労力軽減に貢献 利益マイナス 「スマート」壁は導入費 実証で中間報告 農水省

 農水省は「スマート農業実証プロジェクト」のうち、水田作に関する中間報告をまとめた。労働時間の減少で10アール当たりの人件費は3~13%削減できたが、機械費が大きく増加し、利益は慣行よりも7~90%下がる。作業の疲労軽減などの効果もあるが、収支が改善しないと普及は難しい。同省は今後、農機を共用するなどして、導入コストの低減を目指すとしている。

 スマート農業実証プロジェクトは、ロボット農機やドローン(小型無人飛行機)などの先端技術を現場に導入し、効果を明らかにする。2019年度に全国69地区から始まり、現在148地区で実証中だ。

 中間報告は初年度の水田作での効果を分析した。大規模、中山間、輸出の3類型に分け、代表事例で労働時間の削減率や経営収支を示した。

 労働時間は、慣行と比べてシーズン合計で10アール当たり0・2~1・9時間減り、人件費を削減できた。特に、ドローンを使った農薬散布は平均81%減、自動水管理システムは同87%の減少と、削減効果が大きかった。ドローンによる農薬散布は、ホースを人の手で引っ張る作業がないため、疲労の軽減効果も見られた。

 一方、経営面では10アール当たりの機械・施設費が54~261%増加。スマート農機を追加投資したことが響き、利益は慣行より同3000~2万8000円下がった。同省はまだ初年度の成果であることから、農機の扱いの習熟や利用面積の拡大で効率は上昇するとしている。

 生産者からの意見として「社員のモチベーションが上がった」「新規就農者でも熟練技術者並みの精度と時間で作業が可能になった」など、コストに反映されないメリットも指摘されている。

 最終的な実証成果は2021年春から取りまとめる。今後は農機のシェアリングなど支援サービスの創出で初期投資を抑え、スマート農業活用の適正面積を見極めた経営モデルの作成などを検討する。
 

支援 現場視点で


 スマート農業に詳しい九州大学大学院農学研究院・南石晃明教授の話

 スマート農業の導入で労働時間が減り、経費が増えることは、現場の感覚からも、われわれの数学モデルからも予想された。収支が悪化しては生産者としては経営が成り立たない。どんな経営者が何の機能を必要としているかを見極め、現場の声を基にした導入コスト削減や政策支援が必要だ。

 スマート農業は農的生活を楽しみたい若者や兼業農家など、なじまない経営もある。農業は多様であり、全ての現場への普及を前提とすべきではない。

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