梅雨時に合う花である。しとしとと降る雨に趣が加わる

梅雨時に合う花である。しとしとと降る雨に趣が加わる。〈紫陽花(あじさい)にきのふ紅さして今日はいかに〉子規▼学名の「ハイドランジア・マクロフィラ」のハイドランジアは水を入れる器を、マクロフィラは大きな葉を意味する。雨水をいっぱい吸い込んで広げるイメージにぴったり。江戸時代に、長崎で西洋医学を教えたシーボルトがほれ込み、愛した人をもじった名前まで付けた。欧州に紹介したことでも、有名である▼先日、アジサイの名所、埼玉県幸手市の権現堂堤を訪ねた。恒例の祭りは新型コロナで中止となったが、100種1万6000株の花は、色とりどりに咲いていた。綿帽子のような真っ白な「アナベル」が、一面を覆う景観は爽快である。蒸し暑さになえた気分も、晴れやかに。シーボルトの思いもこんなだったか▼きょうは、『放浪記』を書いた作家林芙美子さんの命日。少女時代を過ごした広島県尾道市では、「あじさいき」としてしのぶ。社会の底辺に生きる庶民を慈しむように描いた作品に、名作が多い。貧困にあえぎながらも、向上心は失わなかった。その変幻自在の生き方を、この花に重ねる▼アジサイは、色が七変化するという。新型コロナの第2波、3波を恐れて沈みがちな心に、希望の虹を架けてくれ、と願う。
 

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