日米協定の農産物市場開放 怪しい「国益」に注意 特別編集委員 山田優

 日米貿易協定は年頭に発効した。環太平洋連携協定(TPP)の範囲内で農産物市場を米国に開放した。「体質強化対策で農業への打撃はほとんどない」と日本政府は説明した。予定される同協定の追加交渉でも、農産物関税を取り上げることは「想定していない」と茂木敏充外相は断言している。

 新たな農産物市場開放の圧力を「心配するな」というありがたいお墨付きだが、本当に日本政府の説明は信頼できるのだろうか。

 ちょっと怪しい。

 そこで、米国ワシントンで農業取材を長年してきた米国人ジャーナリストと協力し、米国の複数の農業団体の話を聞いてみた。彼らは全く違う見方をしていた。今年1月に発効した同協定はあくまでも第1段階にすぎず、近く行われる追加交渉で、日本の農産物市場はさらに拡大されると期待していたのだ。

 「米国の乳製品は協定第1弾の市場開放で大きな恩恵を得られたが、(次の)完全な合意で、もっと成果を得たい。早く交渉が始まってほしい」と酪農家団体の役員は答えた。

 米議会議員有志は今月、乳製品市場の一層の開放に向け、追加交渉を始めるよう米政府に迫った。第1弾で取りこぼした関税削減の他、地理的表示(GI)保護制度の見直しを含む「包括的な第2弾の協定が不可欠」と主張している。

 交渉当事者の米通商代表部も「日本との農産物交渉は終わった」とはほど遠い姿勢だ。3月の年次報告書では、第1弾に盛り込まなかった米などの開放圧力を高めていく可能性を示す。米国は、日本の農産物市場開放をやる気満々だ。

 対する安倍首相は3月、国会で追加交渉を問われ、「今までも農産物で守るべきものは守ってきた。国益に反する合意をする考えはない」と答弁した。

 威勢はよく聞こえるが、この人が国益を持ち出す時は要注意だ。民主党を破って政権に復帰した後、さっさとTPP交渉に踏み出した際のキーワードも国益だった。

 11月に選挙を控えるトランプ大統領は、自分の支持基盤である農家の要望に応じるため、手当たり次第日本に無理難題を吹っ掛けてくるだろう。国益の看板を背負った安倍氏が大統領の真正面に立ちふさがり、「待った」を掛けることを期待するしかないが、こちらの方も相当怪しい。
 

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