北海道地震2年 停電教訓に強い農業を

 前代未聞の全道規模の停電に陥った北海道地震から2年が過ぎた。農業にも大きな影響が出た。特に酪農は生乳廃棄に追い込まれた。この教訓を生かし、自家発電設置が進む。災害に強い農業をさらに加速したい。

 北海道地震では、2018年9月6日に最大震度7を観測し、関連死を含めて44人が死亡した。午前3時7分に発生。道内のほぼ全域で大規模停電(ブラックアウト)が起きた。傷痕はまだ癒えない。復興は道半ばと言っていい。国と自治体には、被災者の要望に沿った手厚い支援が引き続き欠かせない。

 大規模な土砂崩れで37人が犠牲になった厚真町は、追悼式で犠牲者を悼むとともに一刻も早い復興を誓った。道によると、全半壊した住宅は約2300戸、被害の大きかった厚真、安平、むかわの3町で8月末現在、318世帯500人以上が避難生活を続けている。

 地震は農業にも被害を及ぼし、多くの教訓を残した。特に大規模停電では、年間で全国の6割弱に当たる生乳生産400万トンを誇る酪農が大きな影響を受けた。搾った生乳を冷却しないと2時間ほどで乳質が劣化し販売できなくなる。搾り続けないと牛に乳房炎が発生する。しかも冷却した生乳を乳業に持ち込んでも、乳製品工場が稼働できず廃棄したケースも出た。停電に伴う生乳廃棄は「酪農版ブラックアウト」とも称された。

 緊急事態を踏まえ、農水省や道も支援を実施した。大きな柱が、酪農家ごとへの自家発電設備(配電盤)の導入助成だ。道の調査では8月末現在で道内5200戸の酪農家のうち3800戸(73%)で導入したことが分かった。1年前の40%から拡大した。今年度中に約8割に広がる見通しだという。特に道東の大規模酪農地帯で顕著だ。

 自家発電機や、電源を切り替える配電盤設置費用の補助、酪農産地のJAによる独自支援策の成果だ。主産地JAでは、組合員に貸し出す自家発電機も拡充してきた。生乳を受け入れる乳業の自家発電設備導入も進む。よつ葉乳業は道内2工場から全4工場に拡大した。

 こうした中で、JAグループ北海道は今年から毎年9月6日を「防災の日」とし、9月1~6日を「防災期間」に設定した。全道停電による2年前の惨事を教訓にし、災害への備えの重要性を改めて認識するためだ。JA北海道中央会の小野寺俊幸会長は、JAに出向き実際に酪農家の自家発電が稼働するかを確認。「ブラックアウトで絞った生乳が出荷できなくなったことを忘れることなく、防災への危機管理を高めたい」とも強調した。危機感の表れだ。

 新たな希望も芽吹く。厚真町には震災以降327人が転入。日本一の産地であるハスカップの生産者などに育ち始めた。被災地支援から、定住し復興の担い手へ。農家を支える共助と公助を核に、災害に負けない北海道農業としても注目したい。
 

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