[家畜はどこへ 広域盗難を追う] 不審な行動 夏から目撃 違法解体容疑の4人

ベトナム人実習生4人が暮らしていたアパート。窓には目張りがされ、テラスでは香草が揺れていた。右奥は駐輪場(群馬県太田市で)

 北関東を中心に900頭近い豚などの家畜が盗まれた広域窃盗事件。群馬県警がと畜場法違反容疑で逮捕したベトナム人の男らは、アパートの窓に目張りをし、深夜に乗用車で外出するなど「不審な行動」を近隣住民に目撃されていた。在日ベトナム人が集うインターネット交流サイト(SNS)には、豚の写真や豚肉購入を呼び掛ける文章を投稿していたことも判明。家畜盗難を巡る捜査は核心に迫ってきた。
 

窓に目張り


 太田市は群馬県内で2番目に多い1万2000人弱のベトナム人が住んでおり、豚を違法に解体したとして逮捕された22~32歳の4人も技能実習生として工場で働いていた。共同生活をしていたのは勤務先の借り上げアパートで、春ごろまでトラブルはなかったが「夏ごろから行動がおかしくなった」と、近隣住民が取材に証言した。

 近くの女性は「昨年の夏はドアや窓は開けっ放しだったのに、猛暑の今年はドアを閉めたままで、窓に古新聞や厚紙を張るなど室内が見えないようにしていた」と語る。洗ったブルーシートをアパートの駐輪場で干しているのも「何だろう」と感じたという。

 また、深夜に携帯でどこかに電話したり、迎えに来た乗用車で外出したりするのを複数の住民が目撃。駐輪場で豚を丸焼きにしているのを通りがかりに見た夫妻は「4、5人が赤ちゃんのような小さな豚を串刺しにし、ブロックをかまど代わりにしてあぶっていた。豚の丸焼きなんて見たことがなかったから、どこで豚を手に入れたのか不思議に思った」と振り返る。いずれも夏ごろのことだ。
 

戸惑う住民


 4人のうち1人は逮捕直後、解体を否認しつつ「豚の丸焼きをやっただけだ」と供述した。別の1人は、インターネットのベトナム人コミュニティーサイトに、駐輪場で子豚を丸焼きにする動画を投稿。別の日には解体前後の豚の写真を投稿し「みんなに豚を売っている」「発送する」と呼び掛けていた。

 食品衛生法は許可のない食肉販売を禁じており、県警は販売の裏付けが取れ次第、同法違反容疑での立件も判断する。

 一方、住民は「4人が悪いことをするような若者に見えなかった」と口をそろえた。朝に作業着を着て自転車で出勤する姿を見ていた人は「心の中で応援していた」とも言った。ベトナムでは家畜を自宅で解体する習慣があり、と畜場法違反容疑での逮捕には同情の声もある。だが、窃盗はベトナムでも犯罪であり「盗難に関与していれば、きちんと罪を償ってほしい」と訴えた。

 10月30日。4人が暮らしていた部屋のテラスに、プラスチック容器で育てられていたディルやミント、レモングラスなどベトナム人が好む香草が風に揺れていた。県警幹部は「技能実習生たちは日本で技術を学ぼうと真剣な思いでやってくる。4人も同じだっただろう」と語り、犯罪に手を染めた動機や背景の解明が鍵になると言った。(栗田慎一)

<メモ>

 群馬県警はこれまでに20~39歳のベトナム国籍で同県太田市居住の男女17人を逮捕した。うち4人はと畜場法違反容疑、13人は入管難民法違反容疑。警視庁なども群馬、埼玉、大分の別のベトナム国籍の10人を覚せい剤取締法違反容疑で逮捕、埼玉県警も県内に住むベトナム国籍の男1人をと畜場法違反容疑で逮捕して、農畜産物窃盗事件との関連を調べている。

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