合流新党に望む 対抗勢力へ現場を歩け

 数々の疑惑と危機がありながら安倍政権が7年8カ月の最長政権となった要因には、野党の非力さもある。旧民主党系議員が再結集する合流新党は巨大与党に対抗し得る勢力になれるのか、再び離合集散するのか。国会に緊張感と熟議をもたらし、民主主義の空洞化を避けるためにも野党第1党の責任は重い。

 10日投開票の国会議員による選挙の結果、立憲民主党と国民新党などが合流する新党の名称は「立憲民主党」、代表は枝野幸男氏に決まった。15日に結党大会を開き、正式に船出する。所属国会議員は衆院106人、参院43人の計149人。2017年に分裂した旧民進党と同規模の野党第1党が誕生する。

 民主党政権が下野した12年末の総選挙以後、衆院2回、参院3回の計5回の国政選挙が行われ、いずれも自民・公明の与党が大差で勝利し、安定した政権基盤を築いた。「選挙に強い」が安倍晋三首相に党内の支持が集まる最大の原動力だった。

 一方、2大政党の一翼だった民主党系勢力は分裂と衰勢を繰り返し、巨大与党に多数の野党が挑む「1強多弱」の選挙構図が定着。1人の当選者を決める小選挙区制は、ばらばらのままでは野党に極めて不利だ。逆にいえば、この構図が維持される限り与党は有利に戦える。

 今回の合流で「2強対決」の構図に戻せるかといえば、簡単ではない。共産、社民との選挙協力の他に、玉木雄一郎氏らの非合流組がつくる新党、自民党の二階俊博幹事長らと近いとされる維新の会の出方が野党結集に影響を及ぼす。立憲民主党の参院議席は総定数の2割に満たない。与党が仮に次の総選挙で過半数割れしたとしても、多数派工作で政権を維持する可能性の方が高い。よって、当面の目標は、保守系無所属から参加を表明した実力者、中村喜四郎氏が述べているように、与党に対抗できる勢力の形成になろう。

 そのためには国政でのチェック機能を強化し、同時に国民に向かって政権与党とは異なる選択肢を具体的に示していく以外にない。風頼みの幻想は捨てることだ。基本政策となる安全保障、エネルギー、憲法で確たる軸が不可欠である。農政でも同様だ。枝野代表は戸別所得補償を前面に出す考えだが、米どころには効いても野菜や畜産などの産地には届かない。地域政策と合わせた農業政策をパッケージで訴えなければならない。そして地道に現場を歩き、農業者との対話を重ねることである。

 国会での与党の圧倒的優位が「安倍1強」の基盤となり、政権の長期化とともにその弊害が顕在化した。官邸主導が強過ぎると、農業政策でも与党側が止められなくなることは、安倍政権から学ぶ教訓の一つである。それには野党の弱体化にも責任がある。熟議の政治を取り戻すには、結集した議員の政権獲得への強い志、対抗軸となる政策とともに、枝野代表のリーダーシップが問われる。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは