台風15号から1年 コロナ禍復興停滞 人手足りず…

ビワ山の斜面に放置されたままの防風林のマテバシイ。傾斜がきつく足場が悪い中、安藤さんが状況を確認した(千葉県南房総市で)

 全国有数の農業産地である千葉、茨城などを台風15号が襲ってから9日で1年。果樹や施設栽培で、復旧が思うように進まない。新型コロナウイルスの影響による移動自粛で施工業者が県内に入れないなど、予期せぬ事態も追い打ちをかける。産地は支援事業を活用して復旧を急ぎながら、生産基盤の維持に懸命だ。(木村泰之、福本卓郎)
 

ビワ産地千葉・安房 防風林壊滅し収量減


 全国2位のビワ収穫量を誇る千葉県。当時最大瞬間風速48・8メートルを記録した館山市や南房総市、鋸南町などの安房地域が主力産地だ。南房総市のビワ山の防風林は今も木が倒れたまま。作業道をふさいだ木は農家らで片付けたが、急斜面にある倒木の撤去は進まない。

 350戸でつくる房州枇杷(びわ)組合連合会会長の安藤正則さん(63)は「倒木を撤去していた農家が転落して大けがを負い、自力復旧は諦めた。農家だけで専門業者や資材費用を工面するのは難しい」と打ち明ける。防風林がなくなった園地には海からの風が吹き込む。塩害や実のこすれなどで出荷できないものが相次ぎ、同連合会の2020年産の露地ビワの出荷量は約1万粒と、被災前から半減した。

 市は20年度、30万円を上限に倒木撤去費用の2分の1以内を助成するため、1800万円を予算に計上。加えて、8月から11月までインターネットで1000万円を目標に資金を募り、復旧費用に充てる。8日までに280万円以上が寄せられた。市は「今年はコロナ禍で観光農園も開けず、残った木での経営再建も見通しが立たない。さらに生産者の6割は後継者がおらず、復旧が遅れると離農の恐れがある」(農林水産部)と、手厚い支援で産地を守る。

 県内では農業用施設の被害も甚大で、農業関連被害約664億9900万円のうち、農業用施設が約478億4100万円に上る。国の強い農業・担い手づくり総合支援交付金での施設復旧計画が認められたのは7月末で7627戸で、半数の工事が完了した。県は「施工業者が少なく工事が集中した状況下での進捗(しんちょく)状況はまずまず。ただ、業者が慢性的な人手不足の上、コロナ禍で来県できないのが課題」(担い手支援課)と指摘する。

 館山市のパイプハウス23棟でストックやトルコギキョウを栽培する鈴木啓之さん(43)は、台風15号で7棟が全壊。4棟は再建が進まず、6月に届いた資材が放置されたままだ。「7月に建設できるはずが、9月中旬にずれ込んだ」と嘆く。

 鈴木さんら67人でつくる神戸花卉(かき)生産組合の早川善行組合長は「国の支援で再建意欲は高いが、再建できたのは4割ほど。離農者もいる」と危機感を募らせる。

 ストックは12~4月がピーク。昨季は台風被害とコロナ禍の需要減が重なり、組合の出荷量は例年の6割だった。早川組合長は「再建できた施設から出荷を進め、高品質生産で単価を上げ、一歩ずつ立ち直りたい」と来季を見据える。
 

施設補強 資金に不安 茨城・鹿行園芸産地

 
 茨城県の農業施設被害は、鉾田市、行方市、神栖市、鹿嶋市、潮来市の鹿行地域で県内の8割を占めた。ピーマン、メロンなど全国屈指の産地で、資金面で不安を抱えながらも、懸命な復旧作業で作付面積を被災前まで戻しつつある。

 メロン産地の鉾田市では、復旧の遅れを他の作物のハウスの流用などで補い、今季の作付けは昨年並みを何とか確保した。JAほこたメロン部会長の田山浩志さん(59)は、倒壊したパイプハウス23棟のうち20棟を復旧。多発する災害に備えて耐候性ハウスに建て替えたかったが、骨組みに使うパイプを増やして補強するにとどまった。「棟数も多く、コストをかけられない」と悩む。

 ピーマンを生産するJAなめがたしおさい波崎営農経済センター管内で、施設81ヘクタールのうち54ヘクタールで倒壊や一部損壊の被害があった。資材や人手の不足で一部復旧が遅れているが、今秋の作付けは昨年並みの55ヘクタールを見込む。JA波崎青販部会長の安藤和利さん(61)は「台風シーズンを迎え、不安が募る。国の支援要件が厳しくコストが高いが、産地として耐候性ハウスの導入を考えていかなければならない」と、今後の対応を模索する。

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