「七福芋」地域で守る 生産拡大、商品開発も 愛媛・新居浜市
2020年11月26日

「七福芋」を収獲する七福芋本舗の社員ら(愛媛県新居浜市で)
愛媛県新居浜市の沖合いにある人口約130人の大島で、特産の白いサツマイモ「七福芋」による島おこしの取り組みが広がっている。生産者の高齢化などで衰退する島の特産品を守ろうと、個人や法人が島に通い「七福芋」の生産を支える。地元の食品業界もスイーツ、焼酎など多彩な商品開発で後押しする。今年は15トンの生産を見込む。
「七福芋」は見た目が白く、高糖度で濃厚でねっとりした食感が特徴。市内では大島以外の栽培が難しいとされる。1998年には45人が3・7ヘクタールで栽培、生産量は37トンだったが、生産者の高齢化などで存続の危機を迎えていた。今年は島内外12人の生産者と2法人が1・5ヘクタールで栽培している。
75アールで栽培する七福芋本舗は、地域支援事業と位置付けて、生産、加工、販売まで一貫して取り組む。個人生産者の芋も買い取り、青果販売の他、規格外品をダイスやペーストに1次加工し菓子材料向けなどに販売する。
同社営業部の白石寛樹部長は「さらに生産拡大し、市内全校の学校給食への提供や秋の味覚として市内飲食店で取り扱ってもらえるようにしたい」と意欲を見せる。
市内の菓子店や飲食店は、同社の1次加工品を使ってクッキー、ようかんなどを商品化。大島と「七福芋」のPRに一役買っている。11月には大島担当の地域おこし協力隊員が着任し、「七福芋」と地域活性化を支援する。
市農林水産課は「七福芋は工業都市・新居浜の数少ない特産農産物。生産量を増やして市民の認知度を高め、手軽に食べられるようにしたい」という。
「七福芋」は見た目が白く、高糖度で濃厚でねっとりした食感が特徴。市内では大島以外の栽培が難しいとされる。1998年には45人が3・7ヘクタールで栽培、生産量は37トンだったが、生産者の高齢化などで存続の危機を迎えていた。今年は島内外12人の生産者と2法人が1・5ヘクタールで栽培している。
75アールで栽培する七福芋本舗は、地域支援事業と位置付けて、生産、加工、販売まで一貫して取り組む。個人生産者の芋も買い取り、青果販売の他、規格外品をダイスやペーストに1次加工し菓子材料向けなどに販売する。
同社営業部の白石寛樹部長は「さらに生産拡大し、市内全校の学校給食への提供や秋の味覚として市内飲食店で取り扱ってもらえるようにしたい」と意欲を見せる。
市内の菓子店や飲食店は、同社の1次加工品を使ってクッキー、ようかんなどを商品化。大島と「七福芋」のPRに一役買っている。11月には大島担当の地域おこし協力隊員が着任し、「七福芋」と地域活性化を支援する。
市農林水産課は「七福芋は工業都市・新居浜の数少ない特産農産物。生産量を増やして市民の認知度を高め、手軽に食べられるようにしたい」という。
おすすめ記事

原動機1台で内張り2層を同時展張 茨城・施設ピーマン栽培の須之内さん
茨城県神栖市でピーマンを施設栽培する須之内康至さん(66)は、内張りカーテン2枚をビニール巻き取り用の原動機1台で張る方法を取り入れ、省力化につなげている。2枚のカーテンの端を固定し、同時に展張する仕組みだ。
カーテンの端固定
須之内さんは、栽培面積95アールのうち、促成作型の30アールで10年ほど前から取り入れている。カーテンを展張する仕組みは、親戚に改良してもらったものだ。
ワイヤ巻き上げ式の内張りカーテンを、3重に被覆する。屋根側の2層のビニールの端を、直径約1センチの鉄パイプにパッカーで固定。下層のビニールは、たるむほどの余裕をもたせてある。
張ったカーテンを確実にしまうために、ビニールを固定した鉄パイプと、下層のビニールを支えるワイヤをひもでつないだ。
カーテンの操作は手で電動スイッチを押すタイプ。午前8、9時に下層のカーテンから開け、午後4時ごろにカーテンを閉める。
「カーテンの開閉は毎日の作業。電動だが操作が一つ減るだけでも、省力的に感じる」と須之内さんは実感する。
ビニールを巻き上げるワイヤが伸びて長くなり、巻き上げが不十分になることがあるため注意が必要という。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=R_dqGEomQ4w
