若手職員の育て方 組合員接点を増やそう
2020年11月24日
地域づくりや農業の活性化に関わる仕事をしたいという若い人が増えている。地域おこし協力隊が代表格だ。新型コロナウイルス禍で田園回帰の流れが強まる兆しも見える。問題は、こうした志向を持つ若者の職業の選択肢にJAが入っているかである。魅力ある職場づくりが求められている。
学校を卒業して地元で働こうとすれば以前は、農協は役場と並んで有望な就職先だった。近年、JA関係者から聞こえてくるのは、新卒者がなかなか来ないとの嘆き節である。若い人たちに魅力や働きがいを感じさせる職場になっているかを考える必要がある。
日本農業新聞JA面「職場改造塾」で連載した「生き生きと働く~協同組合人の育て方」(筆者・西井賢悟JCA主任研究員)に、JA関係者の反響が寄せられた。連載の内容は、JAの若手・中堅職員に焦点を当て①20代の職員に元気がない②協同組合理念と実際との差に「リアリティー・ショック」を受けている③協同組合の理念教育が職員の心に落ちていない──といった問題点を踏まえ、何をすべきかを考察したものだ。
同じような悩みを抱えるJAは少なくないのではないか。問題解決の鍵が「組合員」にあるとの指摘が重要だ。西井研究員らが行ったJA職員のヒアリング調査で「理想の職員像」を尋ねると、「組合員との距離が近い人」「組合員が信用の置ける人」といった答えが多く返ってきたという。職員は組合員と接し、組合員のために仕事している時、自分を肯定的に捉えることができるのである。
当然と言えば当然だが、問題はこのことを職員が日常の事業・活動の中で実感できているかである。「組合員基点」は協同組合の原則であり、組合員との関係性が事業体としての最大の強みでもある。JAは職員と組合員との接点の実態をいま一度点検してみてはどうか。
本連載で浮き彫りになったのは、若手職員が抱える心の葛藤だ。理念と仕事とのギャップを感じる割合が入組後10年目までに急速に高まり、5割に達するという。こうした現象はJAに限らずどの組織にも見られるが、放置してはならない。
西井研究員が提言するのは、20代のうちにさまざまな組合員組織の事務局や、JAが近年力を入れる支店協同活動の事務局に関わらせることだ。職員は組合員のために仕事をし、ありがとうと声を掛けられた時、やりがい、喜びを感じるからである。そういう経験を若い時にこそさせる。また、業績には表れない努力を評価する仕組みの整備も課題に挙げる。
若手職員のやりがいづくりは、組合員との関係強化、事業基盤の整備、地域社会とのつながりなど、「好循環」を引き起こす可能性に富んでいる。温かい目で見守り、支えるのが先輩職員、役員の良き立ち居振る舞いというものだろう。
学校を卒業して地元で働こうとすれば以前は、農協は役場と並んで有望な就職先だった。近年、JA関係者から聞こえてくるのは、新卒者がなかなか来ないとの嘆き節である。若い人たちに魅力や働きがいを感じさせる職場になっているかを考える必要がある。
日本農業新聞JA面「職場改造塾」で連載した「生き生きと働く~協同組合人の育て方」(筆者・西井賢悟JCA主任研究員)に、JA関係者の反響が寄せられた。連載の内容は、JAの若手・中堅職員に焦点を当て①20代の職員に元気がない②協同組合理念と実際との差に「リアリティー・ショック」を受けている③協同組合の理念教育が職員の心に落ちていない──といった問題点を踏まえ、何をすべきかを考察したものだ。
同じような悩みを抱えるJAは少なくないのではないか。問題解決の鍵が「組合員」にあるとの指摘が重要だ。西井研究員らが行ったJA職員のヒアリング調査で「理想の職員像」を尋ねると、「組合員との距離が近い人」「組合員が信用の置ける人」といった答えが多く返ってきたという。職員は組合員と接し、組合員のために仕事している時、自分を肯定的に捉えることができるのである。
当然と言えば当然だが、問題はこのことを職員が日常の事業・活動の中で実感できているかである。「組合員基点」は協同組合の原則であり、組合員との関係性が事業体としての最大の強みでもある。JAは職員と組合員との接点の実態をいま一度点検してみてはどうか。
本連載で浮き彫りになったのは、若手職員が抱える心の葛藤だ。理念と仕事とのギャップを感じる割合が入組後10年目までに急速に高まり、5割に達するという。こうした現象はJAに限らずどの組織にも見られるが、放置してはならない。
西井研究員が提言するのは、20代のうちにさまざまな組合員組織の事務局や、JAが近年力を入れる支店協同活動の事務局に関わらせることだ。職員は組合員のために仕事をし、ありがとうと声を掛けられた時、やりがい、喜びを感じるからである。そういう経験を若い時にこそさせる。また、業績には表れない努力を評価する仕組みの整備も課題に挙げる。
若手職員のやりがいづくりは、組合員との関係強化、事業基盤の整備、地域社会とのつながりなど、「好循環」を引き起こす可能性に富んでいる。温かい目で見守り、支えるのが先輩職員、役員の良き立ち居振る舞いというものだろう。
