生活ゆとりなし=朝食なし 10~30代の食事習慣調査 農水省
2020年07月20日

経済的、時間的ゆとりのない人ほど朝食を欠かしている──。農水省が10~30代の若い世代を対象に行った食事の習慣に関する調査で、こんな傾向が出た。食事の内容だけでなく、生活習慣や働き方を改善する必要性が浮き彫りになった。
調査では朝食を食べる頻度や朝の生活習慣、経済状況などを聞いた。朝食を「ほとんど毎日食べる」が過半数を占めた一方、「ほとんど食べない」が23%に上った。
起床から外出までの時間と朝食摂取の関係を調べたところ、1時間以上の人の6割が「ほとんど毎日食べる」としたが、1時間未満の32%が朝食を「ほとんど食べていない」と回答した。
経済状況と朝食の関係では「生活が苦しく、非常に心配」と回答した人の37%が朝食を「ほとんど食べない」だった。47%は主食・主菜・副菜の組み合わせた食事を1日に2回以上食べる頻度も「ほとんどない」だった。
東京農業大学の上岡美保教授は「欠食は習慣化すると改善が難しい」とし、子どもの頃から正しい生活習慣を身に付ける大切さを強調する。
「コロナ禍で家で過ごす時間が増えている。この機に働き方や家族と食事をする大切さを見直すことが、親世代の現在と子ども世代の将来の食の改善につながる」と指摘。「完璧な栄養バランスの食事ではなく、おにぎり1個からでいい。朝食を食べるという習慣づくりから啓発が必要」と呼び掛ける。
今回の調査は、若い世代の食生活の実態や意識を把握するために実施。2019年11月に、18~39歳の男女2000人にインターネットを通して行った。第3次食育推進基本計画では、朝食欠食などが多い若い世代の食育を重点課題に位置付けている。
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鳥取県は、鳥取市の県農業試験場内で、県ブランド米「星空舞」の原種生産合理化施設の竣工(しゅんこう)式を開いた。生産者へ供給する種もみの原種を生産する拠点。扱う品種を限定し、病原菌や異型などの混入を防ぐ管理の徹底で、高品質な原種を生産する。JAグループ鳥取と連携し、「星空舞」の栽培面積拡大に対応していく。
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新施設で扱う品種は主に「星空舞」に限定する。総事業費は7357万円で国の交付金も利用した。約200平方メートルの施設内に、縦型遠赤外線乾燥機や保管用冷蔵庫、加温式育苗器などを設置。「星空舞」専用のコンバインも新たに導入した。原種は国府町種子生産組合などへ供給する。
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2021年04月19日
桜、キンモクセイ、ハナミズキ、レンギョウ
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2021年04月21日

日本の身の丈 大国モデルと決別を 法政大学教授 山口二郎
新型コロナウイルス対策を巡る政府の失態を見ていると、日本はもはや科学技術の面でも行政能力の面でも、大国とは言えないということを痛感する。
コロナ禍で露呈
まず、ワクチンを自前で作れない国だったとは、ショックだった。国費を投入して開発したはずのCOCOA(感染接触確認アプリ)も不具合が見つかり、役に立たなかった。政治家や官僚の腐敗や自己中心主義は表面的な現象で、深層においては日本の政府が一定の目的のために適切な政策を立案し、責任を持って遂行する能力を失っていると感じざるを得ない。
20世紀後半の繁栄を知る者にとってはつらいことだが、私たちは大国ではなくなりつつあるという現状認識を基に、日本の将来を構想するしかない。もちろん、科学技術分野で世界の先端を切り開く力を取り戻すことが望ましい。そのためには、目先の金もうけのためにすぐ役立つ技術の開発に資金をつぎ込むのではなく、植物を育てるように根を大事にする政策が必要となる。
自給率向上こそ
もう一つは、大国でなくても国民が生きていけるように、社会、経済の仕組みを徐々に転換することが必要である。20世紀後半の繁栄の時代には、日本は先進的な工業技術を生かして輸出で利益を上げて、食料と原材料を輸入するというモデルで経済大国にのし上がった。産業の再生を期待しつつも、これからは大国ではない生き方を身に付けることが、国民の安全のために不可欠である。そのためには、食料とエネルギーの自給率を高めることが必要である。
エネルギーを自給するためには風力、太陽光などの再生可能エネルギーを飛躍的に拡大することがカギとなる。化石燃料の支払いに充てていたお金が手元に残れば、それだけ国民は豊かになれる。
食料自給率の向上のためには、農業の強化がカギとなる。今の政府は希少な果実や和牛など高価格の食品の輸出を奨励している。そうした収益を追求する農家がいてもよいが、脱大国の農業は国民を養う基礎的な食料を供給することを基本的役割とすべきである。
料理研究家の土井善晴氏は「一汁一菜」をキーワードに、自然の恵みを取り入れた単純でおいしい食事を基にしたライフスタイルを提唱している。脱大国の農業は土井氏の言う日々のシンプルな食事と結び付いてほしいと思う。
今年は衆院総選挙の年である。日本人の生活のありようを考え直すという構想力が問われる。政党の自由闊達(かったつ)な議論を期待したい。
やまぐち・じろう 1958年岡山県生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学教授などを経て2014年に現職。現実政治への発言を続け、憲法に従った政治を取り戻そうと「立憲デモクラシーの会」を設立。近著に「『改憲』の論点」(集英社新書)
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2021年04月19日
いまや「環境」と「問題」はセット
いまや「環境」と「問題」はセット。「環境問題」は、この時代を映す四字熟語のようだ▼その本質を突くのが次の言葉である。「地球があぶないとみんな言ってるけど、本当にあぶないのは人間のほうだ」。地球緑化センターが以前掲げたポスターにあった。こんなコピーも。「実は、環境問題の加害者は私たちで、被害者は私たちの子孫かもしれない」▼きょうは「アースデー」(地球の日)。世界各地で環境問題を話し合い、未来に向けて行動する日。地球との向き合い方を教えてくれるのが、北山耕平さんの著書『自然のレッスン』。よく地球を母なる大地というが、北山さんは、ある人の問い掛けが胸に刺さった。「自分の母親を、切ったり売ったり、買ったり、なぜそんなことができるのだ」▼確かに私たち大人は、母なる地球を傷つける加害者だ。しかも子孫にツケを回す罪深い加害者だ。1992年の地球サミットで12歳のカナダの少女が、世界の指導者を前にこう訴えた。オゾン層に開いた穴、絶滅した動物、砂漠となった森をよみがえらせる術を大人たちは持っているのかと▼「どうやって直すか分からないものを、壊し続けるのはもうやめてください」。その問いは気候変動サミットに届くか。
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2021年04月22日
農業試算 「予定なし」 RCEP承認案 参院審議入り
日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案が21日、参院本会議で審議入りした。野上浩太郎農相は、同協定による農林水産業への影響の試算を「行う予定はない」と説明。米や牛肉などの重要品目を関税撤廃・削減の対象から除外し、「国内農林水産業への特段の影響はない」ためだとした。共産党の紙智子氏への答弁。
野上農相は、協定による野菜や果実の関税撤廃について①関税率が比較的低い②品質面から需要が低い──ことなどから「撤廃されても国産価格などの競争条件は大きく変わらず、輸入増は想定しにくい」と説明した。……
2021年04月22日
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RCEP承認案参院委審議入り 商標保護に期待
参院外交防衛委員会は22日、日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案の審議を始めた。京都府の「宇治茶」など、日本のブランドや地名が中国で勝手に商標登録されている問題を巡り、外務省は同協定によって「商標の保護や模倣品・海賊版の問題が改善されると期待している」と述べた。自民党の佐藤正久氏への答弁。
同協定は参加国に対し、悪意のある商標出願を拒絶・取り消しできる制度を設けるよう規定する。同省は「(各国で)適切な整備、運用がされていない場合は改善を求めていきたい」とした。
茂木敏充外相は「先に国内手続きを終え、他国にも早くやってほしいと働き掛けることは極めて重要」とし、協定発効に向けて日本が早期に承認する意義を強調した。公明党の三浦信祐氏への答弁。
同日の委員会では、参考人の意見も聴取した。慶応大学の木村福成教授は、日本が政治的問題を抱える中国や韓国との初の経済連携協定(EPA)となったことを巡り、ASEANを中心とした多国間協定への参加という形だからこそ「一つの協定の中に入れた」との考えを示した。
みずほリサーチ&テクノロジーズの菅原淳一調査部主席研究員は、RCEPは自由化の水準やルール分野の合意内容が環太平洋連携協定(TPP)などに劣るとして、「発効後の深化(見直し)を日本が主導すべきだ」と述べた。
アジア太平洋資料センターの内田聖子代表は、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が日本の野菜や果樹が打撃を受けると試算していることを挙げ、「きちんと検証し、影響が出るなら何らかの対策が必要だ」と訴えた。
