RCEP合意 需要奪還へ対策強化を

 地域的な包括的経済連携(RCEP)が合意した。中国、韓国とは初の通商協定となる。政府は、国内農業への影響は「特段ない」と見ている。しかし食料自給率の向上には、輸入品からの需要の奪還が必要だ。中長期的視点で品目ごとに影響を精査し、加工・業務用への対応など戦略を構築すべきだ。

 RCEPは、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国で2013年に交渉を開始。インドが離脱し、15カ国で署名した。

 日本の農産物関税は、①米など重要5品目と鶏肉・鶏肉調製品は関税削減・撤廃から除外②農林水産物の関税撤廃率は、オーストラリアやニュージーランドなどが加盟する環太平洋連携協定(TPP)より低く、ASEANとの経済連携協定(EPA)と同水準──となった。このため実質的には、初めてEPAを結ぶ中韓に向けて新たな市場開放を行うことになる。

 19年の農産物輸入額は、中国が2番目で、韓国が9番目。中国からは冷凍野菜934億円、生鮮野菜375億円、韓国からは生鮮127億円と野菜の輸入が多い。野菜全体の国内仕向け量は家計消費用が4割程度、加工・業務用が6割程度。国産の割合はそれぞれ100%近くと7割程度だ。自給率の向上には、加工・業務用で国産割合を高めることが求められる。

 そこで政府は、中国に対し、国内の生産者団体が加工・業務用で需要を奪いたい品目の多くを除外し、韓国に対しては基本的に野菜は除いたとしている。

 しかし生鮮・冷凍でも、一定期間をかけて関税を削減・撤廃する品目がある。冷凍総菜や乾燥野菜なども同様だ。また中国の内閣に当たる国務院はRCEP合意前、輸出用に、品質が高い農産物の生産基地の建設や、加工食品の付加価値の向上を地方政府に指示した。野菜の国内生産は減少傾向にある。政府は産地の懸念や要望をくみ上げ、中韓の農産物輸出戦略を分析、需要を奪還するとの視点で、生産基盤の強化を含む戦略の策定と政策の構築が求められる。

 一方、日本に対して中国は、パックご飯や切り花などの関税を一定期間かけて撤廃する。ただ撤廃品目でも、検疫問題で輸入していないものがある。また中国をはじめ多くの国が、東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴う輸入規制をしている。今回の合意では検疫協議の迅速な開催を定めた。これも含め、あらゆる機会を使って輸入解禁や規制撤廃を働き掛けることが重要だ。日本の新品種や商標の保護につながる規定も設けた。成果に期待したい。

 重要品目や需要奪還を目指す品目を関税削減・撤廃から除外したことは大枠で評価したい。むしろ重要品目も市場を開放したTPPや日欧EPAの極めて高い自由化水準の方が異例だといえる。今後の通商交渉では今回の方針を堅持すべきだ。

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