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自民党は26日、農林水産災害対策委員会(野村哲郎委員長)の会合を開き、12月からの大雪による農業被害について、農水省や被災4県のJA中央会から報告を受けた。ハウスや果樹などの深刻な被害状況を踏まえ、議員からは対策の充実を求める声が続出。野村委員長は2月3日にも対策をまとめる方針を示した。
会合で塩谷立農林・食料戦略調査会長は「ハウスなどの被害が大きい。……
2021年01月27日

「愛妻の日」にチューリップを 主産3県が合同展示
JAグループなどチューリップの主産3県(新潟、富山、埼玉)と花き卸の大田花きは25日、東京都中央卸売市場大田市場でチューリップの合同展示を始めた。31日の「愛妻の日」に向け、来場する買参人へ主力品種や産地独自品種など、多彩な色や形のチューリップをPRする。29日まで。
JA全農にいがたとJA全農さいたま、富山県が協力し、大田花きへ出荷する11JAのチューリップを展示する。「クリスマスドリーム」など主力のピンク系のほか、黄色や白、紫や複色など100種類以上を陳列する。普段は指名買いでしか出回らない珍しい咲き方の品種や、近年人気のミニチューリップも並んだ。
大田市場での合同展示は3年目。今年は新型コロナウイルス禍で、人を配置する売り込みを見合わせた。29日には仲卸売り場に無人のフェア台を設置してアピールする。
チューリップの主力産地、新潟県の1月以降の出荷計画は前年比で2割近く少ない。新型コロナ禍による需要減を懸念し、作付けを減らした農家が多かった。直近の強い冷え込みで生育はやや遅れているが品質は良好。3月中旬の出荷ピークに照準を合わせる。
JA全農にいがたは「産地も品種もそろってくる時期。暗い話題が多い中、家庭で色鮮やかなチューリップを飾り、晴れやかな気持ちになってほしい」と勧める。
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2021年01月26日

長芋入り青汁 北海道・JAオホーツク網走
北海道網走市産・大空町東藻琴産のナガイモの粉末と二条大麦若葉末、乳酸菌を使い仕上げた。ナガイモはカリウムやポリフェノール、食物繊維が多く含まれ免疫力を高めるとされ「栄養が豊富で飲みやすい」と好評だ。
JAオホーツク網走がメーカーと飲みやすさを重視して開発。JAは「健康と美容に毎日飲むサプリメントとして最適」とPRする。
30袋入り(1袋3グラム)3300円。網走市の「道の駅流氷街道網走」や大空町の「道の駅ノンキーランドひがしもこと」「ひがしもこと乳酪館」、JA内アンテナショップなどで販売。問い合わせはJAオホーツク網走販売企画課、(電)0152(43)2311、またはオホーツクテロワールドゥ、(電)0152(67)7700。
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2021年01月26日
コロナ禍で撮影が延びた「麒麟がくる」は2月に渋沢栄一にバトンタッチする
コロナ禍で撮影が延びた「麒麟がくる」は2月に渋沢栄一にバトンタッチする。日本の資本主義の父、3年後に1万円札の顔になる人である▼渋沢と近藤勇、土方歳三はともに武蔵国の出だが真逆の生涯を送った。片や新時代を切り開き、片や新時代に抗した。郵便の生みの親・前島密は渋沢同様、農民から幕臣を経て明治新政府に登用された。歴史の転換点にわだかまりなくキャリアアップできたのは、中途採用組の強みというべきか。山あり谷ありでドラマ化の素材に事欠かない▼前島は新聞の育成や早稲田大学の基盤を固めた人でもある。蘭学を志し江戸に出立する時の母親の励ましがすごい。〈精神一到何事か成らざらん。一旦(いったん)方針を定めて前進せんとす。何ぞ其(その)歩を躊躇(ちゅうちょ)せんや〉。12歳の少年に金がなくとも諦めるな自弁せよと背中を押した。孟母(もうぼ)三遷(さんせん)の比ではない▼郵は元々宿場を指す字。公用文書を騎馬で継ぎ立てると〈駅逓〉、徒歩で継ぎ立れば〈郵逓〉で、飛脚便のことを〈郵便〉と江戸時代の漢学者は呼んだ。それを彼が採用した(『前島密』山口修、吉川弘文館)。郵便創業、今年150年。通信の主役は手紙やはがきからメールに代わった。きょう「電子メールの日」▼伝える方法は変わっても、情報の重要性には変わりがない。
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2021年01月23日

消費者物価 生鮮野菜8・8%下落 1年10カ月ぶり低水準
総務省が22日発表した2020年12月の全国消費者物価指数(15年=100)によると、食料品は前年同月比で0・8%下落し、指数は104・3だった。2カ月連続の下落。好天続きで生育が良好だったことで、生鮮野菜が値下がりした。米も下落が続いた
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2021年01月23日
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ワクチン接種 混乱回避へ情報開示を
新型コロナウイルスのワクチンが迅速かつ混乱なく国民に行き届く態勢を早期に整えなければならない。国民への正確な情報提供が鍵を握る。過疎地で接種格差を生まないよう、高齢者への配慮も望まれる。
海外ではワクチン接種が本格化し6600万回を超える。米国が2000万回超、イスラエルのように人口割合で30%超の先行国もある。日本は2月下旬までの接種開始を目指している。まず1万人の医療従事者に先行実施、その後同従事者らに広げ、次いで65歳以上の高齢者、基礎疾患者・高齢者施設などの従事者の順で進める計画だ。
接種の実務を担うのは市区町村だが、重要なのはそこまで迅速、安定的にワクチンを届ける態勢づくりだ。これは国の責務であり菅内閣の力量がまさに問われる。接種までの準備は薬事承認、輸入・輸送・保管、接種拠点の選定、自治体との調整など多岐にわたる。菅義偉首相は接種担当に河野太郎行政改革担当相を起用した。縦割り行政に切り込む手腕を期待したとみられるが、壊し屋的な資質より、関係部局をチームにまとめ上げる調整力を河野氏に求めたい。
過去に例のない接種計画を円滑に実行するにはハードルがいくつもある。その一つはまずワクチンの必要量の早期確保だ。政府は先行する米製薬大手ファイザー社との間で7200万人分・1億4400回分の供給を年内に受ける契約を正式に結んだ。当初の6000万人分・1億2000万回分より増えたが、6月末としていた供給完了時期が半年延びたのが気掛かりだ。確保に万全を期すとともに、混乱を招かないためにもっと情報を出すべきだろう。
二つ目は市区町村の現場で接種に遅れが出ないようにすることだ。海外の事例を見ると、医療関係者や行政の人手不足から遅れが出るケースが見られる。接種券の配布をめぐる事務手続きの遅れも想定される。国、都道府県、市区町村との間の密な連携、要員の融通、事務のデジタル化など、しっかり準備するべきだ。
三つ目はワクチン接種を選ばない人への差別防止である。接種は任意であり、個人の判断に任されている。各種世論調査を見ると、接種を望まない人、当面様子を見たいという人が相当程度いる。使われるワクチンが新しい技術を使って短期間で開発されたことや、日本での試験データが少なく特例的な承認になることを踏まえれば、不安に感じる人が出るのは当然である。政府はワクチンの情報提供、特に副反応の海外事例などの情報提供を丁寧に行うべきだ。
四つ目は接種の格差をつくらないことだ。ここでは過疎地域の高齢者への対応を指摘したい。接種のネット予約ができない、電話で問い合わせても不通、さらに接種会場まで遠い、交通手段がないといった事態が想定される。行政や民間団体のきめ細かな支援がほしい。
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2021年01月27日
アキタフーズ事件 農政不信につなげるな
鶏卵生産大手アキタフーズの前代表を巡る贈収賄事件で吉川貴盛元農相が起訴された。農水省幹部が両者の会食に同席していたことにも厳しい目が向けられている。農政への信頼を揺るがしかねない事態だ。同省は国民目線で疑惑を解明し、説明責任を果たさなければならない。
農相在任中に前代表から賄賂を受け取ったとして元農相は在宅起訴された。前代表は、採卵鶏のアニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理)を厳しくする国際基準案に反対することなどを要望したとされる。また両者の会食に、現事務次官の枝元真徹氏ら同省の職員が同席。国家公務員倫理規程では利害関係者の負担で飲食を共にすることを禁止しているが、政治家が負担したと職員は認識しているという。
同省は第三者委員会を設けて養鶏・鶏卵行政の公平性を検証する。また会食での同席については同倫理法の観点から調査し、結果を踏まえ対応する。
国際基準案に対して政府は反対意見を国際機関に提示した。賄賂などによって農政がゆがめられたとの疑念を国民から持たれないか、危惧せざるを得ない。野上浩太郎農相は、国際基準案を巡る政策判断は「妥当」との見解を早くから示してきた。第三者委での検証を表明した後も変わらない。しかし「結論ありき」と国民から疑われかねない。検証結果に理解と納得を得るには、検証の公正さに疑義が生じないよう注意が必要だ。会食の調査も同じである。
新型コロナウイルス禍に伴う農業経営の支援や、食料・農業・農村基本計画に基づく生産基盤の強化、消費者に国産を選んでもらう運動など、農業政策の推進には国民の支持が欠かせない。今回の事件で農政不信を招いてはならない。危機感を持って同省は対応すべきである。