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2021年04月23日
農業試算 「予定なし」 RCEP承認案 参院審議入り
日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案が21日、参院本会議で審議入りした。野上浩太郎農相は、同協定による農林水産業への影響の試算を「行う予定はない」と説明。米や牛肉などの重要品目を関税撤廃・削減の対象から除外し、「国内農林水産業への特段の影響はない」ためだとした。共産党の紙智子氏への答弁。
野上農相は、協定による野菜や果実の関税撤廃について①関税率が比較的低い②品質面から需要が低い──ことなどから「撤廃されても国産価格などの競争条件は大きく変わらず、輸入増は想定しにくい」と説明した。……
2021年04月22日

豚熱相次ぎ注意喚起 「ワクチン過信しないで」 農水省
豚熱の発生が相次いでいる。3月31日からの半月余りで、1万頭規模の農場を中心に5事例を確認。栃木県で17日に発生した豚熱は、2事例合計の殺処分対象が約3万7000頭(関連農場を含む)と、2018年9月以降に各地で発生した13県の計67事例でも最大規模となった。農水省は「ワクチンを過信せず飼養衛生管理の徹底を」と呼び掛ける。
63例目の奈良市の事例以降、65例目の津市ではワクチン接種前の子豚の感染だったが、他の事例では接種済みの豚で感染していた。
直近5事例の農場は、いずれも感染した野生イノシシが約10キロ以内で見つかっていた。最も近いのは64例目の前橋市で、半径2キロ圏内の4地点で野生イノシシの感染を確認。ウイルス侵入リスクは高い状況だったとみられ、陽性イノシシが迫る農場ではより一層の衛生管理が必要となる。
4月9日に同省が公表した専門家による疫学調査チームの報告では、発生事例では死亡豚の増加傾向を感じても、わずかな頭数だとして県への通報が遅れたケースがあった。同省は「経営の規模にかかわらず豚に異変があれば迷わず、すぐに通報してほしい」(動物衛生課)としている。
同省は以前から「ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得できるわけでない」として、継続的な防疫体制の確立を求めている。
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2021年04月20日

米在庫 余剰感強まる 業務需要低迷 21年産契約に影響
消費不振で米の民間在庫量が高止まりし、余剰感が強まっている。特に新型コロナウイルスの影響が大きい業務用銘柄を抱える産地を中心に、月を追うごとに在庫状況が悪化。卸は米の先安観から仕入れを必要最小限にとどめており、21年産の契約にも影響が出始めている。
農水省によると2月末の民間在庫量は……
2021年04月18日
大豆生産伸び悩み 政府目標の6割 収量・面積とも課題
政府が増産を目指す大豆の収穫量が足踏み状態にある。農水省の調査によると、2020年産は21万8900トンで、前年比1%の増加にとどまった。収量が安定せず、作付面積が伸び悩んでいることも影響。政府の生産努力目標は30年度に34万トンだが、6割の水準にとどまる。目標達成には収量・面積の両面でてこ入れが必要だ。
政府は食料・農業・農村基本計画で、主要品目の生産努力目標を設定している。大豆は作付面積17万ヘクタール、10アール当たり収量200キロを前提に、30年度に34万トンとした。だが大豆の収穫量は、過去10年で最も多かった17年産でも25万3000トン。同年以降は、3年連続で21万トン台にとどまる。
20年産の10アール収量は前年を2キロ上回ったものの、154キロどまり。作付面積は14万1700ヘクタールで、3年連続で減った。収穫量は努力目標の64%の水準だ。米など他の品目と比べても、特に努力目標との差が大きく、同省は「面積も10アール収量も足りない」(穀物課)と受け止める。
10アール収量は、豊凶による変動が大きい。過去10年間の最高は12年産の180キロだが、近年は150キロ前後で推移している。不安定な収量は実需者が国産大豆を敬遠する要因になっており、輸入品からの需要奪還に向けても安定が欠かせない。
作付面積も増えていない。16、17年産では15万ヘクタール程度だったが、米価の回復に伴い、転作大豆から主食用米に回帰した影響もあるとみられる。米需給が緩和局面となる中、転作作物としてどう推進するかが課題となる。
同省は20年度第3次補正予算で、主食用米から大豆などへの作付け転換を促す「水田リノベーション事業」を用意。同予算と21年度予算では、技術導入などを支援して安定生産を後押しする「水田麦・大豆産地生産性向上事業(麦豆プロ事業)」も措置した。同事業は5月14日まで2次募集している。
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2021年04月17日
