香川で鳥インフル 過去最大33万羽殺処分
2020年11月06日

殺処分のため鶏舎内で作業をする関係者(県提供)(5日、香川県三豊市で)
農水省は5日、香川県三豊市の採卵鶏農場で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。国内の養鶏場では、2018年1月に同県さぬき市で発生して以来となる。同農場の飼養羽数は約33万羽で、同病が発生した農場としては過去最大規模。県は全羽の殺処分を始めた。
発生農場で4日に約2000羽の鶏が死亡したことを受け、県の家畜保健衛生所が簡易検査を行った結果、13羽中11羽が陽性と判明した。その後に県が行った遺伝子検査の結果を農水省に送付し、H5亜型のウイルスを検出。5日早朝に高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と確認した。
同省は5日、同農場から半径3キロ圏内の養鶏場(26戸・189万羽)に農場外への鶏や卵の移動制限、3~10キロ圏内の養鶏場(89戸・273万羽)に域外への搬出制限をかけた。ウイルスの侵入要因などを調べる疫学調査チームと葉梨康弘農水副大臣を現地に派遣。全都道府県に、飼養衛生管理や早期通報の徹底を求める通知も出した。
香川県は今後、数日かけて鶏の殺処分と埋却を行う。同省からも殺処分などを手伝う緊急支援チームを派遣する。
政府は5日早朝、首相官邸で関係閣僚会議を開催。菅義偉首相は、家禽(かきん)業者への厳重な警戒の要請と予防措置の指導・支援を指示した。同日の農水省鳥インフルエンザ防疫対策本部で、野上浩太郎農相は「初動対応の迅速な実施に万全を期し、まん延を防止するための防疫措置を確実に実施してほしい」と求めた。
全国の家禽の肉や卵の輸出は当面停止する。同省によると、19年の鶏肉の輸出額は19億4000万円、鶏卵は22億1000万円。今後、輸出相手国と交渉し、鳥インフルエンザの未発生県から輸出する「ゾーニング」の枠組みを使い、早期の輸出再開を目指す。
国内では鶏肉や鶏卵を食べたことで鳥インフルエンザに感染した例は報告されていない。
鳥インフルエンザが発生したことを巡って自民党は5日、初動態勢について協議した。農水省は同日に葉梨康弘副大臣が県庁を訪れ対応を確認するなど、被害拡大を食い止める対応に追われた。JA香川県も対策本部を立ち上げた。
自民党は5日、鳥インフルエンザ等家畜防疫対策本部(本部長=江藤拓前農相)を開き、香川県三豊市での高病原性鳥インフルエンザの発生について農水省から聴取した。議員からは、感染を今回の発生事例だけで封じ込めるため、農家の飼養衛生管理徹底の呼び掛けや、感染経路の早期解明を求める意見が出た。
江藤本部長は「何としてもこの1件で封じ込めるという強い覚悟を持ってもらいたい」と、同省に呼び掛けた。発生農家への万全な支援の必要性も指摘した。
宮下一郎農林部会長は「感染経路の究明や飼養衛生管理の支援をお願いしたい」と強調。国内では、鶏肉や卵を食べたことによる人への感染事例がないことなどを踏まえ、風評被害対策にもしっかり取り組むよう求めた。
農水省の葉梨康弘副大臣は5日、香川県の浜田恵造知事と鳥インフルエンザに対する対応について会談した。葉梨副大臣は、知事に対して、人、資材、財政面で万全の支援体制を整えたことなどを伝えた。
浜田知事は「農家それぞれが十分注意していたが、最初の発生になってしまったことは残念で申し訳ない気持ち」とし、「被害が最小限にとどめられるよう、国に支援と協力をお願いしたい」と話した。
葉梨副大臣は「一刻も早く激励と支援の約束を知事に伝えに来た」とし、「伝染病は初動が大切なため、迅速で的確な殺処分、消毒ポイントの設置、移動制限、疫学的調査など同時進行していく」と強調した。
JA香川県は、木内秀一理事長を本部長とするJA香川県鳥インフルエンザ対策本部を立ち上げた。県の要請を受けた場合、消石灰の提供や人的支援に乗り出す。
既に、県の要請を受け、消毒ポイントとして三豊市と観音寺市のJA施設を提供。今後、追加で消石灰などの提供の他、周辺農家が事業継続のために必要な資金について融資メニューを用意している。6日に第1回会議を開く。
