外国人実習生4割入国できず 「特定活動」でしのぐ 長野・野辺山高原

井出さんのハクサイ畑で収穫するビンさん(左)とティンさん(長野県南牧村で)

 高原野菜の指定産地、八ケ岳東麓に広がる長野・野辺山高原は、新型コロナウイルス禍に伴う入国規制のあおりを受け、外国人技能実習生の4割が入国できなかった。人手不足に直面した各農家は、コロナの影響で解雇された別の職種の実習生や、海外農業研修が延期された大学生、仕事を失った日本人らを雇用し、乗り切った。だが、コロナ禍が収束する見通しはなく「このままでは来季の生産計画が立てられない」と不安を募らせる。(栗田慎一)

 6月17日、南牧村のハクサイ畑でベトナム人青年2人が収穫作業をしていた。ハノイ工業大学4年、チュオン・ディン・ビンさん(21)と同大3年のトラン・クワン・ティンさん(21)。昨年11月に実習生として来日し、福岡県苅田町の自動車工場で働いていたが、コロナ禍で生産停止となり、3月で雇用契約を打ち切られた。

 法務省は、コロナ禍で職を失い、航空機の運航停止などで帰国もできなくなった実習生への救済措置として、通常では認めていない職種変更を「特定活動」として認め、最大6カ月の就労を可能にした。2人はこれを利用し、職種を農業に変更してやってきた。

 2人はハノイ郊外に実家があり、ビンさんは両親と中学生の弟の4人家族、ティンさんは母親と高校生の弟の3人家族だ。家族の生活費や弟の学費のため、月約20万円の給料の半分を送金している。ビンさんは「大学卒業後は再び日本で働きたい。テクノロジー分野で農業にも貢献できたら」と語った。ティンさんも「農業技術を学びたい」と前向きだった。

 雇用したのは5代目農家、井出文洋さん(59)。妻藤江さん(58)、長男勝也さん(30)、次男拓朗さん(28)との家族経営だ。井出さんは「よく働く。言葉も早く覚えようと懸命だ」と褒めた。
 

“人探し”懸念 来期も


 JA長野八ケ岳によると、南牧村や川上村など管内5町村の農家770戸が予定していた実習生855人のうち366人が入国できなかった。各農家は実習生の監理団体や人材派遣会社などそれぞれのつてを通じ、突然の人探しに追われた。

 井出さんも予定していたフィリピン人2人のビザが発給されなかった。監理団体を通じてビンさんとティンさんを知ったのは4月。2人は「すぐに働きたい」と言ったが、職種変更には煩雑な申請書類と認可までの時間が必要だった。

 一刻を争う中、海外農業研修を担う公益社団法人「国際農業者交流協会」から、3月にオランダへ1年間の農業研修に向かう予定だった東京農大生の佐藤善恭さん(21)が出国できなくなっているとの情報を得て、渡航できるまで働いてくれるよう依頼した。

 その結果、佐藤さんが4月に駆け付け、その後に職種変更が認められたビンさん、ティンさんも南牧村入りし、井出さんは6月の収穫を前に危機を乗り越えた。

 井出さんは、「コロナ禍は、実習生を探すのが難しくなっている近年の状況に追い打ちをかけた」と指摘し、「意欲があって真面目な外国人には就労ビザを与え、家族も呼び寄せられる柔軟な制度にすべきだと思う」とかねてからの思いを口にした。勝也さんも「離農者の畑が若手農家に集約され、規模の拡大が続いている。農業人材の国際化は避けて通れない」と言い切った。

 来季の実習生の手配は8月に始まる。JAの井出文人専務は「外国人材はもはや不可欠な存在。毎年のように人探しの苦労が続けば、野辺山の農家は生産計画を立てられなくなる」と危機感を隠さなかった。

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