米国産牛肉SG終了 関税38・5→25%に 発動基準協議 本格化へ
日米貿易協定に基づき、米国産牛肉に発動していた緊急輸入制限措置(セーフガード=SG)が16日までで終了した。日米両政府は6月中旬までの合意を目指し、発動基準の見直し協議を進めている。2020年度の輸入量や、SGによる輸入の抑制効果などを踏まえ、今後、協議が本格化するとみられる。
同協定に基づく米国産牛肉の20年度の輸入量は、3月上旬までにSG発動基準の24万2000トンを超過。……
2021年04月17日
EPA利用でGI産品 輸出手続き簡素化 生産証明書提出不要に 農水省
農水省は2021年度から、地理的表示(GI)保護制度に登録された農産物を、経済連携協定(EPA)を使って低関税で輸出する場合の手続きを簡素化した。生産者による生産証明書の提出を不要にし、輸出業者の手間を省ける。タイやインドネシアなど14の国・地域向けが対象だ。
EPAによる低関税を適用して農産物を輸出する場合、輸出業者は、原産地が日本であることを証明する「原産地証明書」の発給を日本商工会議所から受ける必要がある。……
2021年04月16日
酪農ヘルパーに外国人材 「特定技能」 派遣で実証 北海道
北海道は、在留資格「特定技能」を取得した外国人を酪農ヘルパー利用組合に派遣する全国初の実証試験を始める。日替わりで複数の酪農家を回るヘルパーが特定技能の仕事にふさわしいかを見極め、適正な受け入れを道農政部とJA北海道中央会が探る。労務管理や、外国人材の技術・知識の向上につなげながら、酪農ヘルパーの人手不足対策としたい考えだ。(尾原浩子)
道中央会によると、特定技能の外国人が酪農ヘルパーになるのは全国に例がない。……
2021年04月15日
米トランプ政権時に輸入 トウモロコシどこに? 275万トン→実は6万8000トン
あのトウモロコシはどこに──。
14日の衆院農林水産委員会で、2019年8月に安倍晋三首相がトランプ米大統領(ともに当時)に輸入の意向を伝えた米国産トウモロコシの行方を巡るやりとりがあった。
質問者は立憲民主党の亀井亜紀子氏。「前から疑問だが」と前置きすると、「トランプ政権の時にトウモロコシを緊急輸入したかと思うが、どこに行ったのか」と尋ねた。
これに対し葉梨康弘農水副大臣は、19年7月に国内で害虫のツマジロクサヨトウを確認し、食害による飼料不足の懸念が生じたと説明。そこで、農畜産業振興機構の「飼料穀物備蓄緊急対策事業」で米国産を手当てしたと改めて答弁した。
当該トウモロコシの行方について、葉梨副大臣は当初、「国内で保管されて、使用されたということだ」と答弁。だが、直後に「国内で保管されたということだ」と言い直し、輸入後に使われたかどうかは言葉を濁した。
本紙の取材に対し、農水省は「同事業では報告を求めているわけではないが、順次使用されたと考えている」(飼料課)と説明する。輸入量は当初、最大275万トンと想定したが、結果的に害虫の被害が懸念ほど拡大せず、約6万8000トンに収まったという。
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2021年04月15日
原発処理水 海洋放出を決定 風評被害を懸念 農業関係者落胆「極めて遺憾」
政府が13日、東京電力福島第1原子力発電所から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を決めたことを受け、福島県の農業関係者からは、落胆と同時に風評被害を懸念する声が上がった。JA福島五連の菅野孝志会長は「福島県の第1次産業に携わる立場として極めて遺憾である」とコメントを発表した。
JA福島県青年連盟の手代木秀一前委員長は、「われわれの思いが反映されなくて残念」と無念さをにじませる。県青年連盟は、国が処理水の処分方法に関するパブリックコメントを募集していた際に、海洋放出などには反対し、トリチウム分離のための技術開発への支援を要望していた。
県内の農家が懸念しているのが農畜産物への風評被害だ。手代木前委員長は「これ以上の風評被害が起きないことを祈るが、いろいろな対策をしても風評被害は起こるのではないだろうか。県産農産物の競争力が落ちないか心配だ」と今後を懸念する。
菅野会長は「政府が説明する風評被害の発生抑止対策には具体性がない」と指摘した。
事故後10年経過した現在も農林水産物の風評被害が継続している実態から、「処理水の海洋放出は海産物ばかりでなく、県農林水産業の衰退が加速するとともに、風評被害が拡大することは確実」とした。
これに加えて「一層の研究開発により、放射能物質の完全除去ができる技術開発を進めるとともに、その間は貯蔵タンクの増設などにより本県農林水産物の安全・安心情報を守るよう切望する」と表明した。
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2021年04月14日