ECサイトで「無農薬」表示 農水省「規制の対象外」 「認証意味ない」反発も

あるECサイトで「無農薬」を検索すると2000件以上該当する

 農水省は、「無農薬」「無化学肥料」といった表記を禁止する「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」について、一部の電子商取引(EC)サイトを対象外と判断していることが、日本農業新聞の調べで分かった。時間と費用をかけて有機JASや特別栽培農産物の認証を取得した生産者からは、反発の声が上がっている。同省が進める有機農業の普及にも影響を及ぼしかねない状況だ。(音道洋範)
 
 ガイドラインではスーパーマーケットや直売所など不特定多数に農産物を販売する場合、「無農薬」などの表記を禁止している。消費者に優良誤認を招かないためだ。

 一方で、農水省基準認証室の担当者は「各サイトの交流機能を用いれば生産者と消費者がやりとりでき、相互に納得した上で売買できるため、不特定多数への販売に当たらない」とし、一部サイト上でそれらの表記を認めている。

 同省の方針に、各機関で認証を取得した生産者からは反発の声も上がる。福島県広野町で有機JAS認証を取得した米を販売する新妻良平さん(61)は「『無農薬』という通りの良い言葉があふれると、認証を取った意義が失われかねない。厳格に運用すべきだ」と話す。同県いわき市で有機JAS認証を目指す農家も「本当に無農薬だと誰が担保するのか」と指摘する。

 複数の関係者によると、同省はサイト運営側に方針を伝えているというが、運営者側の反応はさまざまだ。

 ポケットマルシェは無農薬表記を禁止しないことを表明。高橋博之代表は「生産者と消費者をつなぐプラットフォーム側から動くのではなく、まず生産者側がしっかり情報提供をすることが重要」と話す。「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは「既存ガイドラインの順守をお願いしている」と説明した。

 国内の有機栽培は、近年低空飛行が続いている。同省は2014年、有機栽培を19年度までに農地面積の1%まで拡大する方針を掲げたものの、直近の実績は0・5%(18年度)にとどまっている。
 

品質担保されず運営者にも責任 秋田県立大・酒井准教授


 コロナ禍以降は巣ごもり需要もあり、ECサイトでの有機農産物や食品の販売額が2桁近く伸びた事業者も見られる。

 有機農業に取り組んでいても有機JAS表示をしない生産者は多い。とは言っても、しかし、ウェブサイトで「無農薬」とあったからと言って、その品質は担保されない。

 そもそも有機JASや特別栽培ガイドライン表示の目的は優良誤認を防ぎ、消費者利益を守ることだ。消費者が確かなものを購買することは、有機農業や特別栽培に取り組む生産者を支えることにもなる。

 適切な情報で信頼できる生産者や販売者を選ぶためには、生産者や販売者はもちろん、ウェブサイトの運営者にも提供する情報のマネジメントが求められるのではないか。

 生産者や消費者の有機農業や有機農産物・特別栽培農産物表示の認知度にも課題がある。国にはこれらの認知度を高める施策や対応も求められる。

<メモ> 特別栽培農産物

 節減対象農薬の使用回数や化学肥料の窒素成分量が、地域の慣行栽培より50%以下で作られた農産物。都道府県などが認証する。「有機農産物」と表示できる有機JAS認証は、禁止農薬や化学肥料を2年以上使用していないことや、他の園地からの飛散防止対策を取ることなど厳しい条件が定められている。

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