農村政策の検討 均衡ある国造り目指せ

 人口減少と高齢化で衰退する農村の再生を目指す農水省の検討が始まった。同省が政府全体の司令塔となって、バランスの取れた国造りと景気対策につながる農村政策の確立を望む。

 検討は、新たな食料・農業・農村基本計画で、手薄だった農村政策を総合的に論議し必要な施策を実施するとしたことを受けた。研究者や学識経験者、自治体の首長などによる検討会を設け、論議を始めた。

 国全体の視点での検討を求めたい。農村振興には地方分散型の国造りが必要となる。新型コロナウイルスなどの疫病防止のためにも、バランスの取れた国土利用が不可欠だ。東京都の人口は5月1日時点(推計)で1400万人を超えた。東京一極集中は新型コロナ禍下でも続いている。政府・与党は国政選挙のたびに地方創生を掲げ地域政策の充実を強調してきたが、効果が上がっているとは言い難い。

 地方創生事業は各省からの寄せ集めが多い。基本計画では、①所得と雇用機会の確保②安心して住み続けられる条件整備③新たな活力の創出──を3本柱に、「地域政策の総合化」を掲げた。農水省を核に関係府省が連携し、現場の実態や課題、意向を踏まえて、体系的で効果的な施策を打ち出すべきだ。

 農村への定住を増やすには、一定の所得を確保できる環境が求められる。農業だけでは生活できない現実もある。「半農半X」など農業収入に上乗せできる収入源や、組み合わせができる仕事の確保が必要だ。雇用創出と産業振興を強化すべきだ。また、遅れている情報インフラに加え、トイレや台所、風呂の汚水を処理する施設など住環境の整備を急ぐ必要がある。医療・福祉、教育、交通をはじめ生活環境の充実も欠かせない。

 都会の若者には、地方を目指す「田園回帰」の機運が生まれ、農村や地域と多様に関わる「関係人口」も増え出した。新型コロナ禍で「3密」の少ない農村生活への関心も高まっている。追い風を生かすべきだ。

 農村振興と景気対策を結び付けた政策も打ち出すべき時だ。新型コロナの世界的な感染拡大で、輸出主導の景気回復は難しい。農業の生産基盤の強化や基盤整備、農畜産物の国内消費の拡大などに必要な農村への投資を積極的に行うことは、内需主導の景気対策にもなる。

 行政の在り方も見直すべきだ。市町村は昭和から平成の大合併で激減。1万を超えていたが1700台になった。職員の数も15年間で10%以上も減少。地域の農林水産業を支える職員数は27%も減った。現場からは「手が回らない」との悲痛な訴えが届く。自治体の体制強化と国の支援の拡充が必要である。

 安倍晋三首相は国会閉幕後の会見で「集中から分散へ、日本列島の姿、国土の在り方を、今回の感染症は、根本から変えていく、その大きなきっかけである」と述べた。認識は正しい。問題は政策と実行力である。
 

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