米需給緩和の懸念 産地は過剰回避対策を

 政策が転換し3年目の今年、米の需給は緩和局面に入るかどうかの瀬戸際にある。営農計画書の申請期限まで残り1カ月。供給過剰が見込まれる産地は、飼料用米などへの用途変更に最優先に取り組むべきだ。転作の積み上げには支援の拡充も欠かせない。産地交付金などの裁量を持つ自治体の対応を求める。

 農水省が30日示した米の基本指針は、来年6月末の民間在庫量を196万~204万トンと見込んだ。2020年産を適正量で生産した場合の値だ。収穫量や需要動向次第で上振れする可能性がある。同在庫量は180万トンで安定供給を確保でき、200万トンを超えると価格が下がるとされてきた。指針は、今年6月末で既に201万トンになったとする。需要が以前より縮小している中では、一層警戒すべき状況と言える。

 膨らむ在庫は需要の減退が要因だ。指針によると、19年7月から20年6月までの需要実績は、前年より22万トン少ない713万トン。年10万トンとしていた減少トレンドの約2倍だ。米離れに、消費増税による消費の冷え込みや新型コロナウイルス禍の影響などが重なった。

 現在、行政や生産者団体などが、主食用として作付けした米を飼料用などに切り替えるよう呼び掛けている。しかし、主食用に比べて農家収入が見劣りする課題から、需給安定に向けた必要性を理解しても現場では推進が伸び悩む実態がある。新潟県や福島県などは、産地交付金や新型コロナ対策の地方創生臨時交付金を活用し助成しているが、そうした動きは限定的だ。政府は交付金の裁量を持つ自治体への働き掛けを急ぐべきだ。

 20年産単年の転作で過剰分を吸収しきれなければ、実質的に市場隔離を行う米穀周年供給・需要拡大支援事業の活用を検討したい。国は同事業で30万~40万トン分に相当する50億円の予算を計上しており、長期的・計画的に販売する場合の保管経費などを助成する。今年度は1次公募で7道県が計3万2000トンを申請している。国は近く2次公募をする方向で、既に複数県が活用の意向を示している。隔離した米は再び主食用市場に戻ってくるが、21年産の作付けを含めて、産地は過剰回避への対応を考えることができる。

 20年産は販売価格の引き下げを検討する産地が出る可能性がある。しかし、過剰米対策での安易な引き下げは適切でない。できる手だてを講じた上で慎重に判断したい。再生産ができない価格水準は離農や耕作放棄を招く。生産基盤の縮小は、卸や実需も避けたいという。

 米政策に閉塞(へいそく)感が出ている。産地主体の生産調整だけでは需要減少に追い付かないとの見方が強まっている。検証が必要だ。需要の維持・拡大にも本腰を入れるべきだ。パックご飯といった加工米飯や輸出など勢いがある分野に売り込みたい。生産調整との両輪で取り組み、長期的運動にしよう。
 

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