「かわいい子には旅をさせろ」という

 「かわいい子には旅をさせろ」という。ウィズコロナ時代は「かわいい子には家で自粛させろ」となるのか▼若いうちに世界に出て見聞を広めることが、後の人生をどれほど豊かにするか。旅のバイブルも教える。古くは内田百閒(ひゃっけん)の『阿房列車』、金子光晴の『マレー蘭印紀行』。中高年世代なら小田実の体当たり世界紀行『何でも見てやろう』、バックパッカーの元祖沢木耕太郎の『深夜特急』。今も色あせず、旅心をかき立てる▼中でも小田の好奇心の熱量はどうだ。60年安保前後の時代背景も手伝い、私と世界を五感で捉えようとする。「さまざまの国、さまざまの社会、そこに住み、うごめくさまざまの人間、それらすべてを見てやろう」(『何でも見てやろう」』)。彼が没して今日で13年。コロナで閉ざされた世界は、泉下の目にどう映じているか▼コロナ対策の提言をまとめた日本学術会議の会見で、「移動の自由」と「集う自由」の危機が語られた。この二つは、若者の成長、人々の相互理解に欠かせないとし、民主主義の基盤が制限されている現状を憂えた。感染防止との兼ね合いは難しいが、思考停止が最も怖い▼世界が門を閉ざせばウイルスに勝てても、移動の自由は死ぬ。「何でも見てやろう」と若者が胸躍らせる日を待ち望む。

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