[あんぐる] 折り目正しく 坂元棚田(宮崎県日南市)

小松山の麓に整然と並ぶ石垣が特徴の「坂元棚田」。棚田の中央に馬が通った道が残る(宮崎県日南市で)

 宮崎県日南市。市内の最高峰、小松山の麓に長方形の石垣田が整然と並ぶ。「坂元棚田」は昭和初期に完成し、“最後の棚田”とも呼ばれる。地元農家らがこつこつと積み上げて造った耕地は直線の多い造形で、南国の緑深い自然と調和する。地域ならではの景観を残そうと、酒谷地区の農家らは「坂元棚田保存会」を組織。棚田オーナーの助けも借りながら稲作を続ける。

 坂元棚田は、標高255~315メートルの中山間地に位置する。小松山の斜面地に開かれた上部の「坂元上」と下部の「坂元前田」で構成し、合わせて約110枚。高さ約2メートルの石垣は全27段に達する。総耕作面積は6ヘクタール。水田1枚当たりの面積は約5アールだが、傾斜が急な箇所では約3アールと小さくなる。

 造成が始まったのは1928年。かや場を水田に転換し、食料増産につなげる狙いだった。工事が始まった当初は職人を招いていたが、途中から酒谷地区の農家が作業を担うようになった。家族総出でも水田1枚の完成に1年かかったという。石は全て現地で調達した。

 馬耕を前提とした造りが特徴だ。直線が多い棚田になり、農機での作業もしやすい。保存会会長の古澤家光さん(75)が「かつては、どの家も馬を飼っていた。馬が効率的に農作業ができるように区画や農道を整備したからだ」と説明する。
 
高さ2メートルを超える石垣。古澤さんは「石の積み方に、積んだ人の性格が出ている」と笑顔を見せる

 稲作は棚田オーナーら県内を中心とする都市住民との共同の取り組みとなっている。品種は「ヒノヒカリ」で、年間収量は約27トンになる。25組のオーナーに配る他、道の駅でも販売。棚田米を使った地元の酒造会社が造る地ビールは広く人気を集める。

 ただ、台風や大雨のたびに石垣が崩れたり、水路が詰まったりするため、手入れが欠かせない。保存会の坂元実さん(65)は「水路を補修した回数は数え切れない。過去には大規模整備事業も行われた」と話す。それでも、国の重要文化的景観にも選ばれた宝を守っていこうと、地域は団結している。(釜江紗英)

「あんぐる」の写真(全4枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます
 

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