親子間の事業継承 互いに尊重して円滑に

 親から子への事業継承がスムーズにいかないのは、親子だからこそ存在する確執や感情が障壁になっている──との調査結果が公表された。円滑に継承できた経営体は、一歩引いて見て、互いを尊重する傾向があった。家族の結び付きを考える機会が多いお盆の時期に、事業継承の進め方を考えてみたい。

 事業継承の実態を調査したのは、日本の畜産農家や畜産物などを紹介するウェブサイト「どっこいしょニッポン」。サイトの利用者を対象にまとめた。サイトの性格上、回答者はほとんどが畜産関係者だった。

 事業継承について、回答者の35%は「スムーズにいかなかった」と答えた。若い世代の継承者は理由として「経営理念が合わない」「いつまでも子ども扱いする」「完全に経営権を渡さない」「身内だから素直になれない」などを挙げた。

 親世代に対する若い世代の意見からは、最新技術への取り組み姿勢や経営者感覚への不満が読み取れる。「受精卵移植を導入しようと思った時に否定された」(35歳・酪農)「人手の重要性や情報通信技術の活用などに理解を示さない」(42歳・酪農)「昔のやり方を押し通してくる」(24歳・養鶏)などだ。 農業には情報通信や生物工学の最新技術が急速に浸透してきた。社会保険や労務管理といった一般企業のような仕組みへの対応も迫られる。若い世代にすれば親世代が新たな局面に対応できるのか不安が付きまとう。

 経営を譲り渡す親世代にも言い分はある。「搾乳の仕方、金銭感覚、責任感のなさに不安を感じる」(65歳・酪農)「こちらに相談せずに新牛舎の計画を立てていた」(50歳・酪農)など、若い世代が危なっかしく見えてしまう。これまで築いてきた経営への自負もある。

 どちらも不安なのだ。不安が不信になり不満にもつながる。

 農業で法人化が進んできたことに対応し、農研機構は2017年、農業法人の人材育成の要点を四つ示している。この中に、情報共有の推進などと併せ「早期の権限移譲」を挙げた。不安はあるかもしれないが、若手に早めに責任を分担し、権限を委譲するよう促す。法人に勧めているこうした手法は、家族経営にも応用が利くはずだ。

 先の実態調査では、事業継承をうまく進めた経営体から、「お互い得意な分野を尊重し合って、その分野ごとに責任を持つこと」「家族経営協定を定めたり、第三者の目を入れたり」といったアドバイスがあった。感情的にならないようにお互いを俯瞰(ふかん)し、不安を乗り越え、信頼を醸成する方向を重視している。肥育と繁殖で責任を分ける、違う作物を分担するなど、事業別に距離を置く工夫もみられる。

 親子という「密」な関係だからこそ感情の行き違いが起こりやすいと言える。仕事の面では「密」を避け、お互いを尊重することがこつのようだ。
 

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