気象予測で畜産支援 収益向上へ適期給餌 豪州の助言者制度広がる

 オーストラリアの畜産が盛んな地域では、農家に気象予測を伝え、経営を支える助言者、クライメートメートを置く新たな仕組みが広がっている。気象予測を基に牧草の生育状況を見通し、必要な餌の補足量や牛の売却時期などを助言するのが特徴だ。北部のクイーンズランド州が中心になって2018年から始め、他州にも広がっている。

 クライメートメートは、気候変動や牛肉生産に精通する研究者と生産者が務め、気象の見地から農家の相談に乗る。同州政府とオーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)傘下の給餌装置を開発するMLAドナー、サザンクイーンズランド大学などが合同で進める「北オーストラリア気候プロジェクト」の一環として始まった。21年まで続く計画で、西オーストラリア州キンバリー、クイーンズランド州北西クイーンズランドなど8地区に設けていたが、今年9月には西オーストラリア州ガスコインなど、さらに8カ所を増やした。

 「地域の牛のほとんどは生涯を放牧地で過ごすため、気候変動の予測は大切だ」。キンバリーでクライメートメートを担当するアン・マリー・ヒューイさんは語る。7000頭を飼う畜産農家として、同地域の60の経営体に気象予測や助言を提供している。

 牧草地に日照りが続いた場合、畜産農家は干ばつによる餌の供給不足を危惧し、早期売却することがある。しかし気象予測で後に降雨があることを知れば、早期売却をやめて経済損失を防げる。気象情報を使えば、牧草の生育を予測して穀物の餌の補足量も量れる。

 ヒューイさんはこれまでに畜産農家向けの気候変動講習会を2度開いた。頻繁に生産現場を訪ね、生産者に有益な気象データへのアクセス方法を教え、雨季の開始時期や降雨の予測量を伝えている。

 ヒューイさんは日本農業新聞の取材に「気候予測データは牧草利用や飼料の購入計画だけでなく、子牛の離乳時期や農場の人員配置にまで影響する要件なので重要だ」と話す。仕組みの普及に携わるサザンクイーンズランド大学のジェラルディン・マッケンジー教授も「干ばつの多い北部の気候予測は、畜産農家の生産性と収益性を向上させるために欠かせない」と強調する。

 MLAは、今年5月までの肉牛の平均成体枝肉重量は前年比7キロ増で、1頭当たり29キロになったとする報告書を発表。「クライメートメートによる牧草と穀物飼料の有効利用の指導が奏功した」と評価している。
 

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