レタス潤沢で急落 連休見据え販売強化へ
2020年09月15日
レタスの価格が急落している。9月上旬の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1キロ107円と平年(過去5年平均)の37%安となり、中旬は2桁台の相場が続く。9月以降の降雨で干ばつが解消し、高温も続いて生育が急進した。現在は夜温が下がり、下旬にかけては入荷ペースが落ち着く見通し。小売りは4連休を見据え、売り込みを強める。
レタスは、8月の大手7卸の販売量が7278トンと、平年の3割減となった。卸売会社は「下旬には高値疲れが出たものの、干ばつで巻きや肥大に遅れが発生し、例年と比べて不安定な入荷が続いた」と話す。
環境が変わったのは、9月以降。上旬の大手7卸の販売量は3345トンと、同14%増に転じた。主産地を抱えるJA全農長野は、「適度な降雨で干ばつが解消し、夜温も例年以上に高く、生育が一気に進んだ。遅れを取り戻した作型と前進した作型が重なり、量がまとまった」と話す。例年、同時期の1日出荷量は10万ケース(1ケース10キロ)程度のところ、「先週は14万ケースに乗る日もあった」(同)という。
潤沢な出回りを受け、小売りは販促を強める。関東に展開するスーパーは、1玉158円(税別)の通常売りに加え、先週から週に2、3回、98円の特売日を設定。秋商材に切り替わる時期ではあるが、仕入れ担当者は「通常の棚に加え平台のスペースも確保し、売り場を広げる」(同)と話す。
入荷量は、先週から今週前半にかけてピークとなる見通し。長野産は「夜温が下がり、今後の出荷はおおむね例年並みのペースとなる」(全農長野)。一方、後続の茨城産は生育順調で、連休前後から各産地の出荷が増え出す見込み。卸売会社は「連休を見据え、小売りの引き合いは活発。今を底値として乗り切り、連休以降徐々に上向く流れにしたい」と見通す。
レタスは、8月の大手7卸の販売量が7278トンと、平年の3割減となった。卸売会社は「下旬には高値疲れが出たものの、干ばつで巻きや肥大に遅れが発生し、例年と比べて不安定な入荷が続いた」と話す。
環境が変わったのは、9月以降。上旬の大手7卸の販売量は3345トンと、同14%増に転じた。主産地を抱えるJA全農長野は、「適度な降雨で干ばつが解消し、夜温も例年以上に高く、生育が一気に進んだ。遅れを取り戻した作型と前進した作型が重なり、量がまとまった」と話す。例年、同時期の1日出荷量は10万ケース(1ケース10キロ)程度のところ、「先週は14万ケースに乗る日もあった」(同)という。
潤沢な出回りを受け、小売りは販促を強める。関東に展開するスーパーは、1玉158円(税別)の通常売りに加え、先週から週に2、3回、98円の特売日を設定。秋商材に切り替わる時期ではあるが、仕入れ担当者は「通常の棚に加え平台のスペースも確保し、売り場を広げる」(同)と話す。
入荷量は、先週から今週前半にかけてピークとなる見通し。長野産は「夜温が下がり、今後の出荷はおおむね例年並みのペースとなる」(全農長野)。一方、後続の茨城産は生育順調で、連休前後から各産地の出荷が増え出す見込み。卸売会社は「連休を見据え、小売りの引き合いは活発。今を底値として乗り切り、連休以降徐々に上向く流れにしたい」と見通す。
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果実もたるもオール山梨でワイン 丹波山村産ミズナラ全国初活用 甲州市の醸造所が今秋初出荷へ
山梨県丹波山村と甲州市のワイナリー「奥野田葡萄(ぶどう)酒醸造」が、同村産ミズナラを使ったワインだるを開発した。これまで県産材を使ったワインだるがなかったことから、「オール山梨産」のワインを作ろうと企画。村の林業を再興したい思いなども重なり、約4年の歳月を経て完成にこぎ着けた。国産ミズナラのワインだる製造は、全国で初めてという。今秋にこのたるで熟成した白ワインが完成する見通しだ。(長田彩乃)
林業再興めざし開発
県産の材料にこだわるワイナリーの代表・中村雅量(58)さんが考案した。村の特産品開発や林業復活などにつなげたいと、村とワイナリーが共同で開発を進めた。
4年前から取り組みを始め、調査や業者の選定などしてきた。昨年3~12月に村有林を伐採して、2メートル材60本を製材。今年3月末にたるが完成、検品を経て4月にワイナリーへ納品された。
たるには樹齢約70年のミズナラを使用。大きさは直径35センチ、長さ40センチ、容量は18リットル。現在、ワイナリーが昨年に醸造したシャルドネのワインが注がれていて、3カ月程度で熟成が完了するという。
4月中旬にワイナリーで披露された。完成したばかりの17基を岡部岳志村長が中村さんに贈呈した。たるにシャルドネのワインを注いで完成を祝った。
村の担当者によると国産ミズナラを使ったワインだるの製造は全国で初。国産ワインではたるで熟成しないものもあるが「世界的にたる熟成は当たり前」と中村さん。木の香りがワインに移ってバランスの取れた仕上がりになり、料理との相性が良くなるという。
村は面積の98%が山林。森林の多くは東京都の水源林で、村有林は約10%。たるを製造するため伐採することで、森林保全につなげたい考えもある。
中村さんは「ワイン産地の水源の木材を使ってワインを熟成させることは、作り手として最もぜいたくで理想的なものづくりの形。飲みたい人もたくさんいると思う」と喜びを語った。
林業会社に勤めた経験があり、伐採にも携わった岡部村長。「たるを地元産材で作ることで村として『オール山梨』のワイン製造に貢献できる。県産ワインの新たな付加価値創出の第一歩になったと思う。村内での仕事の創出にもつなげていきたい」と、村の産業振興への意欲を見せた。
このたるで寝かせたシャルドネのワインは、今秋に完成する予定だ。約400本を生産する見通しで、村とワイナリーは試飲会なども検討している。
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2021年04月23日
農業試算 「予定なし」 RCEP承認案 参院審議入り
日本と中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の承認案が21日、参院本会議で審議入りした。野上浩太郎農相は、同協定による農林水産業への影響の試算を「行う予定はない」と説明。米や牛肉などの重要品目を関税撤廃・削減の対象から除外し、「国内農林水産業への特段の影響はない」ためだとした。共産党の紙智子氏への答弁。
野上農相は、協定による野菜や果実の関税撤廃について①関税率が比較的低い②品質面から需要が低い──ことなどから「撤廃されても国産価格などの競争条件は大きく変わらず、輸入増は想定しにくい」と説明した。……
2021年04月22日
RCEPの影響試算 農業一人負けが続く 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏
合意された東アジア中心の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の影響についてわれわれが行った暫定試算の結果、日本の国内総生産(GDP)増加率が2・95%と突出して大きく、中国・韓国もわずかに増加するものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)とオセアニア諸国はGDPが減少することが判明した。
つまり、日本がASEANなどの「犠牲」の上に利益を得る、日本の一人勝ちの構造が見えてくる。さらに、日本全体の利益ではなく、日本の中では、自動車の一人勝ちと農業の一人負けの様相を呈している。
農業への影響は軽微との大方の指摘に反して、われわれの試算では、農業生産の減少額は5600億円強に上り、米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)の1・26兆円の半分程度とはいえ相当な損失額である。かつ、RCEPでは野菜・果樹の損失が860億円と、農業部門内で最も大きく、TPP11の250億円の損失の3・5倍にもなると見込まれる。
一方、突出して利益が増えるのが自動車分野で、RCEPでは、TPP11よりもさらに大きく、約3兆円の生産額増加が見込まれる。これは、日本の貿易自由化の基本目標が「農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造」だとかねて指摘してきたことが、RCEPでも「見える化」されたことになる。
なお、政府は日本の農業生産量は変わらないと試算しているが、これは関税が撤廃されても、それによる生産量の減少がちょうど相殺されるように生産性が向上する、つまり、そういう政策が打たれるので生産量は変化しないというメカニズムの産物である。「影響がないように対策するから影響はない」と言っているだけで影響試算とは言えない。
さらには、種苗の育成者権を強化し、農家の自家増殖の権利を制約することを義務化する法整備を日本が強く求めたが、各国の農民・市民の猛反発で実現できなかった。これが意味するのは、世界的な反発で他国には押し付けられなかったことを国内では種苗法改定でやってしまったという事実である。
今こそ、日本と世界の市民・農民の声に耳を傾け、「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業利益追求のために、国内農家・国民を犠牲にしたり、途上国の人々を苦しめたりする交渉を再考する必要がある。
保護主義(銅)自由貿易・規制改革でない。市民の命と権利・生活を守るか、一部企業の利益を増やすかの対立軸だ。「自由貿易・規制改革」を錦の御旗にして、これ以上市民の命・権利と企業利益とのバランスを崩してはいけない。これ以上日本政府・企業が「加害者」になってはいけない。
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2021年04月20日
JAのSNS 国産ファン増へ活用を
JAグループでインターネット交流サイト(SNS)を使った情報発信が広がってきた。多くの読者を抱える公式アカウントもある。手軽に情報収集できるSNSの特性を理解し、受け手が何を求めているかをより意識した発信が重要だ。国産農畜産物やJAのファン拡大に活用しよう。
広く普及しているSNSの一つがツイッターである。国内の利用者数は4500万人に上る。最大140字という制限があり、短文で気軽に読めるのが特徴だ。写真や動画も付けることができる。
JAグループの公式アカウントで注目されているのが、JA全農の「全農広報部『公式』日本の食を味わう」。人気の目安となるフォロワー(登録読者)の数は3月に10万人を超え、4月現在で約10万5000人に上る。
フォロワーが伸びたきっかけは20年4月の投稿だ。新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言や一斉休校で需要が落ち込んだ牛乳・乳製品の消費を促そうと、牛乳とヨーグルト、砂糖を混ぜるラッシーの作り方を紹介。反響が大きく、その後も国産農畜産物を使った手軽なレシピを中心にした投稿で評価を高める。テレビ番組でも紹介され、フォロワーが増え続けている。
SNSを調査・分析し、企業のマーケティングを支援する会社が、企業の公式アカウントをフォローすることで利用者の意識・行動がどう変化したかを複数回答で調べた。その結果、その企業について「より詳しくなった」が48%、「より好きになった」が39%で上位だった。
企業の公式アカウントは一般的にその企業のPRが目的なのに対して、全農は主に国産農畜産物の情報を発信する。この調査結果を全農のツイッターに当てはめると、国産農畜産物のファン獲得につながっていると言える。
担当する全農広報企画課は「自分たちの出したい情報よりも、受け手に役立ったり、面白かったり、ほっこりしたりする情報を出すようにしている」と説明する。伝わりやすい、やわらかい表現を使うことも意識。消費拡大のメッセージを押し付けるのではなく、実用的で共感を呼ぶ内容が受け入れられている。SNSで情報を発信するJA担当者は、参考にしてほしい。
SNSは、広報誌やホームページなどこれまでの媒体に比べてより身近に感じられ、気軽に読まれる。特にツイッターにはリツイートという再投稿機能があり、情報が広がるのが早い。そうした特性を踏まえて内容を考えることが大切だ。一方で事実誤認や不適切な表現などがあれば、非難が殺到する「炎上」のリスクがある。複数担当者でチェックするなどの対策を講じた上で、JAも活用を進めよう。
