ため池新法1年 管理も追い付かず 届け出まだ8割

「大地面下池」の取水施設で、池の水位を調節する市の職員(広島県東広島市で)

 ため池の適正管理と保全を促す「農業用ため池管理保全法」の施行から7月1日で1年。ため池の民間所有者らに都道府県への届け出を義務付けたが、5月末現在で届け出は76%にとどまることが分かった。ため池が多い西日本ほど届け出が進んでいない。一方、自治体が把握していないため池が見つかる事例も出てきた。豪雨災害が増える時期、自治体は、届け出と適切な管理を呼び掛ける。(鈴木薫子)

 農業用ため池は、全国に15万9543カ所(5月末現在)ある。同法では施行日(2019年7月1日)から6カ月以内の同年12月末までに民間所有のため池の届け出を義務付けた。

 対象は全体の7割に当たる10万9160カ所。農水省によると、5月末現在で届け出たのは8万3319カ所で、約2万5800カ所が未届けだ。各県の届け出の割合は、ため池数が全国で最も多い兵庫県が60%、次に多い広島、香川県が63%、岡山県が80%、山口県が60%と、数が多い県で苦戦。自治体は届け出の呼び掛けを続けるが「所有者や管理者の代替わり、高齢化が影響している」(岡山県耕地課)という。

 18年7月の西日本豪雨で約150カ所のため池で決壊や土砂流入の被害が出た広島県東広島市。市河川港湾課の職員が6月中旬、同市志和町の「大地面下池」を訪れた。大雨警報が出た翌日で、水路や水位を調節する取水施設は落ち葉や泥で詰まりかけ、掃除に追われた。

 ため池は20年以上使われず、昨年9月に廃止届けが出された。自然災害で人的被害が生じる恐れがあるとして、市は「防災重点ため池」に指定する。水田が点在する集落を囲む山中に位置し、山道は険しく急斜面もある。共有池で水利権者は数人いるが、高齢化により管理は難しく、2年前から市職員に見回りを頼む。

 同課で出向く職員は3人。伊藤智主任技師は「管理指導を基本とし、できる限りの作業は手伝いたい」と話す。だが、市内には県内最多の4080カ所のため池があり「定期的に見回るのは難しい」と漏らす。

 同市の届け出率は5月末現在で58%。防災・減災へ、廃止や改修などの判断をするためにも、「まずはため池の情報を明らかにする必要がある」(伊藤主任技師)と届け出を呼び掛ける。
 

防災へ全容把握急務


 届け出で新たなため池が見つかるケースも増えた。届け出率100%の県は、ため池が少ない関東や北陸を中心に20県。島根県では、把握していないため池が89カ所見つかった。届け出をスムーズにするため、県のデータベースを基に届け出書を所有者や管理者に送付し、変更点を記入して返送してもらった。届け出書を受け取った所有者らが他のため池も申請した例があり、「データベースに未登録のため池も発覚した」(県農地整備課)という。

 西日本豪雨ではため池が決壊し、幼い子どもの命を奪った災害も記憶に残る。農水省防災課は「ため池の正確な数や現状を把握するためには、届け出が急務」と訴える。
 

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