コロナ禍で社員派遣できず 海外生産が9割 品質管理やきもき 種苗メーカー

 新型コロナウイルスの影響で、海外生産する種子の管理に、一部の種苗会社が苦慮している実態が分かった。定期的に実施する社員派遣ができず、現地で状況を確認できない。種の品質確保のため、国内に生産拠点を移すのは難しい。すぐに種の品質や供給に問題が出る可能性は低いが、コロナ禍の長期化を心配する声が相次ぐ。(金子祥也)

 国内で出回る野菜の種子は、約9割を海外で採種している。種苗会社は現地の農家や企業に生産を委託。高い知識や技術を持つ社員を定期的に現地派遣することで、安定した品質を保っている。

 ところが、4月以降にコロナの影響で海外渡航が難しい状況が続く。種苗会社大手のカネコ種苗(前橋市)では、種を生産する東南アジア諸国に、相手国の入国制限などの理由で社員を派遣できていない。病害虫防除や環境整備などの指示を迅速にできず困っているという。同社は「今後、種子の量や品質に影響が出る可能性もある」と懸念する。

 サカタのタネ(横浜市)も、世界各地の生産拠点でいまだ入国できない国がある。現地に自社のスタッフや生産に習熟した農家もいて、情報交換も活発にしているため、今のところ大きな影響はない。ただ、状況が年単位で長引けば「管理方法が異なる品種を導入する際など、指導が十分にできない恐れがある」(コーポレートコミュニケーション部)と気をもむ。

 タキイ種苗(京都市)も海外に社員を派遣できない状況にあるが、採取地と密に連絡を取ったり、現地の様子を写真や映像で確認したりすることで情報を収集。「現在は種子の生産・供給に問題はない」と話す。

 日本種苗協会は、コロナ禍の影響について「感染症に限らず、種苗会社はそれぞれ気象災害などに備えた対策がある」と説明。種の備蓄もあることを踏まえ「1、2年で種の供給不足になることはない」と見通す。
 

代替拠点を模索 土地の適性、コスト…「国内難しい」


 海外で生産が難しければ国内で代替できないか──。こうした疑問に日本種苗協会は「国内では難しい」と見解を示す。

 種を作る場合、交配するときに別の花粉が混じらないようにする必要がある。国土の狭い日本では適した場所が少なく、山奥や離島で作ることが多いという。同協会は「ハウスや植物工場を作れば可能だが、コストが見合わない」と説明する。

 気候も国内生産に切り替えが難しい理由の一つだ。質の高い種を取る基本は、原産地に近い気候の場所で作ること。乾燥した地域での生産が適した種もあれば、逆に湿潤な気候を好む植物もある。関東の種苗会社は「人件費の高騰で海外生産のコストは膨らんできているが、種の品質を考えると国内には移せない」と内情を明かす。

 一方、従来と異なる品質管理が必要で、生産量も少ない新品種などを、国内で生産できないか模索する動きも出てきた。国内でも珍しい種子の生産拠点、福岡市の西日本タネセンターは、20ヘクタール弱の敷地に200棟のハウスを建て、種子を生産している。コロナ禍の影響で4月以降、種の生産依頼に関する問い合わせの電話が倍以上に増えているという。特に、これまでほとんど種子生産の取引がなかった行政の試験場などから問い合わせが増えた。

 同社は「既に生産能力のぎりぎりまで注文が入っていて、問い合わせを断り続けている」と説明する。
 

おすすめ記事

経済の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは