規制改革実施計画が閣議決定 識者の正論か専横か 元農水省官房長 荒川隆氏

 先週末、規制改革実施計画が閣議決定された。毎年夏の概算要求に向けて、この時期に「骨太方針」「成長戦略」「規制改革」など一連の政策文書が決定される。各省庁とも概算要求を有利に進めるべく、骨太方針や成長戦略には自らの施策の根拠を盛り込もうと努力するが、規制改革では無理難題を押しつけられないようできるだけ項目を減らし、取り上げられる時にも法改正とならないよう、政府部内で暗闘を繰り広げる。

 農業関係は、ここのところ規制改革で痛い目に遭わされてきた。岩盤規制へのドリルとやらで、農協改革ではJA全中が一般社団化され、生乳改革ではアウトサイダーまがいの集乳業者が指定事業者になるというブラックユーモアのような改正を余儀なくされた。

 そもそも規制改革推進会議は森羅万象に関し議論・検証を行い政府に答申する組織であり、高名な学者や一流の経済人などお歴々が集まるのだが、彼らが農業・農村・農政についてどんな理念や知見を持つのか、一向に聞こえてこない。実際の議論が行われる農業ワーキンググループも同様だが、彼らの所信や存念を、一度伺いたいものだ。毎度規制改革の答申が的外れなので、業を煮やした与党議員が国会質問を行うが、答弁に立つのは委員ではなく内閣府の役人だ。

 今年は新型コロナの関係で、例年よりひと月遅れの答申・閣議決定となった。当初、農産物検査法の廃止とJAS制度への統合など、相変わらず誰の入れ知恵なのか、ばかげた検討が行われていたようだが、農水省をはじめ関係者の努力もあり、最悪の事態は回避され継続検討になったらしい。建前とは裏腹に、実は政治的なプロセスが幅を利かせる規制改革だが、政権内のパワーバランスの変化を反映して、かつての神通力を失ったようにも見える。

 いずれにしろ、農協改革や生乳改革など規制改革会議(当時)主導で進められた諸改革が、いかに農業・農村の現場感覚からずれており、改革の実施過程でさまざまなゆがみを顕在化させたかは、周知の事実だ。新参の指定事業者が集乳停止に至ったのも、業界内では「時間の問題」という認識だった。だが、当時の農水省は、まるで規制改革会議の下請けのように、彼らが取り上げた事項が、そのまま農政改革の目玉となった。最後のとりでのはずの「われらが農林議員」でも、巻き返すことはできなかった。

 役人はいったん答申・閣議決定されれば、本音はどうあれその通りに進め、へ理屈でも説明責任を果たす。一方、その端緒となる規制改革会議は勝手に答申するだけで、説明責任も結果責任も問われない。効率優先で市場原理が大好きな彼らの言う通りにしていたら、大変なことになる。農産物検査も准組合員問題も気を緩めずに、引き続き監視が必要だ。
 

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