JAデジタル化 最初は小さな一歩から

 デジタル化はJAにも待ったなしの課題だ。しかし、導入で過大なコストやリスクを背負うのは避けよう。悩みが一気に解決するような幻想も持たない方がよい。小さな一歩から無理なく始め、成果を徐々に広げる「カメさん」方式を勧めたい。

 情報通信技術(ICT)やモノのインターネット(IoT)などの新技術で、生活や経済活動の利便性が飛躍的に向上した。新型コロナウイルス感染下のテレワークも、これなくしては実現しなかった。こうした技術と、得られるデータを使って仕事のやり方や事業を再構築する。これがデジタル化だ。今、日本全体に突き付けられている重要課題といえる。菅義偉首相のデジタル庁構想など、政府の動きも加速している。

 この分野でJAグループは後れを取っている。JA間の取り組み差も大きい。デジタル化やシステム化というと、巨大投資が必要な基幹システムを連想しがちだ。だが求められているのは比較的少ない投資で済み、小回りの利くさまざまな「道具(ツール)」を使いこなす能力だ。こちらが「主戦場」である。

 二つの活用領域が想定される。一つは事務仕事の効率化を通じた働き方改革。例えば生産資材の受発注業務では、支所・支店の職員や地区の農家代表らが組合員から肥料・農薬の注文書を集め、本店の職員が購買システムに入力する。膨大な時間と手間がかかる。ここでは光学式文字読み取り装置(OCR)やロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が有効だ。注文書の内容をデータ化してシステムに自動的に入力する。

 いわば、紙とファクスと電話で行ってきた業務を、ロボットに置き換えるのがデジタル化である。作業時間の大幅な短縮やミスが減るなどの効果が期待できる。大事な視点は、省力化の効果を、営農指導や渉外などに専念できる職場態勢につなげることだ。組合員への提案力を強化し、「悩み事解決(ソリューション)」の力を高めたい。

 もう一つは職員と組合員とのコミュニケーションである。コロナ禍で訪問しにくくなったが、会話が少ないといろいろな弊害が出る。これはスマホの交流アプリで改善できる。プライベートでは使うのに仕事で使わない手はない。広報戦略としても重要だ。企業の主要な手段はインターネット交流サイト(SNS)、特に動画に移っている。JAにとっても地域住民、准組合員への情報発信に効果的だ。スマホアプリは意見を聞く「耳」としても優れている。

 ポイントは「小さな一歩から」。ホームランは狙わない。成果が出たら徐々に広げ、同時に組織内で「見える化」する。これでデジタル化への職員の理解が広がる。目指すは組合員の営農と暮らしの課題と悩みに寄り添い、解決のために行動するソリューション型事業体に職場風土を変えていくことだ。それはJAの原点回帰ともいえよう。
 

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