アフターコロナ 変わる「日常」に希望 早稲田大学大学院教授 片山善博

片山善博氏

 新型コロナウイルスの影響で、生活様式や仕事の在り方に大きな変化が起こっている。筆者が勤務する大学では今、授業の全てがオンライン方式。教室で行っていた授業を自宅のパソコンを通じて行うのである。

 習熟するまでには人に言えない苦労もあったが、軌道に乗ると意外に利点が多いことに気付かされる。なんと毎回の授業の出席率はほぼ100%だし、質問も次々出てくる。対面授業よりもかえって引き締まった印象すらある。
 

在宅のメリット


 企業でもテレワークや在宅勤務が随分進んだ。知り合いに尋ねてみると「家での仕事は落ち着かない」「仕事の始めと終わりのけじめをつけにくい」などいろんな問題はあるものの、なじんでくると決して悪くないという。生産性が落ちるわけではないし、何より満員電車での通勤苦から解放されたのがうれしいそうだ。家族と過ごす時間も増えたという。

 確かに、緊急事態宣言中は、いつもはラッシュアワーの時間帯に電車はがらがらだった。のみならず街を往来する自動車の数も激減した。おかげで空気はきれいで空は青い。コロナ対策は地球温暖化対策に寄与すると、識者が指摘していたほどだ。

 現在、緊急事態宣言は解除され、世の中は日常を取り戻しつつあるものの、生活や仕事が以前と全く同じ状態に戻ることはおそらくないと思われる。先の授業でいえば、学生(筆者が担当しているのは大学院生のみ)は、コロナが終息してもオンライン方式を続けてほしいという。
 

一極集中是正へ


 企業はテレワークや在宅勤務の評価を行っている。社員アンケートなどを通じて長所、短所、問題点などを分析するのである。その上で、できるだけテレワークや在宅勤務を続けたいという企業は少なくない。それが定着すると、わざわざ地価や生活費が高い東京に住む必要はなく、地方への移住がこれまでになく現実味を帯びてくる。筆者の知り合いの中にも、既にそんな計画を進めている人がいる。これは東京一極集中の是正と地方振興の着実な一歩につながるはずだ。

 最近目立つのは通勤時間帯の自転車の多さである。満員電車は感染リスクがあるので、自転車通勤に切り替える人が増えたのだろう。事故には十分注意しなければならないが、地球温暖化対策の一助にはなる。

 先に触れた通り筆者はほぼ毎日自宅で仕事をしているおかげで、ベランダ農業にたっぷり時間を費やすことができるようになった。意欲的に栽培品目を増やし、新たにパッションフルーツを導入した。沖縄で飲んだフレッシュジュースの味が忘れられないからだ。

 東京でパッションフルーツが育つのは地球温暖化の影響に違いないのでいささか複雑な気持ちではあるが、ポストコロナ時代の新しい生活習慣の中にベランダ農業は定着させるつもりである。

 かたやま・よしひろ 1951年岡山市生まれ。東京大学法学部卒、自治省に入省し、固定資産税課長などを経て鳥取県知事、総務大臣を歴任。慶応義塾大学教授を経て2017年4月から現職。著書『民主主義を立て直す 日本を診る2』(岩波書店)。
 

おすすめ記事

論点の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは