英国の少年ハリー君(5)は無人販売所の店長である

 英国の少年ハリー君(5)は無人販売所の店長である▼毎朝、家の鶏から集めた卵や母親手作りのせっけんなどを農場の外まで運び、テーブルに並べ、料金箱から代金を回収する。売り上げから餌代を払い、残りで漫画やおもちゃを買う。ところが先月14日、テーブルの上から料金箱も商品もなくなっていた。事件は英紙のネット版で知った。母親は「彼はとても動揺し、泣いた。盗難は初めてで、そんなことを誰がなぜするのか理解できなかった」と話した▼記事を読み、米沢藩の「棒杭の商い」が頭に浮かんだ。童門冬二さんが『小説 上杉鷹山』(集英社)に書いた。倹約や殖産興業で財政再建を成し遂げた鷹山。ある日、側近に誘われ出掛けると、山道の端に杭(くい)が立っていた。ざるがつるされ、にぎり飯や野菜などと一緒にお金が。盗む者はいないと聞いて驚く。側近は「あなたのいちばんのご改革は(略)人の心に、信じあう心を甦(よみがえ)らせたことです」と告げた▼先の事件には続きがある。隣人がツイッターに投稿すると、世界中からハリー君に寄付の申し出があった。子どもホスピスに全額を贈り、店長も続けるという▼無人販売所を意味する記事の英語は、直訳だと「正直な屋台」。日本の農村でも見掛ける。商いが成り立つのは正直者が多い証しであろう。
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは