リーダーに必要な資質の一つに、演説がある

 リーダーに必要な資質の一つに、演説がある。言葉に説得力がなければ、民衆を引っ張ることはできない▼今年3月、コロナ対策で国民に外出禁止を呼び掛けたドイツのメルケル首相のテレビ演説は、後世に語り継がれるに違いない。「私たちの社会は、一つ一つの命、一人一人の人間が重みを持つ共同体なのです」「全員が当事者であり、私たち全員の努力が必要なのです」。厳しさと温かさと。これを聞いて、家にこもる、買いだめしないという国民が増えたという▼ドイツの致死率は、EUの中で驚くほど低い。集中治療室(ICU)の病床が人口当たりで、仏や伊の2、3倍もあったこともあるが、首相のスピーチが国民の連帯意識に訴えた成果だ、との指摘が多い。美辞麗句を重ねただけでは、こうはいかない。重要なのは国民を思う心である▼1874年のきょう、慶応義塾の三田演説館で日本初の演説会が行われた。「スピーチ」を「演説」と名訳した福沢諭吉は、話し手と聞き手が心を通わす演説の大切さを説いた。教えは根付いたのか、安倍晋三首相の乾いたような演説を聞くたび、心もとなくなる。解散風が出始め、政治家の演説力を問う機会が近づく▼選挙用の舌先三寸にごまかされないよう、聞く力も鍛えておかなければ。

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