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月12日
外国人材の確保 通年雇用と環境整備を
農繁期の異なる産地間での人材リレーなど、外国人の新たな活用の仕方が農業分野で広がってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年、外国人技能実習生らが来日できなかった状況に対応するものだ。継続して働いてもらえるように受け入れ側は、通年雇用の体制と労働環境などの整備・改善を進めたい。
農村の人口減少や高齢化、規模拡大などによる労働力不足で、農業分野で働く外国人が増えてきた。技能実習生は2019年10月末で3万1900人、同年に始まった新たな在留資格「特定技能」の外国人も20年9月末で1306人になった。特定技能は、農業や介護など14業種が受け入れ対象で、労働者と法的に位置付け、同一業種なら雇用先を変更できる。
ところが昨年、新型コロナの感染拡大を防ぐために政府が入国を規制。2900人の技能実習生が来日できず、受け入れ予定だった産地は人手不足に陥った。こうした中で始まったのが外国人のリレーである。繁忙期が重ならない産地間で人材を共有。外国人は通年で働くことができ、農家には毎年同じ人に来てもらえるメリットがある。
先行事例とされるのが長野と長崎での県間リレーだ。長野県では冬に、長崎県では夏に農作業が減少。外国人は、夏を中心に長野のJA木曽やJA洗馬でリンゴやキャベツなどの収穫に当たる。その後、JAながさき県央に移動し、ニンジンやジャガイモの収穫などを行う。熊本県では平場が中心のJA熊本市と高冷地のJA阿蘇で、青果の出荷繁忙期が異なることに着目。熊本市ではナスやトマト、阿蘇ではアスパラガス、イチゴの選果などに従事する。
産地リレーを担えるのは特定技能か「特定活動」の外国人だ。特定活動はコロナ禍で解雇されるなどした技能実習生に、一度に限り職種変更と滞在期間の延長を認める在留資格。昨年11月時点で職種を変更したのは約1300人で、うち農業が約400人だった。
コロナ禍の収束後を見据えても、外国人は日本農業の働き手として重要である。しかし人手不足は国内外で生じており、人材確保を巡って競争が激しくなるとみられる。日本農業が選ばれるには、受け入れる農業者やJAなどが労働環境や労働条件の点検と整備・改善に不断に取り組むことが欠かせない。
それには外国人の声を聞くことも重要だ。外国人にとっては母国語で相談できる人がいると心強いだろう。JA熊本うきは、日本語、英語、ベトナム語、中国語に堪能なベトナム人を正職員に採用している。選果場などで働く特定技能外国人の管理の円滑化などを期待する。
技能実習生や農業分野の特定技能外国人は滞在期間が決まっており、帰国が前提だ。地域農業の持続的な発展には、担い手の確保・育成が必要である。外国人材の活用と両輪で進めなければならない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月14日
二度目の緊急事態宣言
二度目の緊急事態宣言。都心はひっそりかんとしている▼東京郊外の拙宅周辺は、昨年後半から住宅建設ラッシュ。地元通の酒屋の店主いわく、優に100棟は建つとか。都心脱出の流れなのか。入居も始まったが、巣ごもりのせいでにぎわいはない。赤ん坊の泣き声もとんと聞かない▼昨今、赤ちゃんの泣き声を耳障りに感じる人が増えた気がする。飛行機や列車で露骨に嫌な顔をする人を何度も目にした。「騒音」と感じるか、ほほ笑ましく感じるか。あなたはどちらだろう。そもそも赤ちゃんの泣き声は、言葉の代わりに発する緊急サイン。「おなか減った」「おしっこ漏れそう」「なんだか熱っぽいよ」▼親に分かってもらおうと必死に伝える。だから不思議なことに、その泣き声は、救急車や目覚まし時計のアラーム音などと同じ周波数を含んでいるという。しかも世界共通。成長するに連れ、声帯は変わるが、生まれたては人類皆同じ。サイレンと同じだから不快になって当たり前。「子どもは泣くのが仕事」。そんな大事な「仕事」を温かく見守り、手を差し伸べ合う社会であってほしい▼ところでコロナで窮状にあえぐ国民の悲鳴や泣き声は、政府にちゃんと届いているのだろうか。よもや「騒音」封じの緊急事態宣言再発令ではあるまいが。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月12日