今季初の高病原性鳥インフルエンザが発生した香川県三豊市では、飼養数33万羽という異例の規模に、関係者の間で衝撃が走った。家畜保健衛生所の職員らは当該農場での対応に追われ、防疫対策を徹底していた生産者は「また香川で発生するとは……」と、2年前に同県で発生したことを思い出し肩を落とした。
県畜産課によると、当該農場は33万羽の採卵鶏を飼養。2階建てのウインドレス鶏舎に約4800のケージがある。疑似患畜の確認を受けて、午前9時から消毒を開始。午前11時15分から殺処分が始まった。県の要請を受け、午後3時からは自衛隊員も作業に当たった。慌ただしい雰囲気の中、殺処分に使う資材や防護服など必要な物資を積んだ車が出入りし、消毒ポイントも8カ所設置された。
ケージは人の身長より高く、奥行きもある。そのため「(鶏の)捕獲が難しく殺処分に時間がかかりそう」(県畜産課)で、現場に入った家保職員は「見通しが立たない」と途方に暮れる。
生産者の間では衝撃が広がる。農場から半径10キロ以内の搬出制限区域内で採卵鶏5万羽を飼う農家(77)は「これからの時期は常に発生する恐れがあると思っていたが、また香川とは」と驚く。1日当たり2700~2750キロの鶏卵を出荷するが、影響は見通せない。「毎日消毒などの徹底した対応をするしかない」という。
県内屈指の養鶏地帯での発生に、影響の長期化を懸念する声も出ている。県によると、10キロ圏内で出荷ができるようになるには獣医師による検査が必要。家保に所属する獣医師は当該農場での作業に当たっているため、検査に当たれる人員が少ないという。国と協議し、県外の獣医師に検査を要請している。
数日前に、国から県を通じて、北海道紋別市で野鳥のふんに高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されたと連絡を受け、防疫態勢の強化に向けて気を引き締めた直後の出来事。渡り鳥の飛来を考えれば、感染があるとしても四国はまだ先のはずで、ただただ驚いている。
感染経路など不明な点が多くどこで発生してもおかしくない。香川県では2018年に発生があったため、緊張感を持って予防の最善策を取っており、本当に驚いている。
今後、養鶏協会としては、情報があれば速やかに会員に流すとともに、養鶏家、県、関係機関と連携して、感染拡大防止に全力を尽くしたい。
発生農場で4日に約2000羽の鶏が死亡したことを受け、県の家畜保健衛生所が簡易検査を行った結果、13羽中11羽が陽性と判明した。その後に県が行った遺伝子検査の結果を農水省に送付し、H5亜型のウイルスを検出。5日早朝に高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と確認した。
同省は5日、同農場から半径3キロ圏内の養鶏場(26戸・189万羽)に農場外への鶏や卵の移動制限、3~10キロ圏内の養鶏場(89戸・273万羽)に域外への搬出制限をかけた。ウイルスの侵入要因などを調べる疫学調査チームと葉梨康弘農水副大臣を現地に派遣。全都道府県に、飼養衛生管理や早期通報の徹底を求める通知も出した。
香川県は今後、数日かけて鶏の殺処分と埋却を行う。同省からも殺処分などを手伝う緊急支援チームを派遣する。

農場に運び込まれる殺処分用の二酸化炭素ボンベ(一部を加工しています)(5日、香川県三豊市で)
全国の家禽の肉や卵の輸出は当面停止する。同省によると、19年の鶏肉の輸出額は19億4000万円、鶏卵は22億1000万円。今後、輸出相手国と交渉し、鳥インフルエンザの未発生県から輸出する「ゾーニング」の枠組みを使い、早期の輸出再開を目指す。
国内では鶏肉や鶏卵を食べたことで鳥インフルエンザに感染した例は報告されていない。
封じ込め「何としても」 自民、JAが対策本部
鳥インフルエンザが発生したことを巡って自民党は5日、初動態勢について協議した。農水省は同日に葉梨康弘副大臣が県庁を訪れ対応を確認するなど、被害拡大を食い止める対応に追われた。JA香川県も対策本部を立ち上げた。
