新たな過疎法 分散型社会の受け皿に

 新型コロナウイルスとの共存に、過疎地域の「生活空間」を有効活用すべきである。東京一極集中の解消に向けた地方分散型社会の受け皿として、移住・定着できる環境づくりを支援する新たな過疎法が必要だ。

 全人口の9%で国土の6割を支える過疎地域は、経済成長などに伴う急激な人口流出で地域社会の崩壊に直面。4次にわたる過疎法で支援してきたが、人口減少に歯止めがかからず公共交通手段の確保や集落の維持が一段と難しくなっている。「自立促進」を掲げた現行過疎法は来年3月末で期限が切れ、その後の対策が焦点になっている。

 自民党の過疎対策特別委員会は「今後の過疎対策の基本的な考え方」(素案)をまとめ、10年間の時限立法で支援を継続する方針を固めた。コロナ禍を踏まえ、東京一極集中から地方分散型社会への受け皿として、過疎地域の新たな役割を重視したのが特徴だ。年内をめどに政策大綱をまとめ、公明党や野党と協議、議員立法として来年の通常国会に法案を提出する。早期に成立させ、同年4月の施行を目指す。多様な意見を現場から吸い上げ、効果的な支援になるように英知を結集すべきだ。

 過疎市町村などでつくる全国過疎地域自立促進連盟は①住民が安心・安全に暮らせる生活基盤の確立②高度情報通信等社会の恩恵を享受できるインフラ整備③地域資源を活用した産業の振興と雇用の創出――などを求める。法案への反映が必要だ。また総務省の過疎問題懇談会は日本の人口が減る中で、持続可能な社会・経済システムを過疎地域で先駆けて構築するよう提起。少ない人口で広い空間を活用する「先進的な少数社会」と位置付けた。重要な視点だ。

 都市への人口集中が大きなリスクを伴うことは、コロナ禍や集中豪雨などで明らかだ。地方分散には、移住者が安心して生活し、定着できるよう過疎地域の環境整備を急ぐ必要がある。

 デジタル社会へのインフラ整備や、地域公共交通網の維持、医療・介護人材の確保などは待ったなしだ。こうした取り組みは財政基盤が弱い過疎市町村の「自助」では難しく、国の支援が不可欠だ。地域の活性化には産業の振興が欠かせない。企業誘致に加え、農業や林業振興に力を入れる必要がある。「家族農業」を重視し、集落機能を維持できるようにすべきだ。6次産業化を進めるなどで、雇用の場をつくることも大切である。

 農水省は、新しい食料・農業・農村基本計画で地域政策の充実を打ち出した。国土交通省も感染症のリスク分散に向けた国土計画の検討を始めた。各省の取り組みを総合化し、効果的な政策体系を構築してほしい。

 個性が豊かで魅力ある地域づくりは地方分散型社会につながる。菅義偉首相も地方振興を強調する。ウイルスと共存せざるを得ない「ウィズコロナ時代」に対応した過疎対策を、政府と与野党は打ち出すべきである。
 

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