文芸評論家の山本健吉さんは、言葉を作る能力は、文人の風流心よりも、民衆の生活の方を信用した

 文芸評論家の山本健吉さんは、言葉を作る能力は、文人の風流心よりも、民衆の生活の方を信用した▼東北に冷害をもたらす「やませ」は最悪の風なのに、俳人たちは涼気をもたらす琵琶湖の風くらいに考えていた。〈比枝(ひえ)の燈のまたゝき見ゆれ山瀬風〉(涼風)のように。「如何(いか)に生活に密接した地点で句を作ることがなかったか」の一つの証明だと、手厳しい。著書『ことばの歳時記』にある▼漁を左右する風に敏感な漁師は、梅雨時の風を表す言葉の南風(はえ)を使い分けた。梅雨に入って吹く黒南風、梅雨半ばに吹く荒南風、梅雨の晴れるころより吹く白南風。わが国最初の方言辞典『物類称呼』に載っている。鳥羽や伊豆の言葉だったという。荒南風は強い風で、漁師は漁に出ることはなかった▼なかなか梅雨が明けない。本州付近に停滞する前線や湿った空気の影響で、雨の日が続く。日照時間も少なく、平年の半分の所も。関東甲信が立秋まで明けなければ、大冷害の1993年以来。気象庁は「日照不足と長雨に関する気象情報」を出して、農作物の管理に注意を促す。天気の回復を祈る農家の気持ちを思う▼夏はきらきらの太陽が顔を出してくれないと、季節すら味わえない。曇天続きの天候と新型コロナ禍に、自然と生活の難しさを知る。
 

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