自民党は5日、鳥インフルエンザ等家畜防疫対策本部(本部長=江藤拓前農相)を開き、香川県三豊市での高病原性鳥インフルエンザの発生について農水省から聴取した。議員からは、感染を今回の発生事例だけで封じ込めるため、農家の飼養衛生管理徹底の呼び掛けや、感染経路の早期解明を求める意見が出た。
江藤本部長は「何としてもこの1件で封じ込めるという強い覚悟を持ってもらいたい」と、同省に呼び掛けた。発生農家への万全な支援の必要性も指摘した。
宮下一郎農林部会長は「感染経路の究明や飼養衛生管理の支援をお願いしたい」と強調。国内では、鶏肉や卵を食べたことによる人への感染事例がないことなどを踏まえ、風評被害対策にもしっかり取り組むよう求めた。
農水副大臣、知事と会談 迅速な支援を確認
農水省の葉梨康弘副大臣は5日、香川県の浜田恵造知事と鳥インフルエンザに対する対応について会談した。葉梨副大臣は、知事に対して、人、資材、財政面で万全の支援体制を整えたことなどを伝えた。

香川県庁を訪れた葉梨副大臣(右)(5日、高松市で)
葉梨副大臣は「一刻も早く激励と支援の約束を知事に伝えに来た」とし、「伝染病は初動が大切なため、迅速で的確な殺処分、消毒ポイントの設置、移動制限、疫学的調査など同時進行していく」と強調した。
JA香川県は、木内秀一理事長を本部長とするJA香川県鳥インフルエンザ対策本部を立ち上げた。県の要請を受けた場合、消石灰の提供や人的支援に乗り出す。
既に、県の要請を受け、消毒ポイントとして三豊市と観音寺市のJA施設を提供。今後、追加で消石灰などの提供の他、周辺農家が事業継続のために必要な資金について融資メニューを用意している。6日に第1回会議を開く。
まさか再び… 飼養33万羽と異例の規模 作業の終わり見えず
今季初の高病原性鳥インフルエンザが発生した香川県三豊市では、飼養数33万羽という異例の規模に、関係者の間で衝撃が走った。家畜保健衛生所の職員らは当該農場での対応に追われ、防疫対策を徹底していた生産者は「また香川で発生するとは……」と、2年前に同県で発生したことを思い出し肩を落とした。
県畜産課によると、当該農場は33万羽の採卵鶏を飼養。2階建てのウインドレス鶏舎に約4800のケージがある。疑似患畜の確認を受けて、午前9時から消毒を開始。午前11時15分から殺処分が始まった。県の要請を受け、午後3時からは自衛隊員も作業に当たった。慌ただしい雰囲気の中、殺処分に使う資材や防護服など必要な物資を積んだ車が出入りし、消毒ポイントも8カ所設置された。
ケージは人の身長より高く、奥行きもある。そのため「(鶏の)捕獲が難しく殺処分に時間がかかりそう」(県畜産課)で、現場に入った家保職員は「見通しが立たない」と途方に暮れる。
生産者の間では衝撃が広がる。農場から半径10キロ以内の搬出制限区域内で採卵鶏5万羽を飼う農家(77)は「これからの時期は常に発生する恐れがあると思っていたが、また香川とは」と驚く。1日当たり2700~2750キロの鶏卵を出荷するが、影響は見通せない。「毎日消毒などの徹底した対応をするしかない」という。
県内屈指の養鶏地帯での発生に、影響の長期化を懸念する声も出ている。県によると、10キロ圏内で出荷ができるようになるには獣医師による検査が必要。家保に所属する獣医師は当該農場での作業に当たっているため、検査に当たれる人員が少ないという。国と協議し、県外の獣医師に検査を要請している。
常に予防徹底「本当に驚き」
志渡節雄香川県養鶏協会会長の話
数日前に、国から県を通じて、北海道紋別市で野鳥のふんに高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されたと連絡を受け、防疫態勢の強化に向けて気を引き締めた直後の出来事。渡り鳥の飛来を考えれば、感染があるとしても四国はまだ先のはずで、ただただ驚いている。
感染経路など不明な点が多くどこで発生してもおかしくない。香川県では2018年に発生があったため、緊張感を持って予防の最善策を取っており、本当に驚いている。
今後、養鶏協会としては、情報があれば速やかに会員に流すとともに、養鶏家、県、関係機関と連携して、感染拡大防止に全力を尽くしたい。
