21年度の予算要求 農村政策の充実を図れ

 2021年度政府予算の概算要求に向け、政府・与党の調整が本格化する。3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画と新型コロナウイルス感染拡大の教訓を踏まえ、農村政策の予算を拡充すべきである。

 各省からの概算要求は例年8月末に締め切られるが、21年度は、新型コロナへの対応を優先して1カ月遅らせて9月末を期限とした。麻生太郎財務相は、「要求額は、基本的に、対前年度同額」との方針を示したが、前例主義的な発想だとしたら納得できない。農林水産予算を重視する姿勢が必要だ。

 21年度の農業予算は、基本計画の実現に向けた実質初年度の予算となる。同計画は、カロリーベースで37%にまで落ち込んだ食料自給率を、30年度までに45%に引き上げるのが目標だ。これまでのように「絵に描いた餅」にしないためには、中小・家族経営を含めて生産基盤強化などへの思い切った財政支援が必要である。「スマート農業」などによる高齢者の労力軽減も重要な課題だ。概算要求段階で、農林水産関係予算を20年度予算(2兆3000億円)の水準に抑え込む意向なら承服できない。基本計画実現への安倍政権の本気度が疑われる。

 基本計画は、手薄だった農村政策にも力を入れる方針も示した。具体的政策は、研究者や学識経験者、自治体の首長らによる検討会で論議を進めている。早期の対応が必要なものから予算化すべきだ。とりわけ急がなければならないのは、農業生産の4割を占める中山間地域の振興である。人口が45年には15年比で半減近くになる見通しだからだ。人が住み続けられるようにする総合的な施策を1日も早く導入すべきだ。

 基本計画は「地域政策の総合化」を掲げ、所得と雇用機会の確保や、安心して住み続けられる条件の整備、新たな活力の創出──を目指すとした。農村の実態や課題、意向を踏まえて、体系的で効果的な施策を打ち出すべきだ。実現には思い切った予算の投入が必要だ。農水省だけでは難しいなら関係府省と連携しての予算確保を求める。農村政策の司令塔としての農水省の役割発揮が欠かせない。

 新型コロナと共生する「新しい日常」に向け、国民が踏み出すのを後押しする予算でもある。政府は、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で東京一極集中からの脱却を打ち出した。感染症対策上も分散型の国づくりが必要だ。しかし、骨太の方針は農村振興の視点が弱い。概算要求は、新型コロナ対策など「緊急な経費」は別枠での計上を認めている。人口減少が続き、農村振興は時間との闘いでもある。別枠を含めて、思い切った予算確保を求める。

 農業・農村重視の予算編成へと大きくかじを切るには、政治が前面に出なければならない。党派を超え、「ポスト・コロナの時代」をも視野に入れた国造りの第一歩とすべきである。
 

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