除1カ月 「第2波」へ警戒感 販売回復でも戦略見直し

 新型コロナウイルス禍に伴う政府の緊急事態宣言の全面解除から、25日で1カ月。業務筋を中心に落ち込んでいた農畜産物の販売が、飲食店などの営業再開を受け、徐々に盛り返してきた。一方、感染拡大の第2、第3波への懸念も強く、苦戦は長期化する見方もある。外食や小売りは、「新たな生活様式」の中で家庭需要の高まりが続くとみて、総菜などの中食や家庭用内食の対応を強める。産地、実需とも戦略再考が求められる。

 切り花相場は、6月に入り回復した。24日の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1本53円で、過去5年平均(平年)を4円上回る。「飲食店や繁華街の営業再開で人の動きが戻り、販売先は少しずつ増えてきた」(都内卸)。ただ、業務需要の低迷は続き、相場回復に向け、産地が作付けや出荷の調整に努めている背景もあり、楽観はできない。

 野菜は業務需要が動き出し、相場低迷していた商材が回復。出荷調整を余儀なくされたタマネギは、6月下旬(23日まで)の日農平均価格が1キロ81円と平年比で1割以上高い。5月は3割安だった大葉も、1キロ2596円と平年を上回る。卸売会社は「外食の営業再開直後は活発に動いたが、最近は鈍め」と慎重だ。

 高級果実の相場は回復傾向にある。3、4月の日農平均価格が平年比3割安だったメロン「アールス」とマンゴーは、5月から回復傾向で、6月下旬(23日まで)は平年並みに戻った。卸売会社は「底は脱した様子。中元向けの注文も少しづつ増えている」と話す。

 生乳は業界を挙げて加工品への処理を進めた。需給緩和の混乱は回避できたが、脱脂粉乳の在庫が積み上がった課題はある。外食の営業や学校給食向け牛乳の提供が再開し、業務需要は回復してきた。家庭消費も好調で「逼迫(ひっぱく)へと潮目が変わった」(Jミルク)。

 米は、家庭用が「3月の買いだめの反動減で5月の販売は苦戦したが、6月は回復に向かっている」(大手卸)。業務用は落ち込みが深刻で、別の大手卸は「米販売全体では前年割れ」と明かす。

 和牛は高価格帯を中心に荷動きが鈍い。東京食肉市場の6月(24日まで)の枝肉加重平均価格(A4、去勢)は、1キロ1864円と前年比2割安。「裾物は動きだしたが、ロースやヒレの需要回復には長期間かかる」(市場関係者)。焼き肉セットの通販など、家庭消費を促す販売戦略への転換が求められそうだ。
 

家庭需要の争奪激しく 持ち帰り、コンビニで野菜…


 外食やスーパー、コンビニエンスストアといった食品を扱う業界は、中食や内食といった家庭需要の獲得に向け、激しい競争を繰り広げている。

 くら寿司は5月から、店舗駐車場の車まで店員が配膳する方式の持ち帰り販売を始めた。店内飲食が減った半面、持ち帰りは4月が前年同月の2倍、5月は3倍となった。6月に入り来店客は回復し始めたが、感染を気にして二の足を踏む客も多い。「新しい生活様式の対応で、持ち帰りによる中食市場は事業のもう一つの柱になる」(広報)とみる。

 リンガーハットは22日から、大阪、兵庫、愛知の3府県18店で、持ち帰り限定商品の発売を始めた。営業時間短縮などで回復途上にある店内飲食を補い、中食に活路を見いだす。ワタミは22日から、持ち帰り主体の新業態を始めた。「居酒屋とは異なる成長の柱」(広報部)とする。

 小売りは内食向けの販売は好調だが、中食分野で外食との競合が激しく、消費の変化に新たな動きで対応する。

 ローソンは、家庭調理向けの生鮮野菜の販売を強化する。家庭で使用頻度の高いタマネギやニンジンなど野菜7種が入った週末使い用のセットを500円で、全国約1万5000店舗で販売。26日から毎週金、土曜限定で特設売り場を設置する。これまで青果物販売は一部店舗だけだったが、5月の青果物の販売高が前年比で約2割増え、強化に踏み切った。

 巣ごもり消費を受けて食品販売が好調なスーパーは、次の一手を探る。セブン&アイ・ホールディングス傘下の食品スーパー、ヨークは、内食向けに、ブランド和牛やこだわりの生鮮、ミールキットなどをそろえる。同社は「内食需要が盛り上がる中、こだわり商品のニーズは高い」と付加価値のある商品の品ぞろえの強化で、他社との差別化を狙う。

おすすめ記事

経済の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは