豚熱イノシシ拡大じわり 19年12県→20年17都府県 1カ月当たり感染頭数減も 各地、防疫を徹底
2020年07月17日

豚熱に感染したイノシシの生息範囲が、じわり拡大している。岐阜などでは感染確認頭数のペースは大幅に減っているものの、東京や京都、新潟などでは今年に入って感染が発覚。昨年までの12県が、今年は17都府県147市町村に広がった。各都府県はイノシシへの経口ワクチンの散布、養豚農家らは防護柵の設置や消毒をして防疫対策を徹底する
2018年9月に岐阜で野生イノシシの感染が確認されてから、20年7月12日までの感染確認頭数の累計は2466頭に上る。このうち20年に入ってからの数は782頭を数える。全国的に見ると1カ月当たりの確認頭数は減少傾向にあるが、生息範囲が広がっている。20年に豚熱に感染したイノシシが新たに見つかったのは新潟、京都(4月)、神奈川(5月)茨城(6月)、東京(7月)の5都府県だ。
上越市と妙高市で計5頭の陽性が確認された新潟県は「長野や富山といった隣県で感染イノシシが出ており、県内での初確認は時間の問題と考えていた。感染防止対策を徹底していく」(畜産課)と気を引き締める。
長野では今年に感染イノシシが確認された市町村が増えており、全77市町村のうち32市町村に上る。県は「広範囲に広がっているため、1700以上の地点に計4回、経口ワクチンを散布した。特に感染の多い南部や中部では捕獲を強化し、重点的に対処していく」(家畜防疫対策室)と説明する。
三重でも感染イノシシが見つかる範囲が広がっている。昨年までの県北地域に加えて今年、松阪市や津市などの中南西部でも確認された。県も、野生イノシシの捕獲と抗体検査の範囲を津市などに拡大。県CSF対策プロジェクトチームは「抗体検査を増やしていく」とする。
昨年春から経口ワクチンを散布してきた岐阜や愛知では、感染イノシシの確認頭数が減少傾向にある。
岐阜では、昨年7月ごろのピーク時は発見・捕獲したイノシシの7、8割が陽性だったが、今年7月1~9日に発見・捕獲したイノシシ全68頭が陰性だった。
県は「経口ワクチンで抗体を持った個体が増え、集団免疫を獲得したことで、ウイルスの拡散を抑えられているためだろう」(野生いのしし対策室)とみるが、警戒は緩めない。
感染イノシシの広がりに対し、農水省もワクチン接種推奨地域を24都府県に拡大した。豚での感染がなく、感染イノシシが見つかっていない和歌山なども対象に加えた。同省動物衛生課は「捕獲の強化や経口ワクチンの散布状況、市街地や高山帯の有無などさまざまな要因でイノシシの感染拡大の状況は変わるためだ」と説明する。
養豚農家の受け止めは多様だ。冷静に構えるのは東京のブランド豚の生産者でつくる「TOKYO X生産組合」の澤井保人組合長。豚へのワクチン接種が進んでいるためだ。「都の支援で防護柵や消毒ゲートの設置なども進めてきた。いよいよ来たかという思い」と話し、防疫に一層、力を入れる考えを示した。
養豚が盛んな茨城では、ワクチンを接種できる家畜保健衛生所の獣医師が慢性的に不足していることに心配の声が上がっている。県養豚協会の倉持信之会長は「生後50日を過ぎたらすぐに接種してほしいが、順番を待っている状態」と話し、接種前の感染を懸念する。牛久市にある常陽発酵農法牧場の櫻井宣育代表も「別の家畜伝染病が発生すれば、家畜保健衛生所はパンクしてしまう」と危機感を強める。
2018年9月に岐阜で野生イノシシの感染が確認されてから、20年7月12日までの感染確認頭数の累計は2466頭に上る。このうち20年に入ってからの数は782頭を数える。全国的に見ると1カ月当たりの確認頭数は減少傾向にあるが、生息範囲が広がっている。20年に豚熱に感染したイノシシが新たに見つかったのは新潟、京都(4月)、神奈川(5月)茨城(6月)、東京(7月)の5都府県だ。
上越市と妙高市で計5頭の陽性が確認された新潟県は「長野や富山といった隣県で感染イノシシが出ており、県内での初確認は時間の問題と考えていた。感染防止対策を徹底していく」(畜産課)と気を引き締める。
長野では今年に感染イノシシが確認された市町村が増えており、全77市町村のうち32市町村に上る。県は「広範囲に広がっているため、1700以上の地点に計4回、経口ワクチンを散布した。特に感染の多い南部や中部では捕獲を強化し、重点的に対処していく」(家畜防疫対策室)と説明する。
三重でも感染イノシシが見つかる範囲が広がっている。昨年までの県北地域に加えて今年、松阪市や津市などの中南西部でも確認された。県も、野生イノシシの捕獲と抗体検査の範囲を津市などに拡大。県CSF対策プロジェクトチームは「抗体検査を増やしていく」とする。
岐阜・愛知 「経口」効果
昨年春から経口ワクチンを散布してきた岐阜や愛知では、感染イノシシの確認頭数が減少傾向にある。
岐阜では、昨年7月ごろのピーク時は発見・捕獲したイノシシの7、8割が陽性だったが、今年7月1~9日に発見・捕獲したイノシシ全68頭が陰性だった。
県は「経口ワクチンで抗体を持った個体が増え、集団免疫を獲得したことで、ウイルスの拡散を抑えられているためだろう」(野生いのしし対策室)とみるが、警戒は緩めない。
獣医師不足に懸念の声 未確認県も警戒
感染イノシシの広がりに対し、農水省もワクチン接種推奨地域を24都府県に拡大した。豚での感染がなく、感染イノシシが見つかっていない和歌山なども対象に加えた。同省動物衛生課は「捕獲の強化や経口ワクチンの散布状況、市街地や高山帯の有無などさまざまな要因でイノシシの感染拡大の状況は変わるためだ」と説明する。
養豚農家の受け止めは多様だ。冷静に構えるのは東京のブランド豚の生産者でつくる「TOKYO X生産組合」の澤井保人組合長。豚へのワクチン接種が進んでいるためだ。「都の支援で防護柵や消毒ゲートの設置なども進めてきた。いよいよ来たかという思い」と話し、防疫に一層、力を入れる考えを示した。
養豚が盛んな茨城では、ワクチンを接種できる家畜保健衛生所の獣医師が慢性的に不足していることに心配の声が上がっている。県養豚協会の倉持信之会長は「生後50日を過ぎたらすぐに接種してほしいが、順番を待っている状態」と話し、接種前の感染を懸念する。牛久市にある常陽発酵農法牧場の櫻井宣育代表も「別の家畜伝染病が発生すれば、家畜保健衛生所はパンクしてしまう」と危機感を強める。
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JAのSNS 国産ファン増へ活用を
JAグループでインターネット交流サイト(SNS)を使った情報発信が広がってきた。多くの読者を抱える公式アカウントもある。手軽に情報収集できるSNSの特性を理解し、受け手が何を求めているかをより意識した発信が重要だ。国産農畜産物やJAのファン拡大に活用しよう。
広く普及しているSNSの一つがツイッターである。国内の利用者数は4500万人に上る。最大140字という制限があり、短文で気軽に読めるのが特徴だ。写真や動画も付けることができる。
JAグループの公式アカウントで注目されているのが、JA全農の「全農広報部『公式』日本の食を味わう」。人気の目安となるフォロワー(登録読者)の数は3月に10万人を超え、4月現在で約10万5000人に上る。
フォロワーが伸びたきっかけは20年4月の投稿だ。新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言や一斉休校で需要が落ち込んだ牛乳・乳製品の消費を促そうと、牛乳とヨーグルト、砂糖を混ぜるラッシーの作り方を紹介。反響が大きく、その後も国産農畜産物を使った手軽なレシピを中心にした投稿で評価を高める。テレビ番組でも紹介され、フォロワーが増え続けている。
SNSを調査・分析し、企業のマーケティングを支援する会社が、企業の公式アカウントをフォローすることで利用者の意識・行動がどう変化したかを複数回答で調べた。その結果、その企業について「より詳しくなった」が48%、「より好きになった」が39%で上位だった。
企業の公式アカウントは一般的にその企業のPRが目的なのに対して、全農は主に国産農畜産物の情報を発信する。この調査結果を全農のツイッターに当てはめると、国産農畜産物のファン獲得につながっていると言える。
担当する全農広報企画課は「自分たちの出したい情報よりも、受け手に役立ったり、面白かったり、ほっこりしたりする情報を出すようにしている」と説明する。伝わりやすい、やわらかい表現を使うことも意識。消費拡大のメッセージを押し付けるのではなく、実用的で共感を呼ぶ内容が受け入れられている。SNSで情報を発信するJA担当者は、参考にしてほしい。
SNSは、広報誌やホームページなどこれまでの媒体に比べてより身近に感じられ、気軽に読まれる。特にツイッターにはリツイートという再投稿機能があり、情報が広がるのが早い。そうした特性を踏まえて内容を考えることが大切だ。一方で事実誤認や不適切な表現などがあれば、非難が殺到する「炎上」のリスクがある。複数担当者でチェックするなどの対策を講じた上で、JAも活用を進めよう。
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2021年04月23日
農地バンク・農業会議合併 新組織「ひょうご農林機構」が誕生 兵庫県
兵庫県の農地中間管理機構(農地集積バンク)である兵庫みどり公社と、県内40市町の農業委員会を束ねる県農業会議が合併し、新組織「ひょうご農林機構」が誕生した。より現場に近い農業委員会のネットワークを駆使し、農地集積バンクとしての機能を強化、農地の集積・集約を加速させる。合併は公社が会議を吸収する形で、「農業会議」を冠した法人がなくなるのは47都道府県で初めて。(北坂公紀)
現場と連携、機能強化へ
新組織は1日付で発足した。……
2021年04月21日
RCEP承認案参院委審議入り 商標保護に期待
参院外交防衛委員会は22日、日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案の審議を始めた。京都府の「宇治茶」など、日本のブランドや地名が中国で勝手に商標登録されている問題を巡り、外務省は同協定によって「商標の保護や模倣品・海賊版の問題が改善されると期待している」と述べた。自民党の佐藤正久氏への答弁。
同協定は参加国に対し、悪意のある商標出願を拒絶・取り消しできる制度を設けるよう規定する。同省は「(各国で)適切な整備、運用がされていない場合は改善を求めていきたい」とした。
茂木敏充外相は「先に国内手続きを終え、他国にも早くやってほしいと働き掛けることは極めて重要」とし、協定発効に向けて日本が早期に承認する意義を強調した。公明党の三浦信祐氏への答弁。
同日の委員会では、参考人の意見も聴取した。慶応大学の木村福成教授は、日本が政治的問題を抱える中国や韓国との初の経済連携協定(EPA)となったことを巡り、ASEANを中心とした多国間協定への参加という形だからこそ「一つの協定の中に入れた」との考えを示した。
みずほリサーチ&テクノロジーズの菅原淳一調査部主席研究員は、RCEPは自由化の水準やルール分野の合意内容が環太平洋連携協定(TPP)などに劣るとして、「発効後の深化(見直し)を日本が主導すべきだ」と述べた。
アジア太平洋資料センターの内田聖子代表は、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が日本の野菜や果樹が打撃を受けると試算していることを挙げ、「きちんと検証し、影響が出るなら何らかの対策が必要だ」と訴えた。
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2021年04月23日
RCEPの影響試算 農業一人負けが続く 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
合意された東アジア中心の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の影響についてわれわれが行った暫定試算の結果、日本の国内総生産(GDP)増加率が2・95%と突出して大きく、中国・韓国もわずかに増加するものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)とオセアニア諸国はGDPが減少することが判明した。
つまり、日本がASEANなどの「犠牲」の上に利益を得る、日本の一人勝ちの構造が見えてくる。さらに、日本全体の利益ではなく、日本の中では、自動車の一人勝ちと農業の一人負けの様相を呈している。
農業への影響は軽微との大方の指摘に反して、われわれの試算では、農業生産の減少額は5600億円強に上り、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)の1・26兆円の半分程度とはいえ相当な損失額である。かつ、RCEPでは野菜・果樹の損失が860億円と、農業部門内で最も大きく、TPP11の250億円の損失の3・5倍にもなると見込まれる。
一方、突出して利益が増えるのが自動車分野で、RCEPでは、TPP11よりもさらに大きく、約3兆円の生産額増加が見込まれる。これは、日本の貿易自由化の基本目標が「農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造」だとかねて指摘してきたことが、RCEPでも「見える化」されたことになる。
なお、政府は日本の農業生産量は変わらないと試算しているが、これは関税が撤廃されても、それによる生産量の減少がちょうど相殺されるように生産性が向上する、つまり、そういう政策が打たれるので生産量は変化しないというメカニズムの産物である。「影響がないように対策するから影響はない」と言っているだけで影響試算とは言えない。
さらには、種苗の育成者権を強化し、農家の自家増殖の権利を制約することを義務化する法整備を日本が強く求めたが、各国の農民・市民の猛反発で実現できなかった。これが意味するのは、世界的な反発で他国には押し付けられなかったことを国内では種苗法改定でやってしまったという事実である。
今こそ、日本と世界の市民・農民の声に耳を傾け、「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業利益追求のために、国内農家・国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめたりする交渉を再考する必要がある。
保護主義(銅)自由貿易・規制改革でない。市民の命と権利・生活を守るか、一部企業の利益を増やすかの対立軸だ。「自由貿易・規制改革」を錦の御旗にして、これ以上市民の命・権利と企業利益とのバランスを崩してはいけない。これ以上日本政府・企業が「加害者」になってはいけない。
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2021年04月20日

みのる食堂熊本に開店 全農
JA全農は23日、直営の飲食店「みのる食堂アミュプラザくまもと店」をJR熊本駅前の大型商業施設「アミュプラザくまもと」(熊本市西区)にオープンする。食材の大半に県産の農畜産物を使用。代表的な県産米ブランド「森のくまさん」を羽釜で炊いて出す。
外食分野で国産農畜産物の利用を拡大させるため、全農は全国で直営の「みのりカフェ」「みのる食堂」を展開している。……
2021年04月23日
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2021年04月23日
農業試算 「予定なし」 RCEP承認案 参院審議入り
日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案が21日、参院本会議で審議入りした。野上浩太郎農相は、同協定による農林水産業への影響の試算を「行う予定はない」と説明。米や牛肉などの重要品目を関税撤廃・削減の対象から除外し、「国内農林水産業への特段の影響はない」ためだとした。共産党の紙智子氏への答弁。
野上農相は、協定による野菜や果実の関税撤廃について①関税率が比較的低い②品質面から需要が低い──ことなどから「撤廃されても国産価格などの競争条件は大きく変わらず、輸入増は想定しにくい」と説明した。……
2021年04月22日

豚熱相次ぎ注意喚起 「ワクチン過信しないで」 農水省
豚熱の発生が相次いでいる。3月31日からの半月余りで、1万頭規模の農場を中心に5事例を確認。栃木県で17日に発生した豚熱は、2事例合計の殺処分対象が約3万7000頭(関連農場を含む)と、2018年9月以降に各地で発生した13県の計67事例でも最大規模となった。農水省は「ワクチンを過信せず飼養衛生管理の徹底を」と呼び掛ける。
63例目の奈良市の事例以降、65例目の津市ではワクチン接種前の子豚の感染だったが、他の事例では接種済みの豚で感染していた。
直近5事例の農場は、いずれも感染した野生イノシシが約10キロ以内で見つかっていた。最も近いのは64例目の前橋市で、半径2キロ圏内の4地点で野生イノシシの感染を確認。ウイルス侵入リスクは高い状況だったとみられ、陽性イノシシが迫る農場ではより一層の衛生管理が必要となる。
4月9日に同省が公表した専門家による疫学調査チームの報告では、発生事例では死亡豚の増加傾向を感じても、わずかな頭数だとして県への通報が遅れたケースがあった。同省は「経営の規模にかかわらず豚に異変があれば迷わず、すぐに通報してほしい」(動物衛生課)としている。
同省は以前から「ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得できるわけでない」として、継続的な防疫体制の確立を求めている。
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2021年04月20日

米在庫 余剰感強まる 業務需要低迷 21年産契約に影響
消費不振で米の民間在庫量が高止まりし、余剰感が強まっている。特に新型コロナウイルスの影響が大きい業務用銘柄を抱える産地を中心に、月を追うごとに在庫状況が悪化。卸は米の先安観から仕入れを必要最小限にとどめており、21年産の契約にも影響が出始めている。
農水省によると2月末の民間在庫量は……
2021年04月18日
大豆生産伸び悩み 政府目標の6割 収量・面積とも課題
政府が増産を目指す大豆の収穫量が足踏み状態にある。農水省の調査によると、2020年産は21万8900トンで、前年比1%の増加にとどまった。収量が安定せず、作付面積が伸び悩んでいることも影響。政府の生産努力目標は30年度に34万トンだが、6割の水準にとどまる。目標達成には収量・面積の両面でてこ入れが必要だ。
政府は食料・農業・農村基本計画で、主要品目の生産努力目標を設定している。大豆は作付面積17万ヘクタール、10アール当たり収量200キロを前提に、30年度に34万トンとした。だが大豆の収穫量は、過去10年で最も多かった17年産でも25万3000トン。同年以降は、3年連続で21万トン台にとどまる。
20年産の10アール収量は前年を2キロ上回ったものの、154キロどまり。作付面積は14万1700ヘクタールで、3年連続で減った。収穫量は努力目標の64%の水準だ。米など他の品目と比べても、特に努力目標との差が大きく、同省は「面積も10アール収量も足りない」(穀物課)と受け止める。
10アール収量は、豊凶による変動が大きい。過去10年間の最高は12年産の180キロだが、近年は150キロ前後で推移している。不安定な収量は実需者が国産大豆を敬遠する要因になっており、輸入品からの需要奪還に向けても安定が欠かせない。
作付面積も増えていない。16、17年産では15万ヘクタール程度だったが、米価の回復に伴い、転作大豆から主食用米に回帰した影響もあるとみられる。米需給が緩和局面となる中、転作作物としてどう推進するかが課題となる。
同省は20年度第3次補正予算で、主食用米から大豆などへの作付け転換を促す「水田リノベーション事業」を用意。同予算と21年度予算では、技術導入などを支援して安定生産を後押しする「水田麦・大豆産地生産性向上事業(麦豆プロ事業)」も措置した。同事業は5月14日まで2次募集している。
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2021年04月17日
米国産牛肉SG終了 関税38・5→25%に 発動基準協議 本格化へ
日米貿易協定に基づき、米国産牛肉に発動していた緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)が16日までで終了した。日米両政府は6月中旬までの合意を目指し、発動基準の見直し協議を進めている。2020年度の輸入量や、SGによる輸入の抑制効果などを踏まえ、今後、協議が本格化するとみられる。
同協定に基づく米国産牛肉の20年度の輸入量は、3月上旬までにSG発動基準の24万2000トンを超過。……
2021年04月17日
EPA利用でGI産品 輸出手続き簡素化 生産証明書提出不要に 農水省
農水省は2021年度から、地理的表示(GI)保護制度に登録された農産物を、経済連携協定(EPA)を使って低関税で輸出する場合の手続きを簡素化した。生産者による生産証明書の提出を不要にし、輸出業者の手間を省ける。タイやインドネシアなど14の国・地域向けが対象だ。
EPAによる低関税を適用して農産物を輸出する場合、輸出業者は、原産地が日本であることを証明する「原産地証明書」の発給を日本商工会議所から受ける必要がある。……
2021年04月16日
酪農ヘルパーに外国人材 「特定技能」 派遣で実証 北海道
北海道は、在留資格「特定技能」を取得した外国人を酪農ヘルパー利用組合に派遣する全国初の実証試験を始める。日替わりで複数の酪農家を回るヘルパーが特定技能の仕事にふさわしいかを見極め、適正な受け入れを道農政部とJA北海道中央会が探る。労務管理や、外国人材の技術・知識の向上につなげながら、酪農ヘルパーの人手不足対策としたい考えだ。(尾原浩子)
道中央会によると、特定技能の外国人が酪農ヘルパーになるのは全国に例がない。……
2021年04月15日
米トランプ政権時に輸入 トウモロコシどこに? 275万トン→実は6万8000トン
あのトウモロコシはどこに──。
14日の衆院農林水産委員会で、2019年8月に安倍晋三首相がトランプ米大統領(ともに当時)に輸入の意向を伝えた米国産トウモロコシの行方を巡るやりとりがあった。
質問者は立憲民主党の亀井亜紀子氏。「前から疑問だが」と前置きすると、「トランプ政権の時にトウモロコシを緊急輸入したかと思うが、どこに行ったのか」と尋ねた。
これに対し葉梨康弘農水副大臣は、19年7月に国内で害虫のツマジロクサヨトウを確認し、食害による飼料不足の懸念が生じたと説明。そこで、農畜産業振興機構の「飼料穀物備蓄緊急対策事業」で米国産を手当てしたと改めて答弁した。
当該トウモロコシの行方について、葉梨副大臣は当初、「国内で保管されて、使用されたということだ」と答弁。だが、直後に「国内で保管されたということだ」と言い直し、輸入後に使われたかどうかは言葉を濁した。
本紙の取材に対し、農水省は「同事業では報告を求めているわけではないが、順次使用されたと考えている」(飼料課)と説明する。輸入量は当初、最大275万トンと想定したが、結果的に害虫の被害が懸念ほど拡大せず、約6万8000トンに収まったという。
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2021年04月15日
原発処理水 海洋放出を決定 風評被害を懸念 農業関係者落胆「極めて遺憾」
政府が13日、東京電力福島第1原子力発電所から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を決めたことを受け、福島県の農業関係者からは、落胆と同時に風評被害を懸念する声が上がった。JA福島五連の菅野孝志会長は「福島県の第1次産業に携わる立場として極めて遺憾である」とコメントを発表した。
JA福島県青年連盟の手代木秀一前委員長は、「われわれの思いが反映されなくて残念」と無念さをにじませる。県青年連盟は、国が処理水の処分方法に関するパブリックコメントを募集していた際に、海洋放出などには反対し、トリチウム分離のための技術開発への支援を要望していた。
県内の農家が懸念しているのが農畜産物への風評被害だ。手代木前委員長は「これ以上の風評被害が起きないことを祈るが、いろいろな対策をしても風評被害は起こるのではないだろうか。県産農産物の競争力が落ちないか心配だ」と今後を懸念する。
菅野会長は「政府が説明する風評被害の発生抑止対策には具体性がない」と指摘した。
事故後10年経過した現在も農林水産物の風評被害が継続している実態から、「処理水の海洋放出は海産物ばかりでなく、県農林水産業の衰退が加速するとともに、風評被害が拡大することは確実」とした。
これに加えて「一層の研究開発により、放射能物質の完全除去ができる技術開発を進めるとともに、その間は貯蔵タンクの増設などにより本県農林水産物の安全・安心情報を守るよう切望する」と表明した。
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2021年04月14日