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2021年04月23日
小水力発電の振興 農林業経営の下支えに
温室効果ガスの削減が求められる中で、小規模でもクリーンな電力を供給する小水力発電への期待が高まっている。河川や農業用水路を抱える農山村は、再生可能エネルギーの宝庫で、農業や林業などの基盤産業を支える可能性もある。政府は、本格的振興に取り組むべきだ。
小水力発電は、身近な河川や農業用水などを利用する「持続可能な循環型電源」だ。資源エネルギー庁によると、出力1000キロワット未満で固定価格買取制度を利用するのは約680カ所あり、発電容量は約15・5万キロワット。100万キロワット内外の原子力発電1基分にも満たない。しかし安全性は高く、拡大が必要だ。
地形に高低差があり、稲作で用水路が発達している農山村は設置に好条件だ。電力の地域自給率を高めたり、売電収入を得たりすれば地域活性化につながると期待される。
岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)地区では、発電事業を目的にした石徹白農業用水農業協同組合を設立。売電収入(2000万円超)を得て、耕作放棄地の整備や水路維持、集会所や街灯の電気代などの費用に役立てている。学ぶべき点は多い。
地域政策に詳しい埼玉大学大学院の宮崎雅人教授は、「農業や建設業のような産業を維持するための重要な手段の一つになるのではないか」と期待する。農林業者を含め事業者が取り組むことで兼業収入が得られ、経営を下支えする可能性があるためだ。
農水省は、かんがい排水など土地改良施設の操作に必要な電力の3割を小水力発電で賄う計画に取り組んできた。これまで、150近い土地改良施設で発電が行われ、ほぼ目標を達成した。今後5年計画で45施設に導入し、約4割を小水力発電などで賄う計画だ。加工施設など農業施設への電力供給も増やすべきだ。
小水力発電を広げるには、電力の安定供給に欠かせない安価な蓄電池の開発や、通年で水を確保する環境整備が課題になる。また、初期投資の確保や、電気の固定価格買取制度の充実、送配電網の拡大等も必要だ。発電事業を農業や林業など地場産業とつなぐ人材の育成も欠かせない。農山村振興の観点からの支援を急ぐべきだ。
日本の電力供給は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを排出する石炭と石油による発電が4割近くを占め、「石炭中毒」と世界的な批判を浴びている。再生可能エネルギーへの転換は喫緊の課題の一つだ。
菅義偉首相は、2050年までに日本の温室効果ガス排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を表明した。農山村での小水力発電の拡大は、目標達成への政策的要請にもかなう。
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2021年04月18日
経済の新着記事

和牛子牛80万円迫る 堅調の枝肉相場に連動 高止まり懸念も
和牛子牛価格が80万円に迫る高値で推移している。枝肉相場が好調なことに加え、大型連休の需要期向けに肥育牛の出荷が進み、導入意欲が強い。一方、資金力に余裕がない中小肥育農家を中心に子牛高値の負担感が大きくなっており、価格の高止まりを懸念する声も出ている。(斯波希)
JA全農がまとめた全国の主要家畜市場の4月の取引結果によると、1頭平均価格は78万7957円(22日時点)。……
2021年04月23日

非接触 イチゴ鮮度そのまま 個別容器に注目 宇都宮大発ベンチャー
イチゴを直接触らずに収穫から消費者の手元まで届けられる容器「フレシェル」が、大粒で完熟のイチゴでも傷まずに流通できると注目を集めている。宇都宮大学発のベンチャー企業、アイ・イートが開発した。追熟しないイチゴを、完熟まで甘さを最大限引き出して出荷できる。
