野生動物の侵入を確認 群馬・豚熱発生農場

 群馬県高崎市で発生した豚熱について農水省は7日、感染したイノシシから野生動物を介して農場にウイルスが持ち込まれた可能性が高いとの見方を示した。離乳豚の飼育箱周辺にカラスや猫、ネズミなどが侵入していた。同省は県に対し、県内の全農場に飼養衛生管理基準の確認や順守の再徹底、早期通報を求めるよう指導した。

 同日、専門家でつくる同省の疫学調査チームでまとめた。飼育箱の半数には屋根がなく、防鳥ネットなどもないこと、飼育箱に入る際は長靴の消毒などは行っていないことも感染の要因に挙げた。農場内のウイルス感染状況を踏まえ、感染した時期は7月末~8月中旬と推定した。

 農場から県への通報は9月25日だったが、「(県が任命している獣医師の)家畜防疫員が子豚の下痢と死亡を確認した17日には豚熱を疑うべきだった」(同省動物衛生課)と指摘した。繁殖豚や肥育豚にはワクチンの効果を確認できたとしている。
 

豚熱拡大を防ぐには 北海道大学大学院獣医学研究院 迫田義博教授に聞く

 

迫田義博教授
 飼養豚への豚熱ワクチン接種が始まって、10月で1年となる。イノシシへの豚熱ウイルスの感染が拡大し、ワクチン接種継続農場で豚熱が初めて発生するなど懸念が広がっている。豚熱研究第一人者の北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授に必要な対策などを聞いた。

 ──ワクチン接種を続けている農場で、豚熱の発生が確認されました。原因と影響をどう考えますか。

 野生のイノシシによる感染が大きい。イノシシの感染は東北にまで広がってしまった。多くのウイルスが存在しているのが現状だ。結果として、豚へのワクチンを打つ地域が広がり、今後深刻な影響が出る可能性がある。

 生きた豚は、ワクチン接種地域から非接種地域に移動できない。東北は種豚産地だ。豚熱の発生が確認されていない北海道でも九州などの非接種地域から種豚を確保する必要が出てくるかもしれないが、そう簡単ではない。

 ──生産現場はどんな対策が必要ですか。

 接種地域では、接種プログラムを地道に実行する、努力の積み重ねが必要だ。抗体検査を行う他、得たデータの解析や必要に応じた接種計画の修正も必要となる。

 ワクチン接種で免疫が獲得できる豚は8割を超えるが、それは決められた接種計画を守ることが前提だ。母豚からの移行抗体が多い生後30日未満の子豚に注射しても、無駄が多い一方、接種時期が遅れると移行抗体が切れて野外のウイルスに対し無防備になる。

 非接種地域も含め、飼養衛生基準やエコフィード対策を徹底してほしい。沖縄県での発生を重く受け止め、全国で意識を高める必要がある。

 ──国がすべき対策は。

 今回の群馬県での発生は、ウイルス侵入時期や感染経路などを総合的に分析し、新たな発生防止に活用しなければならない。

 イノシシの予想以上に早い感染拡大で、ワクチンの接種地域と非接種地域に含まれる都道府県の比率が逆転している。営農に影響が生じるようであれば、全地域での接種も選択肢として議論を進める時期だ。

 ワクチンを打つことが認められている、都道府県の獣医師の不足も大きな課題だ。農家や民間の獣医がワクチンを接種できるようになれば、人員不足は解消するが、計画を順守する教育が必要だ。

 イノシシに対する安価で長期間有効な経口ワクチンの開発や、海外からの検疫もしっかり進めるべきだ。海外旅行客が増えれば、アフリカ豚熱の脅威も再び高まる。

 感染を食い止めるには時間がかかる。産地も国も衛生レベルを一層高める覚悟が求められる。(聞き手・望月悠希)

 さこだ・よしひろ 1970年生まれ。94年、北海道大学獣医学部卒。2014年から現職。専門は、感染症など。

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