[新型コロナ] コロナ禍、高まる“移住熱” 数より心の交流  

移住者の受け入れ対応を話し合う「まちづくり推進隊財田」のメンバー(香川県三豊市で)

 新型コロナウイルス禍で、過密な都会から農山村移住への関心が高まっている。大手メディアも“コロナ移住”として注目し、「東京一極集中是正のチャンス」との声も上がる。ただ、移住者の受け入れに熱心の地域や移住の相談窓口は「移住者数を増やすだけでは地域は幸せにならない」などと冷静に受け止め、一過性ではない関係づくりを目指す。
 

一極集中是正の好機か


 田んぼから見上げると讃岐山脈が広がる香川県三豊市財田町。果樹を栽培する橋本純子さん(54)が「この風景、人が大好き。だから引っ越しする人を増やすことより、共感してくれる移住者を受け入れたい」と思いを話す。橋本さんは5年前に大阪から移住。現在は地域の自治組織「NPO法人まちづくり推進隊財田」の理事で、就農者や移住者の受け入れ支援に携わる。

 山に囲まれ、3800人が暮らす中山間地域の同町。地域自治を進める橋本さんらにとって、引っ越しと移住は異なる。住居を変えるだけでなく「農山村の暮らしに溶け込み、地域を理解する移住仲間を増やしたい」と考える。

 過密な都会の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたコロナ禍。内閣府が6月に発表した調査では、コロナ禍を契機に地方移住に関心が高くなった20代は3割に上った。
 

現場冷静「焦らず継続」


 各地にもこれまでとは異なる問い合わせがある。「不動産関係者から別荘に関する問い合わせが多い」(関東の自治体)「地域おこし協力隊や就農支援事業の希望者が増えている」(近畿の自治体)。一部の自治体担当者からは「移住者を増やす一大チャンス」との声も漏れる。

 しかし同法人は状況を冷静に見る。横浜市から移住した同法人事務局の大石秀子さん(44)は「人生観が変わり、地方暮らしの価値に気付いた人はいるはず。でも数を増やすのではなく、一人一人と丁寧に向き合う移住支援をしたい」と話す。

 コロナ禍で、移住希望者向けツアーや地域住民の話し合いはできていない。法人は、これまでのような交流は難しいが、移住相談はテレビ電話で応じ、インターネット交流サイト(SNS)などで田畑や農作業など日常を発信し、地域の魅力を伝える。同法人事務局長で農家の大西義見さん(63)は「移住者の視点は今後も必要。子どもや若者の声が地域をにぎやかにする」と、地域づくりは「焦らず継続すること」が肝心とみる。

 総務省の地域力創造アドバイザーを務める泉谷勝敏さん(46)は、全国138の自治体や民間団体が参画した「オンライン移住フェア」を5月末に企画した。フェア以降、泉谷さんは大手メディアなどから“コロナ移住”の取材をほぼ毎日受けている。

 高まる“移住熱”について、泉谷さんは「移住したいけれど難しかった都会の人々が、在宅勤務を機に現実的に移住を検討するようになった」と分析。その上で「一過性で移住者数を増やしても農山村は疲弊するだけ」とくぎを刺す。

 東京・有楽町で移住者の相談に応じる、ふるさと回帰支援センターにも取材が相次ぎ、就農希望者らの問い合わせは増えている。

 同センターの嵩和雄副事務局長は「コロナ禍で地域と都会の行き来が難しいからこそ、住宅提供だけではなく、地域の理解を深める関係づくりが重要となる」と指摘する。
 

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