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発生農場では、22日に約2000羽の死亡を確認して通報。23日午前8時に高病原性の疑いがあるH5亜型と判定した。県や自衛隊など720人態勢で殺処分を始めた。県によると、3、4日かかる見通しという。
発生農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には養鶏場はないが、半径3~10キロの搬出制限区域には4戸が約72万3000羽を飼育している。
同日は宮内秀樹農水副大臣が新田八朗知事とウェブ会談で対応を協議。鳥インフルエンザ防疫対策本部で、野上浩太郎農相は飼養衛生管理基準の徹底を訴え、勧告や命令を経ても「基準を順守しない者に対して、県による命令違反者の公表を実施するよう国が指示するなど、家畜伝染病予防法に基づく措置を厳格に適用していく」と強調した。
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食料供給確保へ連携 気候変動にも対応 閣僚宣言を採択 ベルリン農相会合
世界の90の国・国際機関が参加したベルリン農相会合が22日夜、テレビ会議形式で開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動への対応が世界的な課題になる中、食料供給の確保に向けて連携を強化することで一致。食料価格の乱高下につながる輸出規制などの措置の制限、持続可能な農業生産に向けた国内農政の改革など、各国に求める行動をまとめた閣僚宣言を採択した。
同会合は、ドイツ政府主催で2009年以降、毎年開いている。今回のテーマは「パンデミック(世界的大流行)や気候変動の状況下で、いかに世界の食料供給を確保するか」。日本から出席した野上浩太郎農相は、人と家畜に共通する感染症を含めた「将来のパンデミック防止」の分科会で議長を務めた。
閣僚宣言では、新型コロナ禍の中で食料供給に努める農家らに「深い感謝」を表明。一部の国が食料の輸出を規制したことを念頭に、「貿易の不必要な障壁や、世界の食料供給網に混乱を生じさせてはならない」「食料価格の過剰な乱高下につながりかねない、いかなる措置も行われないよう注意する」などと明記した。
持続可能な食料供給と気候変動への対応の両立を重視する方針も打ち出した。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて、「市場と規制措置を含む国内政策を実施する」と表明。化石燃料の使用を削減する生産方法や作物の開拓を支援する。新たな技術は、特に小規模農家が導入しやすい価格にする必要性を強調した。
野上農相は、鳥インフルエンザなど越境性の動物疾病の感染拡大が食料安全保障のリスクを高めるとの考えから、人や動物の保健衛生を一体的に見る手法が重要と指摘。農林水産業の生産力向上と環境保全を両立するため、技術革新と投資を促す必要性を訴えた。こうした考え方も閣僚宣言に盛り込まれた。
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輸出で地方空港を活用 米から野菜へ転換支援 首相
菅義偉首相は22日の参院本会議の代表質問で、農林水産物・食品の輸出拡大のため「輸出対応型の集荷施設を整備するとともに、地方空港の活用を進める」と述べた。公明党の山口那津男代表への答弁。米政策を巡っては余剰米の買い上げを否定し、需給均衡に向けて「野菜などの高収益作物への転換を支援していく」と述べた。共産党の小池晃書記局長への答弁。
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緊急事態で農産物価格低下 「生産者を下支え」 農相
野上浩太郎農相は22日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令の影響で、花きなど一部の農産物の価格が低下しているとの認識を示した。「生産者の下支えを図りたい」と述べ、2020年度第3次補正予算の事業で販売促進を支援する考えを示した。