心配は、農業をはじめ産業界による政策提案などが、政官業の癒着と国民からみなされることである。政府や政党に、現場の実情や課題を伝え、解決に必要な政策を提案し、実現のために要請活動や世論喚起を行うのは、民主主義社会では当然だ。それは産業界に限らず、主権者である国民の権利である。一方、閣僚や官僚への金品の提供や供応は裏口入学と同じだ。民主主義を破壊する行為である。
政策提案などそれ自体が政官との癒着と誤解されないよう産業界は情報を広く発信し、開かれた活動に努める必要がある。
第三者委の設置表明を受けて加藤勝信官房長官は記者会見で「説明責任を農水省が果たしていくことが必要だ」と述べた。同省が責任を負うのは当然だ。しかしコロナ対応が後手に回ったことなどで菅義偉政権への国民の不信感が高まっている。「政治とカネ」の問題も相次いで発覚。政府・与党がこの問題に真剣に向き合い、真相を究明し、再発防止策を示さなければ政治不信を増幅しかねない。国会での徹底審議も必要だ。
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2021年01月26日
コロナとJA総会 議案事前説明に工夫を
JAの総会・総代会のシーズンを間もなく迎える。新型コロナウイルスが再び拡大し、事前の地区別説明会などの開催が難しいケースもありそうだ。組合員への議案説明や、質問・意見聴取を十分に行うことが重要だ。各地の事例も参考に集まらなくてもできる工夫をしたい。
JAの通常総会・総代会は例年3~6月が多い。数百人単位で集う大規模な会議体であり、密閉・密集・密接の「3密」を避ける工夫や対策が必要だ。感染状況の見通しが立たず、開催時期や会場の選定にも苦労するが、終息していないことを前提に準備すべきだろう。
感染リスク低減へ昨年は、来賓あいさつを省くなどで時間を短縮したり、出席者を抑えるため書面での議決権行使を依頼したりするといった対応が目立った。会場ではマスク着用や検温を依頼、消毒液を置き、会場の座席や換気、マイクの使用にも目配りした。組合員や役職員の感染を防ぐためこうした対応が今年も引き続き必要になろう。
感染防止とともに重要なのは議案内容への理解醸成だ。総会・総代会に向け、地域農業やJAの現状、課題を組合員と共有し、議案を説明し、意見を聞き、必要に応じて議案に反映させる取り組みが欠かせない。3密回避のため昨年は、地区別説明会などを中止せざるを得なかったJAが目立った。説明や意見の聴取・交換の場が減り、JAと組合員の距離や情報格差が広がるということがないよう注意しなければならない。
そのための実践例は各地にある。昨年7月に総代会を開いた三重県のJA伊勢は、約50分の議案説明用DVDを作成。事前説明会を中止し、書面議決を推奨したため説明を尽くそうと準備し、総代930人に資料や質問書と一緒に送った。
長崎県のJA壱岐市は同市のケーブルテレビを活用。総代会の議案の要点を収録し、6月の2週間にわたり1日2回放送した。JA兵庫南は、総代会資料を組合員に配布し、質問を募り、全質問を集約して一問一答形式でまとめた資料を再び組合員に配るなどした。
感染の防止と組合員への議案の説明や理解の浸透を両立させる手法として、各地の取り組みは参考になる。また、デジタル化が進み、ウェブ会議や動画配信も活用できるだろう。こうした対応は時間と労力が要る。早めの準備が肝要だ。
総会・総代会はJAの最高意思決定機関であり、事業計画や剰余金処分、役員選任など組織の重要案件を決める機会である。組合員の関心の高い自己改革の報告や支所・支店統廃合計画などの案件もあろう。
新型コロナ下で制約が多い中だが、議案について説明責任を果たし、理解を醸成するための工夫がJAには求められる。一方、JAの主役として組合員は、資料を読み込み、書面などによることも含めて、質問や意見、要望を伝えよう。
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2021年01月25日
地域づくりと女性 活躍できる環境整えよ
政府の第5次男女共同参画基本計画は、女性に魅力的な地域づくりの重要性を指摘した。大都市への若い女性の流出が加速しているためだ。一方で「田園回帰」の動きが見られる。地域づくりへの女性の声の反映や意思決定への参画が必要だ。移住者や地域おこし協力隊、「関係人口」などとの連携も進めたい。
同計画は2021年度から5年間の政府の方針を示す。地域における男女共同参画の推進を重点に据え、10~20代女性の3大都市圏への転出超過を減らす目標を初めて設定。女性が地方を離れる背景として、育児や介護は女性の仕事といった性別役割分担意識が根強いことなどを挙げる。実際、女性農業者からは「集まりに参加したいが家族の同意が得られない」「農業技術などを学びたいが機会がない」といった声が聞かれる。
