[集落営農 生き残り戦略](1) 巨大法人担い手不足に対応 組織再構築へ新会社 盛岡市・となん

水田を見回る「となん」の関係者(盛岡市で)

 多くの集落営農組織が岐路に立たされている。2020年の全国の集落営農組織数は1万4832となり、17年をピークに減少傾向だ。設立から10年以上たつ組織が6割を占め、新規設立が伸び悩む一方で解散・廃止や統合が増えている。担い手の高齢化が進み、改めて組織の在り方が問われている。各地の事例を追った。

 盛岡市の農事組合法人「となん」は13年に設立され、日本最大規模の集落営農組織として知られる。農地の集積面積は975ヘクタールで、全国平均32ヘクタールの30倍以上。51の集落に953人の組合員がいるが、いま組織の見直しを進めている。

 最近は高齢化で担い手不足が顕在化してきた。「組合員の平均年齢は70歳近くになり、作業できる人がどんどん減っている。今後どうするか考えなければならなくなった」と組合長の平野友則さん(71)は説明する。
 

広域カバー農機も所有


 これまで耕作できない組合員の農地は、法人を通じて他の組合員が引き受けカバーしてきた。だが預ける人が多くなり、引き受け切れなくなっている。米直接支払交付金の廃止なども、高齢化して離農する人の増加に拍車を掛けたという。

 農林中金総合研究所の調査によると、集落営農組織の大半は国などの交付金で辛うじて収支を均衡させている。農産物の販売収入だけでは赤字になる構造は1000ヘクタールの規模でも変わらない。

 

 「となん」は営農の再構築に向け、農地管理会社の設立を目指す。組合員が管理できない農地を利活用するオペレーター型組織だ。現在は法人の中に15ある営農実践班が営農活動をまとめるが、機械の共同利用は組合員同士に任せている。新組織は広域で活動し、機械を所有して営農機能を強化する。

 「組合員と一緒に作業して機械のコストを削減し、利益が出るようにしたい。小型無人飛行機(ドローン)での農薬散布や若い人の雇用もできたら良い」(平野さん)と、構想が膨らむ。23年度ごろからスタートする予定だ。
 

地域活動は単位小さく


 「となん」を設立した熊谷健一初代組合長は、営農活動だけでなく農業体験や祭りをはじめとする「地域活動が重要」と考えていた。設立当初は営農実践班と同様に、法人内に15の生活部を設置し、地域のコミュニティーの維持を計画した。

 その考えは現在も受け継がれているが、生活部は単位を小さくして地域に密着した組織に移行しつつある。集落ごとにある農家組合や、町内会などが主な担い手となり、収穫祭や料理教室を開いて活発に活動する。営農組織は大きく、生活組織は小さくなった形だ。

 平野さんは「水田での仕事を法人に任せっきりになり、自分の田んぼがどこか分からなくなってしまうのでは困る。水路や農道の維持管理など、地域の活動に積極的に出てもらい、コミュニティーの維持につなげたい」と語る。

 「となん」の役割も重要だ。農地管理会社や地域に密着した生活部など、さまざまな組織が重層的に機能し、水田農業の維持を目指す。
 

農事組合法人「となん」


 経営内容は水稲923ヘクタール、小麦41ヘクタール、大豆10ヘクタール、加工用トマト50アールなど。法人は農地の利用調整を担い、農産物も法人を通じて販売する。農作業は法人が面積や収量に応じて委託費を支払い、組合員が行っている。農の雇用事業などを活用し、新規就農者の育成にも取り組んでいる。
 

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