RCEP 15カ国署名 中韓と初EPA 重要品目は除外

 日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国は15日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の首脳会議をテレビ会議形式で開き、協定に合意、署名した。日本の米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目と鶏肉・鶏肉調製品などは関税削減・撤廃の対象から除外。環太平洋連携協定(TPP)などに比べて関税を撤廃する品目の割合を抑えたとして、政府は「国内農林水産業への影響は特段ない」とみる。

 RCEPは日中韓とASEAN、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)、インドの16カ国で2012年に交渉を立ち上げた経済連携協定(EPA)。昨年末から交渉を離脱したインドを除く15カ国で署名した。中国と韓国とは初めて結ぶEPA。協定の日本名は「地域的な包括的経済連携」に変更した。

 発効には、ASEANから6カ国以上、ASEAN以外から3カ国以上の批准が必要となる。日本は来年の通常国会に承認案を提出する方向で検討。ただ、梶山弘志経済産業相は署名式後、首相官邸で記者団に「できるだけ早い発効を目指す」と述べるにとどめた。発効5年後に協定全体を見直すことも規定した。

 合意内容は、日本の農林水産物の関税を撤廃する品目の割合を、TPPや欧州連合(EU)とのEPA(82%)より低い水準とした。対中国は56%。冷凍の野菜調製品の関税(9%)や、乾燥野菜の関税(同)は段階的に撤廃する。それぞれ冷凍の総菜やかき揚げ、インスタント食品で使われるフリーズドライの具材などが該当するという。農水省はこれらについて、国産品だけでは国内需要を賄えない物や国産品とすみ分けられている物だとする。一方、中国からのタマネギやネギ、ニンジンなどは関税削減・撤廃の対象から除外した。

 韓国には野菜を基本的に除外するなど、関税撤廃率を49%に抑えた。ASEANやオーストラリア、NZは61%。農水省は国内農林水産業への影響について「特段ない」(政策課)とみる。

 一方、日本から輸出する農産物・食品では、中国が課しているパックご飯や米菓、切り花などへの関税は段階的に削減し、撤廃する。インドネシアが課している牛肉への関税、中国や韓国の日本酒や焼酎、ウイスキーへの関税も撤廃する。首脳会議と署名式に出席した菅義偉首相は「新型コロナウイルス禍で世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中、自由貿易の推進がより一層重要だ」と述べた。
 

[解説] 中韓からの影響注視を

 

 RCEPで日本の米麦、牛肉、乳製品など重要品目は関税撤廃や削減の対象から除外された。だが、参加国のうちオーストラリアやNZなどとは既にTPPを発効済み。RCEPの内容にかかわらず、TPPの関税率や輸入枠が適用される。日本はASEAN全体や加盟国の一部ともRCEPと「同等の水準」(農水省)のEPAを締結している。新たに注視が必要なのは、RCEPで初めてEPAを結ぶ中国や韓国からの農産物輸入だろう。

 中国からの輸入が多いタマネギなどは除外としたが、中国からの冷凍総菜、乾燥野菜などは関税を撤廃。関税率はともに9%と比較的低く、政府は国産とすみわけられているとする。だが、2019年に中国からそれぞれ237億円、137億円の輸入がある。政府は他の品目も含めて「国内農業への影響はない」認識だが、楽観視は禁物だ。

 日本はTPP、日欧EPA、日米貿易協定に加えてRCEPも合意、世界に農産物市場を開く。一方で農政改革や国内農業の競争力強化対策も進めてきたが、生産基盤の弱体化は止まらない。

 「自由貿易時代」の日本農業をどう維持・発展させていくのか。影響の注視や国内対策の確保は引き続き欠かせない。同時に今後は「ポスト・コロナ」の時代。食料の安定供給を求める消費者の意識の高まりを、国内農業への理解と応援につなげることが求められる。(岡部孝典)
 

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