農林業センサスでは、基幹的農業従事者が減少する中で女性の減り方が大きく、割合が20年に4割を切った。日本農業新聞の「対論2021」で榊田みどり明治大学客員教授は、女性の高学歴化や仕事の幅の広がりで農業者と結婚しても農業をしない人も増えたことを挙げ、「女性が農業を選ばなくなっていることへの危機感を、男性も持った方がいい」と指摘した。
農業経営への女性の参画は収益性の向上につながり、地産地消や6次産業化、起業、食農教育などの取り組みで地域活性化にも貢献してきた。農業・農村の持続性の確保には、女性が暮らしやすく、働きやすく、活躍できる地域づくりが不可欠だ。
一方、地方と関わりを持つ人は増えている。地域おこし協力隊は増加傾向で、19年度には約5500人になった。政府は24年度までに8000人にする目標を設定。21年度予算案にはインターン制度を新設する経費を盛り込んだ。学生らに活動を知ってもらい人材確保と移住につなげる。20年度から5年間の地方創生施策の方向を示す第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、特定地域と継続的に関わる「関係人口」の創出・拡大に取り組む。地方移住の裾野の拡大といった観点からだ。
女性農業者の活躍の推進策を協議した農水省の検討会は昨年12月、同省や自治体、農業委員会、JAなどに①農村での意識改革②女性農業者の学び合いと女性グループの活動の活性化③地域をリードする女性農業者の育成と地域農業の方針策定への女性参画──などを提言した。
併せて、女性に魅力的な地域づくりの課題の把握や解決策の検討に「外の目」を生かし、移住・定着にもつなげたい。地域おこし協力隊のうち女性は4割を占め、女性農業者と協力した特産品づくりなどが各地で見られる。基盤はできつつある。
JA全中の中家徹会長は坂本哲志地方創生相との会談で地域活性化には女性の活躍が重要と伝え、創生相はJAグループの役割に期待を表明した。官民一体での環境づくりを求めたい。
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2021年01月24日
農家のコロナ対策 リスク管理で経営維持
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、改めて農業者に注意を呼び掛けたい。基本的な予防対策に加え、不測の事態に備えた代替要員の手当てなど、経営維持のためのリスク管理を徹底しよう。
恐れていた冬場のコロナ第3波が各地で猛威を振るっている。今月発令された2度目の緊急事態宣言は、首都、近畿、中京圏など11都府県に拡大。茨城、熊本、宮崎、沖縄などは県独自の緊急事態宣言を発令した。そこに静岡県で変異ウイルスの市中感染も確認され、危機感はさらに募っている。感染の波は、大都市部から地方都市へと広がり、今やどこで感染が起きても不思議ではない。
農水省によると、農業者や農業関連施設での大規模な集団感染は報告されていないが、油断は禁物だ。「野外作業が中心の農業は大丈夫」「ハウス内も換気に気を付ければ心配ない」。そんな思い込みや「コロナ慣れ」に陥っていないか。生産現場での感染拡大は経営や農畜産物の供給に影響するだけに、感染防止の基本に立ち返りたい。
緊急事態宣言の再発令を受け、政府は改めて、業界団体が中心になって作成した業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは、各業界の実態に沿った感染防止策と事業継続に関する内容を盛り込む。農業関係者向けは大日本農会、畜産事業者向けは中央畜産会がそれぞれ作成して、周知・活用を働き掛けている。
農業者向けのガイドラインは団体のホームページで随時更新、順守すべきチェックリスト表も載せ、すぐ使えるようになっている。まず予防対策の基本は、日々の検温、「3密対策」、マスク着用、人との2メートルの間隔、適切な換気、作業場や事務所への飛沫(ひまつ)防止用シートの設置などだ。通常の手指消毒に加え、ドアノブや手すり、便座など人が触れる所は水と洗剤で拭き取る。共有するはさみなどの道具類の清掃も同様だ。また作業服は小まめに洗濯し、完全に乾いたものを着る。
ガイドラインは、こうした日常の衛生管理対策に加え、感染者発生時の対応、業務継続に向けた備えを求める。家族経営の場合、1人の感染でも営農の継続は難しくなる。不測の事態に備え、生産部会の仲間やJA職員ら代替要員のリストを作り、作業手順が分かるようにしておく。農業法人の場合も同様だ。あらかじめ組織内に支援体制を整備し、責任者や担当者を決め、事務所や作業場の速やかな消毒、代替要員の手当て、作業工程や動線の変更、関係機関との連携に取り組むよう求める。
特に代替要員は、人手不足の下ですぐに手当てできるとは限らない。国籍や職業を問わず代替要員を受け入れた農家の掛かり増し経費を助成する農水省の「農業労働力確保緊急支援事業」などを活用したい。感染リスクを想定し事前に備えることは、今や経営者の責任である。
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2021年01月23日
米国新大統領就任 国際協調への転換急げ
民主主義の土台が揺れる米国で、民主党のバイデン氏が第46代大統領に就任した。トランプ前大統領が残した分断と対立は内外に混乱をもたらした。新大統領は国民の団結と民主主義の信頼回復に全力を挙げ、外交・通商政策で協調路線にかじを切る意向だ。手腕に期待する。
米国は民主主義の危機に直面している。トランプ支持派が連邦議会議事堂に突入し死者も出た。国内の対立は根深い。就任演説でバイデン氏は「全ての国民を団結させることに全霊をささげる」と結束を呼び掛けた。その上で、新型コロナウイルスとそれに伴う経済問題、気候変動、人種格差などの重要課題に取り組む考えを示した。
国民の融和は政策推進の基盤であり、米国の安定は国際社会にとって重要である。「最初の100日」で前政権の政策を転換しながらトランプ支持派の反発を抑えられるかが、その後の政権運営を左右する。
新型コロナ対策に、景気対策も加味し総額1兆9000億ドル(約200兆円)を投入する。途上国を含めた世界的な封じ込めが制圧には必要であり、世界保健機関(WHO)を中心に国際協調が不可欠だ。先頭に立ってもらいたい。地球温暖化対策も急務だ。国際的枠組み「パリ協定」への復帰手続きに入ったが、世界第2の二酸化炭素(CO2)排出国として率先して削減に取り組むべきだ。地球を救うのに残された時間は少ない。
バイデン氏は、前政権の米国第一主義から国際協調路線に切り替える考えを強調した。オバマ元大統領は「核兵器なき世界」を掲げたが、副大統領として支えたバイデン氏には、実現へ指導力を発揮してほしい。
新政権は、中国には厳しい姿勢で臨むとみられる。新型コロナ対策など地球規模の課題では協調し、覇権主義や香港での民主派弾圧などでは同盟国・友好国と連携し、国際秩序に沿うよう粘り強い対応が必要だ。
日本の農業に重要なのは、新政権の通商政策である。日米貿易協定の追加交渉や環太平洋連携協定(TPP)への復帰といった選択肢が考えられるが、不透明だ。与党民主党の支持基盤であるカリフォルニア州は米の産地。米を含め、農畜産物の市場開放圧力への警戒が必要だ。
貿易紛争は世界貿易機関(WTO)での解決が国際ルールである。機能不全に陥っているWTOの再構築が必要だ。まず空席になっている事務局長の選任を急ぎ、米国が妨げてきた紛争処理機能の正常化も必要だ。また自由化一辺倒の貿易ルールを、国連の持続可能な開発目標(SDGs)など時代の要請を踏まえた内容に改善すべきだ。
米国に対して日本政府には、地球規模の課題解決に向けて連携したり、けん引したりして国際社会で存在感を発揮するよう求める。一方、農畜産物の一層の市場開放など無理筋な要求は決然と拒否すべきだ。それが対等な同盟関係といえよう。
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2021年01月22日
内閣支持が急落 コロナ対策で成果必要
日本農業新聞の農政モニター調査で菅義偉内閣の支持率が急落し、政権発足から3カ月余りで不支持率が上回った。新型コロナウイルス感染拡大防止対策と農業政策ともに評価が低いことが反映した。支持の回復には、感染防止と、農家を含む事業者の経営支援を最優先し、成果を上げることが不可欠だ。
農政モニター調査は昨年12月中下旬に行った。内閣支持率は44%で、発足直後の9月の前回調査から18ポイント下落し、不支持率は56%で同20ポイント上昇した。不支持は、首相の指導力のなさや信頼できないことなどが理由だ。新型コロナの感染拡大防止に向けた対応を「評価しない」との割合も高まり、7割になった。経済回復を重視し、感染防止対策が後手に回ったと国民から見られているといえそうだ。
農業政策でも「評価しない」(45%)が「評価する」(26%)を上回る。新型コロナ対策の経営支援も「評価しない」が6割で、評価するの2倍近い。
年が明けても感染拡大に歯止めがかからず、政府は11都府県に緊急事態宣言を再発令するに至った。飲食店の営業時間の短縮などで農畜産物の需要減少が心配され、すでに花きや高級果実は値を下げている。政権への信頼の低下が感染防止対策の不徹底につながり、感染者の増加が政権への不信感を生む。
こうした負の連鎖の中で農業経営も打撃を受けている。調査では、農業生産をしている人のうち、感染拡大の影響が続いているとの回答が5割を超えた。
負の連鎖を断ち切るには、時短営業を行う飲食店などへの十分な支援を含め感染防止対策に最優先で取り組み、併せて農畜産物の需要減少などで影響を受けた農家を徹底して支え、目に見える成果を出す必要がある。
首相肝いりの農林水産物・食品の輸出額5兆円目標の達成を巡っては「達成できない」と「過大だ」が4割を超え、やや懐疑的といえる。一方で「対策次第」が3分の1だった。輸出に農家が積極的になれるかどうかは、政策にかかっている。
