“共助交通”里山走る 資金出し合い 住民でカーシェア 行政も導入後押し

地域で車を共有し、ボランティア運転手が高齢者の通院などを助ける(岡山県美作市で)

 地域住民で自動車を共同利用し、免許を返納した高齢者や交通弱者などを支える「地域カーシェアリング」が農村で広まっている。グループで資金を出し合って運行したり、地場企業が病院などに自動車を配置したりといった事例が出てきた。地元住民による“共助交通”が里山の暮らしを支えている。(鈴木薫子)
 

運転は若手ボランティア 高齢者支える


 最盛期には8300枚の棚田が広がっていた岡山県美作市上山地区。地元農家ら44人でつくる生活支援組織「助け英田(あいだ)しちゃろう会」は、軽自動車1台を所有し、地域の高齢者らをサポートする。

 通院や地域サロンへの送迎などでの利用が多い。1キロ当たり100円を徴収し、活動費用として積み立てる。1回の利用上限金額は4000円。運転は主に若手農家らのボランティアが担い、10人が登録する。電話予約制で、1日2回の利用もあり、手の空いた運転手が対応する。

 同地区は山間部で、病院や市街地から20キロ離れている。民間の乗り合いタクシーはあるが、緊急時の素早い対応が難しい。しかし、「カーシェアで移動手段の選択肢が増え、病気など緊急時にも運転手の誰かがすぐに対応できる」と、同会に所属する水柿大地さん(31)は地域で運営する利点を強調する。

 同会は、地域で車をシェアする「コミュニティ・カーシェアリング」を進める日本カーシェアリング協会から指導を受けた。燃料代などは積立金と市の助成で賄う。

 同協会は東日本大震災後に宮城県石巻市の仮設住宅から始め、東北や中国地方など17地域に広がった。移動に課題を抱える650人以上が使う。運転手としてボランティアに取り組む人からも「地域活動に参加するきっかけになる」など、前向きな意見が多い。

 車両は寄付車を活用。カーシェアを実践するグループへリースする。日頃の買い物や通院だけでなく、小旅行など交流活動にも活用されるという。同協会の吉澤武彦代表は「高齢者や交通弱者の孤立を防ぐ地域コミュニティーづくりにつながる」と訴える。

 導入を自治体が後押しする例もある。鳥取県では4月に大山町と倉吉市でカーシェアをスタート。県が中心となって、グループやルール作りを支援した。今年度も県事業を活用し、新たな自治体が導入を検討する。 広島県府中市上下町の車の整備会社・堀田輪業は「里山カーシェアリング」を展開する。2007年に始め、会員数625人と、町の人口の15%を占める。現在は自動車5台と電気自動車8台を、同町と隣町の三次市甲奴町に配置。会員であれば、インターネットで予約して使うことができる。

 上下町の府中北市民病院には電気自動車2台を置く。15分200円で、介護福祉士らが訪問看護などに使う。近距離のため1回の利用は10分と短い時もある。同病院地域医療連携室の関岡孝弘主査は「公用車に比べ、管理や維持費がかからず、安心して使える」と歓迎する。堀田輪業の堀田佐知彦社長は「車を持たない住民らを支援し、排ガスの排出を抑え、中山間地である上下町のきれいな里山を守りたい」と意気込む。

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