同社によると、ドーム型のデザインが高級感を演出し、東京都内の百貨店では1粒1500円以上で販売できた。ドームは直径が73ミリ、高さが100ミリで、50~70グラムの果実が入る。県が育成した「栃木i27号(スカイベリー)」などの大粒な品種に対応する。
収穫の際、茎を長めに持ってイチゴをもぎ取り、茎を持ったままへたの外側にスポンジ製の土台を差し入れる。さらに透明のドーム状のふたを付けると、果実がどこにも接触していない状態で出荷・流通ができる。
容器内には香りも閉じ込められ、開けた時に香りが広がると好評だ。
日持ち効果も確認した。同社によると、10日以上は傷まず、保存に適した環境下では最大1カ月ほど品質を維持したという。大粒で完熟したイチゴは傷みやすく、主に産地近郊でしか味わえないが、日本各地や海外へも届けられる。2021年からタイへ出荷し、現地で好評だったという。
容器は、イチゴの自動収穫機で利用するために開発がスタート。同社は自動収穫機の作業スピードの向上なども併せて研究を進めていく。
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2021年04月22日

生花「母の日」商戦 自宅で楽しむセット
5月9日の「母の日」に向け、生花小売り各社の売り込みが活発だ。今年も雑貨や食品などと合わせた、個性的な商品の提案が進む。新型コロナウイルス下の自宅時間を花で楽しんでもらおうと、販促を強める。
青山フラワーマーケットは、水差し型の花瓶にカーネーションを挿した「ピッチャー&カーネーションセット」(3850円)を販売する。「花瓶を贈ると母の日後も花のある暮らしを楽しめる」と呼び掛ける。カーネーションの花束に、中川政七商店が作る、カーネーションの色素で染めたオリジナルのストールやふきんを合わせたセットも薦める。
カレーやオリーブオイルと
日比谷花壇が販売する花束とレトルトカレーのセット(同社提供)
日比谷花壇は「花と料理ですてきなひとときを」と、生花と食品のセット商品に力を入れる。自立するカーネーションの花束に、スープストックトーキョーのレトルトカレー4種を合わせて提案(6600円)。花束と日清オイリオグループのオリーブオイルとのセット(5500円)もラインナップする。
ユニークな飾り方提案
カレンドの「マグカップブーケ」(花恋人提供)
花恋人が運営するカレンドは、マグカップにカーネーションの花束を挿した「マグカップブーケ」(3色、4180円)を用意する。花を飾り終えた後はマグカップ単体で使用でき、箱も小物入れになる。昨年発売して話題を呼んだ、生花と傘で作る「アンブレラブーケ」も「母の日」限定デザイン(6380円)で展開する。
エルベ・シャトランの「ボールビジュー」(第一園芸提供)
第一園芸は、赤いカーネーションの鉢植えと帝国ホテルのクッキーのセット(5720円)がオンラインで人気だ。系列店のエルベ・シャトランでは、丸いガラス花瓶に水の中まで花びらを浸したアレンジ「ボールビジュー」(3色、Mサイズ8800円)を販売。「従来と違った花の飾り方が楽しめる」(同社)とPRする。
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2021年04月22日

EC和牛ギフト活発 花と合わせ華やかに 花束に見立て楽しく
5月9日の「母の日」に向け、ギフト用の和牛を提案する動きが電子商取引(EC)市場で活発化している。花とのセットや肉を花に見立てた商品など、各社が趣向を凝らす。今年は8割が「母の日」の贈り物をECサイトで購入するとのアンケート結果もあり、商機が広がっている。
黒毛和牛のギフト専門ECショップ「evis meats」は、和牛肉と生花をギフトボックスに詰め合わせた商品を売り込む。「箱を開けた瞬間のサプライズだけでなく、花を飾ることで食卓も華やかに彩れる」とアピールする。
肉の部位はイチボ、モモ、サーロインなど6種類から選べる。価格は1万3360円で、肉の量は部位ごとに異なる。同店は1月にオープンし、完売も相次ぐなどギフト用の和牛が好評という。