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配合飼料高騰 長期化に農家恐々 負担増へ先手置き換え急ぐ 食べ残し削減徹底
トウモロコシや大豆など穀類相場の高騰で、国内で配合飼料の供給価格が上昇しているため、畜産現場に長期的な影響が及ぶ可能性が出てきた。JA全農によると、1~3月期の配合飼料供給価格は昨年10~12月期に比べ、全国全畜種総平均で1トン当たり3900円値上げされている。産地は、年内は高値が続く可能性があるとして、代替飼料の活用など新たな対策を模索し始めた。(関山大樹、中川達己)
北海道中標津町のTMR(完全混合飼料)センター「とうほろDairyCenter」は、配合飼料に大豆やトウモロコシなどを混ぜた混合飼料を作り、地域の酪農家の乳牛約1250頭に供給している。だが、飼料や原料を貯蔵する12個のタンクのうち現在、大豆だけが空の状態だ。
今冬、大豆を取引するメーカーに1トン当たり5000円の値上げを打診された。従来通りに飼料生産をした場合、年間400万円の負担増になる。代替策として、飼料の主要なタンパク源を加熱大豆から、タンパク含有率のやや低い「コーングルテンフィード」に置き換えた。
センターは大豆の他、トウモロコシ、しょうゆかす、配合飼料なども使う。代表の竹村聡さん(57)は「このままだと値上がりでさらに経費が増えるため、タンパク源を替えて早めに対策を打った」と説明する。
芽室町で肉用牛約4000頭を飼養する大野ファームは月700トンほど配合飼料を購入しており、飼料高騰前に比べ、毎月210万円経費がかさんでいる。代表の大野泰裕さん(56)は「配合飼料はすぐ置き換えられるものではないが、長期的に影響が続いた場合を考え、国産で置き換えられるものがあれば少しずつ替えていく」と見据える。
九州でも畜産農家が対応に苦慮する。飼養頭数50~100頭規模の養豚農家が多い宮崎県のJA都城では「豚の餌の食べこぼしを減らすなど、餌を無駄にしないこれまでの対策を継続し、徹底するよう呼び掛ける」(養豚課)としている。
穀類の国際価格の基準となるシカゴ先物相場では20日(米国現地時間)、トウモロコシが1ブッシェル5・22ドル。大豆も1ブッシェル13・70ドル。昨年1月の同相場はトウモロコシが同3ドル台、大豆は同8ドル後半~9ドル台で推移しており、今年は高値が続く。
相場高騰は昨年8月以降、南米や米国など主産地での高温乾燥や暴風雨による生育不良が原因。中国で飼料用の需要が増え、旺盛な輸入が続くことも影響した。
米国農務省が1月12日に発表した需給予測では、今年8月末の大豆の期末在庫は全需要量の3・1%と極めて低い水準に落ち込む見込み。穀類の需給逼迫(ひっぱく)が続けば、国内の配合飼料供給価格が高止まる可能性がある。
一方、1~3月期の配合飼料安定基金の補填(ほてん)額の決定は4月中旬を予定。発動されれば、5月末に支出される。
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2021年01月22日

千葉 アヒルで鳥インフル 出荷先6道府県 処分完了
農水省と千葉県は21日、同県横芝光町のアヒルふ卵農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認し、約8000羽を殺処分した。今季37例目となる。アヒルのひなの出荷先である疫学関連農場は北海道、宮城、茨城、埼玉、大阪、奈良の6道府県9農場に及び、同日に各自治体が約6700羽の殺処分を終えた。
発生農場が20日、産卵率の低下を県に通報。農水省によると、産卵率低下は高病原性鳥インフルエンザでも起きる症状で、防疫指針にも記載がある。21日に遺伝子検査で高病原性の疑いがあるH5亜型と判定された。
千葉県は発生農場で防疫措置を実施。同農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には5戸が約17万羽を、半径3~10キロ圏内の搬出制限区域には25戸が約126万羽を飼う。
疫学関連農場では、発生農場が7日間以内に供給したひなを疑似患畜とし、同じ鶏舎などで管理するアヒルを殺処分した。疫学関連農場周辺では、移動制限・搬出制限区域を設けていない。
