地域圏食料システム構築 鍵握る組織間の連携 立命館大学食マネジメント学部教授 新山陽子

新山陽子氏

 新型コロナウイルス感染症、大地震、河川の大氾濫、巨大台風の上陸と、日常のシステムが遮断されるようなクライシス(危機)の頻度が高まっている。食料の供給は命に直結するため、命のインフラとして、緊急事態の渦中にも維持が求められる。
 

構造の調整必須


 一方、社会構造の趨勢(すうせい)として、フード(食料)システムの川上ではリタイアによる農業者の激減が予想され、川中の流通の人手不足は既に顕在化している。都市生活者の高齢化も急速に進む。食料システムそのものの構造の調整が必須となろう。そのために、何がこれからの食料システムに求められるのか。

 まず、これらは農業サイドだけで考えられることではなく、食品製造、流通、給食業の事業者、自治体、生活者など、食料システムの全ての関係者が知恵を出し合い解決策を探るべき課題であることを認識し、共に取り組む体制をつくることであろう。

 模索すべき食料システムの姿は、現在の全国規模、そして国際規模のシステムと連結しながらも、地域の実情を反映し、地域の人々の生活の質を向上させ、地域経済・社会を発展させるような、テリトリアル(地域圏)レベルで強化されたシステムであろうと思う。

 災害の状況も、長期の社会構造の変化も、市民の生活も、生産や供給の状況も、伝統も考え方もアイデンティティーも地域によって異なる。そうした地域の状況に合った食料政策の立案、農業政策との結合、地域圏食料システムの形成が望まれる。そこでは、地域内の農地、地域の人々との結び付きの強い地域企業、全国と地域の流通の結節点としての中央卸売市場の役割は大きい。
 

大都市こそ重要


 学校給食の向上、生活格差への手当て、教育、文化、環境問題への対応も含められる。そのために、地域圏内の食料システムの現況を診断し、改善すべき戦略的方向付け、対応行動計画を議論すること。その要になるのは自治体、そして事業者の組織であろう。多くの生活者が居住する大都市圏での議論が何より重要であろう。

 地域レベルでは、関係者の間に補完性が働きやすく、人々はうまく問題を特定し、解決策を定めることができる。地理的な近接性を、議論の中で、社会的な、組織化された近接性に変換できるという考え方がされてよい。

 東日本大震災後、コミュニティーとその構成員の自発的な応答能力が高いほど、地域の生活の復元力もその質も高いことが示されてきた。

 日本フードシステム学会では、東日本大震災後の食料システムの復旧について議論し、地域企業の臨機応変な対応力とシステムの復元力を取り上げてきた。

 片やフランスでは、2014年の農業未来法において、地域圏食料プロジェクト(PAT)の開発が法制化され、多くの都市圏においてテリトリアルフードシステム(SAT=地域圏食料システム)の実施が目指されている。本論はこの動きからもヒントを得ている。

 にいやま・ようこ 1952年生まれ。74年京都大学農学部卒、80年同大大学院博士課程修了、2017年同名誉教授、立命館大学食マネジメント学部教授。専門は農業経済学。著書は『牛肉のフードシステム―欧米と日本の比較分析』など多数。
 

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