焼き肉店などを運営する翔山亭(東京都千代田区)は、和牛肉を花束に見立てた「肉フラワーギフト」を自社ECサイトで販売する。渦状に巻いた肉が、バラの花びらのように見えるのが特徴だ。「店舗以外でも和牛を楽しんでもらえるよう、ギフト開発に力を入れている」(同社)。
霜降り肉と赤身など3種類を組み合わせた「愛」(250グラム)が6000円、「優」(400グラム)が9000円。
日本最大級の取り寄せ情報サイト「おとりよせネット」のアンケートによると、今年は77%がネット通販で「母の日」のプレゼントを購入すると回答。百貨店などの実店舗は減少傾向となった。「生活スタイルが変わり、行動が制限される中、対面の機会が少ない『ギフト通販』を利用する人が定着してきた」と指摘する。
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2021年04月21日
生乳増産2年連続 都府県も8年ぶり 指定団体20年度
中央酪農会議(中酪)によると、2020年度の指定生乳生産者団体(指定団体)の受託乳量(生産量)は2年連続で前年を上回り、700万トン台に回復した。北海道がけん引し、都府県でも増頭対策の効果が現れ、8年ぶりに前年を上回った。今後、増産を軌道に乗せるには都府県の酪農基盤強化や、指定団体による需給調整機能の発揮が引き続き求められる。
指定団体の受託乳量は国内生乳生産量の9割強を占める。20年度の受託乳量(うるう年修正後)は前年比1・4%増の707万トンとなり、4年ぶりに700万トンを超えた。北海道は2・3%増の401万トンで、初めて400万トンを突破した。乳用雌牛が増加し、粗飼料も良く、1頭当たり乳量も安定していた。
都府県は0・3%増の306万トン。中国地方が6%増と最も拡大し、近畿や九州も1、2%増産した。最大の関東は0・6%減だったが、2月以降に生産が伸び、当初の見通しから上振れした。
生乳生産量が上向く中で課題もある。全国的にメガファームが増産をけん引するものの、小規模・家族酪農の離農が進み、空き牛舎も目立つ。都府県酪農の基盤を強化するため、関東生乳販連は「第三者継承など担い手確保に向け、実態に即した支援が必要」(迫田孝常務)と指摘する。
新型コロナウイルス下の生乳流通では、指定団体が全国連や乳業メーカーと緊密に連携し、生乳廃棄を回避したことに成果があった。その結果、20年度の脱脂粉乳・バター向けは増加し、年度計では6・6%増の169万トンに拡大。家庭需要が伸びた飲用向けは1・4%増の325万トン、業務需要の低迷で生クリーム等向けは4・8%減の125万トンと縮小した。
コロナ禍の生乳需給への影響は長期化する見込み。業務需要の回復はいまだ不十分で、バターなど乳製品在庫が積み上がる課題も残る。不透明な消費環境の下で増産を軌道に乗せるには、「需給調整の要である指定団体の機能発揮が重要」との声が強い。
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2021年04月19日
コロナ下 消費行動変化 「食品保存増」2割 自宅で料理増3割 JCA調査
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米や肉、野菜など食品の各品目で、保存量が増えた消費者が2割に上ったことが、日本協同組合連携機構(JCA)の2020年度の調査で分かった。自宅での料理回数が増えた人は3割いた。外出自粛や在宅勤務の増加が背景にある。食品の販売は、消費者の生活様式変化に対応した戦略が鍵になる。
JCAの「農畜産物等の消費行動に関する調査」で、毎年実施する。20年度は20年8~9月にインターネットで全国の2159人が回答した。
自宅での食品(冷凍を含む)の保存量が増えたと……
2021年04月18日
ペルーで新パナマ病 バナナの大敵、まん延防止へ
ペルー政府は、バナナの大敵である新パナマ病(TR4)が、最北部に位置するスヤナ州のバナナ農園で確認されたと発表した。ペルー全土を対象に植物防疫対策の緊急事態宣言を発令し、隔離の徹底などまん延防止に取り組む方針だ。
南米ではコロンビアで2年前にTR4の侵入が確認され、今回ペルーに広がった。世界最大のバナナ輸出国であるエクアドルが両国に挟まれる所に位置し、南米バナナ業界では大きな衝撃が走っている。
世界のバナナは、1950年代にフザリウム菌によるパナマ病によって主流品種の「グロスミシェル」が一掃された。現在は抵抗品種の「キャベンディッシュ」がほとんどを占める。ところが、フザリウム菌の別の系統TR4による新パナマ病が80年代になってアジアから猛威を振るい始め、アフリカなどに広がり、南米に侵入した。
栄養繁殖の商業用バナナは世界中でTR4に弱い「キャベンディッシュ」一色のため、感染の広がりを防ぎにくい。日本が多くを輸入するフィリピンでもTR4は深刻な打撃を与え、園地の改廃などが進んでいるという。
南米の研究者らとTR4の研究をしている東京農工大学の有江力教授は、人や車の往来で汚染された土壌を通じて感染が広がり「バナナの生果実から病気がうつる心配はないだろう」と指摘する。
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2021年04月18日

走る、つなぐ 地域の食 [コロナが変えた日常]
新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛や飲食店の営業短縮が長期化する中、東京都三鷹市では、地域密着の宅配サービス「チリンチリン三鷹」が1周年を迎える。
JA東京むさしの直売所「三鷹緑化センター」を拠点とし、農家が生産する野菜などの生鮮食品と、地元の飲食店が作った弁当などを自転車で宅配。コロナ禍で休業を余儀なくされた人らが配達員となり、市内全域に届けている。
この仕組みに、農産物の新たな販路を探していた農家が加わることで、消費者は新鮮で安心な野菜や肉、卵などを在宅のまま買えるようになった。購入者は配達員に1回500円の支援金を支払う。
参加農家は1年で2戸から20戸に広がった。直売所にない物は配達員が協力店に立ち寄って調達。注文を受ける電話の応対は、地元の葬儀社が担当するなど、地域挙げての協力体制だ。多品目の供給ができるようになり、地元産の食材にこだわる飲食店も増えた。
市内在住の発起人、濱絵里子さん(38)は「みんなの『困った』を結び付けたら面白い展開になった。今後は野菜ごみを再び農地に返すなど、地元で活動の輪を広げていきたい」と話す。(仙波理)
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2021年04月17日
切り花 品目間で明暗 洋花好調、菊は葬儀用が苦戦
春の需要期が過ぎ、切り花相場は品目で明暗が分かれている。家庭用など用途の広いカーネーションやバラといった洋花は平年と比べ1~3割高で推移。一方、葬儀や供え花に使う輪菊や小菊は1~3割安と低迷する。業務用の仕向けが多い産地は、新型コロナウイルス禍の需要不振から販売が減少する中、新たな販路を模索している。(柴田真希都)
直近の取引があった14日の日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)は、カーネーションやバラ、ガーベラが平年比2、3割高。いずれも小幅だが3営業日連続の上昇で、この時期には異例の高値基調だった。「家庭での普段使いの他、開店の祝い花や装飾など用途が広く、売れ行きが良い」(大田花き)。
今年の切り花全体の相場を見ると、1、2月は大きく下落した。大都市圏の緊急事態宣言再発令と低温が直撃し、月別の日農平均価格は平年比2割安の1本当たり53円と低迷。一方、3月は送別会や彼岸向けの仕入れが進んだことから70円と高水準で、販売量も過去2年を上回り、活発な取引となった。
しかし、彼岸が明け通常期に戻ると、菊類などが再び平年を下回る展開に。輪菊は彼岸後から11営業日連続で平年比1、2割安で推移し、14日は39円と2カ月ぶりに40円を割った。小菊も8営業日連続で平年を1~3割下回る。「量販店の仏花束の動きが鈍い。新型コロナの感染再拡大によって、主要な購入層の高齢者が店に行く頻度が減っている」(同)。
通常であれば、小売りや加工業者が前もって多めに仕入れるケースも多いが、コロナ下では消費の先行きが不透明なため、仕入れを必要最小減に抑える傾向だ。物日向けは間際に足りない分をせりで買う業者が増え、せりよりも高く売れるはずの注文販売分があおりを受け、苦戦している。