日米貿易協定や環太平洋連携協定(TPP)、日欧経済連携協定(EPA)といった大型貿易協定については、程度に違いがあっても、9割近くが国内農業に「マイナスの影響がある」と予想する。影響の把握・分析をきめ細かく行い、必要に応じて対策を拡充・強化しなければ農政不信につながりかねない。
また、21年産主食用米の需給対策について「評価する」は1割強にとどまり、「課題があり見直しが必要」が4割近かった。米政策の改善では、転作推進のメリット拡充や生産費を補う所得政策の確立、生産資材の価格引き下げと米の消費喚起を求める声が強い。過去最大規模の6・7万ヘクタールの作付け転換を実現するには、米価下落への危機感の共有と対策の丁寧な説明で農家の理解を得ることが重要だ。併せて、農家視点での現行政策の検証も求められる。
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2021年01月21日
JA全国女性大会 「新たな活動」で仲間を
きょう、JA全国女性大会が開かれる。活動の灯(ひ)を消さないように、関係性を絶やさないようにと各地で模索が続く中、「Withコロナ時代の新しいJA女性組織活動」をウェブ上で語り合う。インターネット交流サイト(SNS)や動画配信、ウェブ会議など新たな手法を取り入れて活動を進め、新たな層を巻き込みたい。
「できることからはじめよう」──。JA全国女性組織協議会(JA全国女性協)とJA全中が2020年9月に作成した「Withコロナ時代における新たなJA女性組織の活動指針」では、これを合言葉として、新型コロナウイルス禍からの“再起動”を呼び掛けた。
日本農業新聞くらし面では、今大会を前に「女性部活動withコロナ」を連載。JA長野県女性協議会のSNSを活用した情報発信、愛知県JAあいち海部の自宅で受講できるオンライン教室(動画配信)などを紹介した。これらの手法は今ある関係性を深めつつ、新たな層とつながることにも有効だ。各地の事例がそれを証明している。
JA全国女性協は今年、70周年という節目の年を迎える。前身である全国農協婦人団体連絡協議会の設立が1951年。加藤和奈会長は「先輩たちも困難に打ち勝ってきた」と歴史を振り返りながら、新たな活動手法を指して「コロナ下だからできることがある」と語る。
来年度は、JA全国女性協3カ年計画(19~21年度)の最終年度。計画は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の考え方を初めて取り入れたのが特徴だ。具体的活動として、①食を守る②農業を支える③地域を担う④仲間をつくる⑤JA運営に参画する──を示した。どれも、各地の女性組織が長い年月をかけて展開してきたものだ。
コロナ下で、とりわけ重要となるのが「仲間をつくる」ことだろう。JA全国女性協の会員は、前年比3万366人減の49万1330人(20年7月時点)と減少が続き、会員拡大が長年の課題となっている。
しかし「withコロナ」の考え方で、会員以外の層に活動の楽しさや重要性を伝えられれば、少しずつでも仲間づくりは進む。仲間づくりはひいては食を守り、農業を支え、地域を担うことにもつながるだろう。
「70年という節目」と「withコロナ」。くしくも、歴史的なタイミングが重なった。今、大会やイベントに集まれずとも、できることはある。まずは少人数からでも取り組みを始めよう。
本日の大会では「できること」から始めた各地の会員がスピーチで取り組みを発表する。参考になる手法は共有して、それぞれの地域で展開してほしい。そして、JAのトップ層は女性組織活動の意義と役割を正当に評価し、支援をしてほしい。食と農を基軸にしたJAの価値を伝える重要な担い手なのだから。
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2021年01月20日
通常国会と農政 基盤強化へ審議尽くせ
通常国会が始まった。農業経営への支援を含む新型コロナウイルス対策や米の需給対策を盛り込んだ2020年度補正予算案と21年度当初予算案、国家戦略特区での一般企業の農地所有特例を延長する法案など、国会は重要な農政課題に向き合う。生産基盤の維持・強化の観点から、徹底した審議を求める。
施政方針演説で首相は、前政権から継承した農業の成長産業化を地方重視と結び付け、東京一極集中の是正と地方の活性化の柱に据えた。具体的には、農林水産物・食品の輸出額目標5兆円を達成するための産地の支援と、主食用米から高収益作物への転換促進を掲げた。
両者とも、現行の食料・農業・農村基本計画が目指す食料自給率の向上と生産基盤強化の一環といえる。加工・業務用需要の輸入品からの奪還や飼料用米をはじめ戦略作物の推進、中小・家族農家の支援なども重要だ。緊急事態宣言の再発令で農畜産物の需要が減り、生産基盤が弱体化する懸念もある。
