豚熱発生 きょう2年 終息への道 まだ遠く ワクチン費用 重い負担

木野内ファームが農場周辺に設置した柵。立ち入り禁止の看板も掲げる(福島県泉崎村で)

 豚熱が国内で26年ぶりに発生して9日で2年。ウイルスに感染したイノシシの生息範囲は広がり対策が必要な地域も拡大を続けている。8月31日には福島県も25都府県目となるワクチン接種推奨地域となった。農家は終息に向け柵の設置などの対策を進めるが、ワクチン接種などが経営の負担にもなっている。

 「まさかここまで来るとは」。福島県泉崎村の木野内ファーム・木野内理社長は母豚300頭を飼い、肥育豚を年間8000頭出荷する。2年間で感染イノシシの生息域が、岐阜県から隣接する群馬県まで来たスピードに驚きを隠せない。

 豚熱は8県の飼養豚で発生し、約16万6000頭が殺処分された。2019年10月に豚でのワクチンが使われ始めてから徐々に落ち着き、飼養豚では20年3月の沖縄県の事例が最後だ。「次に豚で発生するとしたら(ワクチンを打てていない)福島かと思っていた。やっとワクチンが打てる」と木野内社長は安堵(あんど)する。

 国は家畜疾病の侵入に備えて柵の設置予算を措置。木野内ファームも3月に農場周辺の500メートルへ、660万円かけて設置した。自治体の補助もあって自己負担は12・5%に抑えられたが、年間450万円ほどのワクチン費用は、経営に重くのしかかる。
 

清浄国復帰10年かかる


 日本は3日、農家の通報から2年で豚熱を終息できず、国際獣疫事務局(OIE)が認定する豚熱の「清浄国」の資格を失った。復帰にはワクチン接種をやめる必要があるが、イノシシの感染が収まらなけば接種はやめられない。

 ウイルス陽性の野生イノシシは、中部地方を中心に17都府県で確認。イノシシ向けの経口ワクチンで抗体を付与するため、6月までに23都府県で約60万個を散布した。抗体付与率は全国の累計で約20%だ。

 北海道大学獣医学研究院の迫田義博教授は「日本は急峻(きゅうしゅん)な地形もあり、イノシシ対策を少なくとも10年かけてやらないと清浄国にはなれないだろう」と指摘。「理想はイノシシの8割が抗体を持つことだが、6割以上で流行を抑えていける」と強調する。

 日本養豚協会の香川雅彦会長は「農家だけでできることは限られる。農家の自立と国の政策を組み合わせ、養豚産業を成長させる必要がある」と訴える。
 

10経営体が再開を断念


 日本農業新聞の調べでは、豚熱が発生した農場のうち、この2年で廃業した経営体は10経営体に上る。高齢化や後継者がおらず、再開を断念するところが多かった。再開は40経営体・農場、再開予定は14経営体・農場、未定は6経営体だった。

 経営再開を迷う理由には、「野生イノシシで陽性が出ていて再開するのが不安」、経営を断念した理由では「高齢で後継者がいない」「新しい畜舎で始めたいが、資金面でめどがたたない」などが挙がっている。

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