辞典というと何やら堅苦しい

 辞典というと何やら堅苦しい。一つの読み物と考えればいい。新刊の『農業経済学辞典』(丸善出版)は農政を考える“知恵袋”の役割も果たす▼今に通じる〈不確実性の時代〉の言葉を40年前に生み出した碩学(せきがく)のガルブレイス。彼は「かつて経済学とは農業経済学だった」と述べた。農経の特殊性は生命産業の農業を対象にすることにある。同辞典は広い視野で農業の〈今〉を読み解く▼編さんした日本農業経済学会は古参学会の一つで関東大震災の翌年にできた。創設メンバーには農林官僚で民俗学者になる柳田国男も名を連ねた。4年後に学会発足100周年となる記念も兼ね出版した。むろん国内農業が大転換期を迎え、農政総点検の時期も踏まえた▼農業経営学、農業史、農村社会学など旧来の項目に加え、今日的な課題も積極的に盛り込む。食と農をつなぐフードシステムをはじめ、直売、食品安全、スマート農業、多面的機能と環境問題など。700ページを超す大著だが、テーマごとに読み切る工夫を凝らす。やはり白眉(はくび)は現代農政分析だろう。生産基盤弱体化と海外依存の同時進行を「先進諸国に見られない特異性」と指摘し、「食料危機への対応が必要」と警鐘を鳴らす▼あす「世界食料デー」。日本農業の異常さを確認する書とも言えよう。
 

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