こうした課題を踏まえて国会は、補正・当初予算案が生産基盤の維持・強化に効果的か議論すべきである。米の生産調整の実効性を巡っても検証が必要だ。前年産比6・7万ヘクタールの過去最大規模の作付け転換を21年産で達成しないと、米価が大幅に下落する恐れがある。また18年産で始まった現行の米政策の下で作付けは3年続けて過剰となった。課題を洗い出し、あるべき姿について議論が必要だ。
施政方針演説では、地方活性化の手段として規制改革を重視する姿勢も強調した。首相は、行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を政策運営上の壁とみなし、その打破も表明した。これら両面から、農業が標的となることに警戒が必要だ。
国家戦略特区がその例だ。兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例の全国展開を巡る議論は、関係閣僚が慎重姿勢だったが、同特区諮問会議の民間議員が強硬に主張、異例の「首相預かり」となった。今回は特例の2年延長で決着し、同特区法改正案を国会に提出する。しかし特例の利用は低調で、延長が必要かどうか国会は熟議すべきだ。官邸主導の政策決定の在り方も議論の俎上(そじょう)に載せる必要がある。
規制改革推進会議には、農地所有適格法人の議決権要件の緩和を求める意見もある。一般企業の農地取得につながり、撤退後の耕作放棄や産廃置き場にされることなどが懸念される。こうした論点も議論すべきだ。
施政方針演説では、環太平洋連携協定(TPP)の今年の議長国として加盟国の拡大に向けた議論を主導する考えを示した。貿易協定の拡大が、なし崩し的に農畜産物の一層の自由化につながらないよう政府の姿勢をたださなければならない。
衆院議員の任期は10月までで、総選挙が必ず行われる。国会論戦の中で各党には農政の選択肢を示すことも求められる。
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2021年01月19日
次期全国大会議案 大転換期のJA像示せ
世界と日本を取り巻く情勢は新型コロナウイルスで激変した。そうした中でJAグループは10月、第29回JA全国大会を開き、中期指針を打ち出す。大転換期になくてはならない協同組合の存在感を示す「目指すJA像」を発信すべきだ。
ピーター・ドラッカーが半世紀前に書いた『断絶の時代』を改めて読み直したい。われわれが今直面している状況と重なる点が多い。彼は四つの「地殻変動」が始まったことを挙げ、これまでの経済・社会とは「非連続」の時代の到来を展望した。その一つ目は新技術・産業の出現。二つ目は経済のグローバル化。三つ目は政治と社会の多元化。四つ目は知識社会の到来。知識は情報と置き換えていいかもしれない。
まさにその時代を生きてきたわれわれは、インターネットなどの情報技術が劇的に私たちの暮らしや経済を変えたことを知っている。世界は近づき、国境の壁は取り外され、そして農産物輸入大国の日本が輸出拡大の旗を振っている。グローバル化は一方で、ウイルスや細菌といった病原体があっという間に世界を席巻するリスクを高めた。
コロナ禍が生活、経済、人々の意識に本質的な変化をもたらすかは見定める必要があるが、テレワーク、オンライン会議、ネットショッピングといったスタイルは収束後も定着すると考えられる。東京から地方への転出、田園回帰の流れが続く可能性も高い。これを一層太いものにすることが求められている。
また、コロナ禍が加速させた格差の拡大、社会の分断をどう乗り越えていくか。新自由主義的な経済から持続可能な経済への転換、地球温暖化防止といった地球的課題への関心も高まりつつある。今、転換期に立つとの意識を持つべきである。
こうした大きな視座から、協同組合の中核であるJAグループは何をすべきか。「食と農を基軸に、地域に根差した協同組合」が持つ資源とヒューマンパワーで何ができるか。次期大会議案づくりでは、今日的な課題への骨太の構想を示すべきだ。「地域になくてはならないJA」の具体的な姿と、そのための行動を提示してもらいたい。
過去2回の大会議案は、官邸主導の農協改革への対応に追われ、JA自己改革を前面に打ち出した。具体的には農業者所得の増大、農業生産の拡大、地域の活性化。これらは成果を上げたが、JAの原点として引き続き実践の手を緩めてはならない。同時に、協同組合の側から、大転換期に日本はどう対応すべきか前向きなメッセージを発信してほしい。
世界の協同組合はその存在意義が問われている。国際協同組合同盟(ICA)が掲げた「2020~30年戦略計画」の主題は、アイデンティティーの強化・深化である。あまり内向き志向にならず、協同組合らしさの発揮を組織の内外に伝える議案にすべきである。
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2021年01月18日