輪菊の主産地、JA愛知みなみ(田原市)では、今年度の注文の年間契約分が大きく減った。「コロナ禍による葬儀縮小で上位等級の減少が大きい」(同JA)。減少分を補うため、従来輸入品を使っていた業者に置き換えを提案したり、5月の「母の日」に向けた墓参り需要(母の日参り)を当て込み、積極的に注文を取るなど、新たな販路の開拓に努めている。
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2021年04月16日

米の新顔 期待と不安 福島「福、笑い」 秋田「サキホコレ」 需給緩和、コロナ…
米どころの東北地方で、今年から来年にかけて福島県と秋田県のオリジナル品種が相次いでデビューする。県はブランド化に力を入れるが、米の需給緩和や新型コロナウイルス禍が影響し、販売環境は決して良くない。他県の銘柄米も数多くある中、幸先の良いスタートが切れるのか──。生産者は気をもんでいる。(音道洋範)
福島県からは2021年秋に「福、笑い」がデビュー。秋田県では22年秋のデビューを前に、今年から「サキホコレ」の販促を本格化させる。両品種とも、県は“最上位品種”と位置付けている。
「福、笑い」は21年に25ヘクタール、130トンの生産を計画。県やJAなどでつくる協議会が、毎年需給を見極めて生産量を調節することで希少価値を高め、高価格の維持とブランド確立を進める。
「『福、笑い』の存在感を高めていきたいい」と話すのは福島県農産物流通課だ。パッケージは青色を基調にして人々の顔を描いたものを採用。農業生産工程管理(GAP)認証の生産者だけが栽培できるなど、独自性を打ち出す。
福島県白河市で、新品種を栽培する入方ファーム代表の薄井惣吉さん(67)は、福島県産米は原発事故の「風評被害」が残ることを挙げ、「福島の生産者が、希望やプライドを取り戻すきっかけになれば」と思いを込める。
薄井さんによると昨年、「福、笑い」の生産者買い取り価格は1俵(60キロ)1万8000円前後と、同県産「コシヒカリ」を6000円ほど上回った。香りが立ち、強い甘味があると評価され、生産者の期待は大きい。
一方、販売環境は悪化している。農水省によると2月の福島中通り「コシヒカリ」の相対価格は前年比12%値下がりした。今秋以降も米価下落への懸念は根強く、薄井さんは「『福、笑い』がデビュー後にどれだけ市場に受け入れられ、価格を維持できるかが鍵だ」と語る。
秋田県産の「サキホコレ」も、21年秋にプレデビューする。味にこだわりを持つ消費者や飲食店などを主な顧客と想定し、今年は80ヘクタール、約400トンを生産する予定だ。
県は知名度の高い「あきたこまち」で培った販路や米どころのイメージを活用し、販路拡大につなげる考え。首都圏と県内の米穀店や百貨店を中心に売り場を広げていく計画で、「価格以上に価値のある米だと消費者に感じてもらいたい」(秋田米ブランド推進室)と期待する。
ただ、秋田米もコロナ禍や近年の豊作傾向で在庫が増加。県農業再生協議会が20年に行った試算では、21年6月末時点の推定在庫量は15万5733トンと、過去5年で最大となる見込みだ。県の担当者は「『サキホコレ』は販売サイドの関心が高く、数量も少ないため影響はない」とみるが、秋田米を扱うある米穀業者は新品種に期待しているとした上で「メイン品種の値下がりが止まらない中、ブランド米への下押し圧力も相当なものになるだろう」と不安を抱える。
明確な印象 打ち出せるか
農産物のブランドづくりに詳しい静岡県立大学の岩崎邦彦教授
米は毎年さまざまな銘柄米が出ているが、消費者が明確なイメージを持っている銘柄米は極めて少なく、ブランドではなく商標にとどまっているのも多い。
農産物のブランドを確立させるためには、産地が明確なイメージと特徴を持ち、それを消費者に共有してもらうことが大切だ。
味や食感などはもとより、形状、栽培方法など何らかの形で日本一と打ち出せるほどの個性を持つことが必要ではないか。
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2021年04月13日