出荷先も殺処分 拡散防止へ厳重警戒
アヒルのひなの出荷先道府県では、ひなを疑似患畜として同日中に殺処分を完了。当該農場の家禽(かきん)の移動を禁止するなど、対応に追われた。
埼玉県は同日、県内2カ所に出荷されていたアヒル2159羽の殺処分を終えた。対象は行田市の879羽、春日部市の1280羽。2月5日まで2農場の全ての家禽の移動を控えるよう求めた他、農場の出入り口を1カ所に制限し、農場外に物品を搬出しないよう要請した。
茨城県も、かすみがうら市の1農場、古河市の2農場で計2884羽の殺処分をした。対象外の約8600羽は移動を禁止し、14日間の健康観察を経て異常がなければ、2月5日にも解除する。
年間700万羽を加工する茨城県の食鳥処理会社の関係者は「ウイルスを持ち込まれては加工処理も止まってしまう。改めて処理道具の熱処理や出入り口、車両の消毒など、予防対策を徹底していくしかない」と話す。
北海道は、赤平市の農場のアヒルのひな637羽を疑似患畜と決定し、21日午前1時44分に殺処分を完了した。同農場では食用アヒル約4000羽を飼養。ひなは19日に到着し、単独の鶏舎で飼っていた。
道は21日、家畜伝染病予防法に基づき同農場に対し、家禽などの移動を禁止し、毎日の死亡羽数を空知家畜保健衛生所に報告するよう命令した。
宮城県は、角田市の養鶏場が15日に導入したアヒル517羽の殺処分と農場の防疫措置を、21日朝までに完了した。養鶏場では約7000羽のアヒルを飼っており、殺処分対象外のアヒルも検査と経過観察を行う。移動制限区域などは設けず、周辺鶏農家へ情報提供をした。
奈良県御所市の農場では21日、全205羽の殺処分・防疫措置が完了した。同農場ではアヒル約2000羽を飼養。当該のひなは複数ある鶏舎の1カ所で飼っていたため、残る家禽とは接触がないという。
大阪府も、府内の農場が購入したひな326羽を殺処分し、21日午後0時45分に防疫措置を終えた。府内の農場での疑似患畜確認は今季初めて。府は警戒の強化を呼び掛ける。
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2021年01月22日
生物多様性保全戦略 流通・消費者も一体で 来年度改定へ新項目 農水省
農水省は、生物多様性の保全方針を示す戦略を2021年度中に改定する。5月に中国で開かれる生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、新たな世界目標が決まることを踏まえる。これまで3回の有識者検討会を開き、ビジョンや目次案などを議論。現行戦略は生産者向けの記述が中心だったが、新戦略は流通、消費まで関係者一体となった取り組みを促す内容となりそうだ。
同戦略は07年に初めて策定し、農薬や肥料の適正使用、農業生産工程管理(GAP)の普及といった施策の展開を盛り込んでいる。今回が2回目の改定で、COP15を受けて決める国家戦略にも反映させる。これまでの議論で、30年に向けた戦略のビジョンは「農山漁村が育む自然の恵みを生かし、環境と経済がともに循環・向上する社会」とする方向となった。
18日の検討会第3回会合では、目次案などを議論。現行の戦略は生産者向けの記述が中心だが、同省は新たに流通業者、消費者向けの項目の新設を提起。環境に配慮した農産物の調達や、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減などを促すとした。
農林水産関連のコンサルティングなどを手掛ける、いきもの株式会社の菊池紳代表取締役は「流通業者が生物多様性に関わるには、それに取り組む生産者から優先して調達するのが一番」と指摘。生産者との連携を記述するよう求めた。立教大学特任教授の河口真理子氏は「生物多様性を守る最前線にいる生産者を応援しないと何も始まらない。リレーをつないでいるのが流通、小売りという位置関係も書いてほしい」と強調した。
次回の会合は3月上旬を予定。戦略本文などを検討する。
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2021年01月22日