青木愛さん(元シンクロナイズドスイミング日本代表) 引退で知った食べる喜び
食の連載コーナーでいうのもなんですが、現役時代は食べることが嫌でした。
私は体質的に痩せやすくて、もっと太らないといけないと指導されたんです。「食べるのもトレーニングだ」と言われました。
シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)では、脂肪がないと浮かずに沈んでしまうからです。また、見栄えの問題もあります。海外の選手は背が高く体もガッシリしています。体が貧相だといけない、もっと体を大きくしなさい、と言われ続けました。
そのため特に日本代表に入ってからは、味わって食べる時間もないし、味わっていたら量は入らない。急いでかき込む、流し込むといった感じでした。
つらかった合宿
1チームに8人の選手がいるんですが、痩せないといけない人、現状維持でいい人、太らないといけない人がいて。合宿で、痩せないといけない人と同じ部屋になったときは、お互いつらかったです。私はおにぎりや餅を寝るまで食べ続けないといけない。向こうはものすごくおなかがすいているのに、それを見ないといけない。
毎日、4500キロカロリーを取るように言われました。
それを全部揚げ物で取るんだったら、簡単だと思います。でも選手ですから、バランスよく食べないといけません。
炭水化物、脂質、タンパク質の三つを取った上で、カルシウムやビタミンも。自分で計算しながら、いろいろな食材を取って4500キロカロリー以上にするのは大変でした。
母は料理がすごく上手で、子どもの頃はご飯が楽しみだったんです。でもなにせ小学2年生の頃からシンクロを始めたので。
母もちゃんと競技をやるのなら食事から変えないといけないと考えて、私の好きなものや量を食べやすいように工夫して料理してくれたんですが、小学校の頃から量を食べないといけない生活だったんです。
ほっとする実家
代表の合宿が終わると、いったん実家に戻ります。母の料理を食べると「ああ、家はいいなあ」と実感します。ささ身を揚げたのが大好きで。母はささ身の中に梅やシソの葉を入れて巻いてくれるんです。さっぱりとした味なので、量を食べられる。エビフライやハンバーグ、コロッケといったベタな食べ物が好きなので、それも作ってくれます。もちろん脂質ばかりにならないように、他の栄養素も取りながら。
私の目標体重は59キロ。でもどんなに頑張っても56、57キロをうろうろしていました。実家で過ごすと、あっという間に53、54キロまで落ちてしまいます。次の合宿の前日は必死になって食べました。
食べることの楽しさに気付いたのは、23歳で引退してからです。好きな人と好きな時間に好きなものを好きな量だけ食べるのが、こんなにも楽しいだなんて。
私は、夜に友達と食事をすることが多いんですよね。その時に、ものすごい量を食べます。胃が大きくなってしまったんでしょう。朝起きてもおなかがすいてなくて、夜までの間に、おやつを食べるくらいで間に合います。間食はお菓子ではなく、梅干し、納豆、豆腐、漬物などです。
もともとおばあちゃんが好むようなものが好きだったんです。ポテトチップスよりも酢昆布が好きな子どもでした。好きなものを食べられる生活に感謝しています。(聞き手=菊地武顕)
あおき・あい 1985年京都府生まれ。中学2年から井村雅代氏に師事する。2005年の世界水泳で日本代表に初選出されたが、肩のけがで離脱。翌年のワールドカップに出場し、チーム種目で銀メダル。08年の北京五輪ではチーム種目で5位入賞。五輪後に引退し、メディア出演を通じてスポーツ振興に取り組んでいる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月09日

内閣支持急落44% 不支持が逆転 本紙モニター調査
日本農業新聞が昨年末に行った農政モニター調査で、菅義偉内閣の支持率が44%となり、発足直後の9月の前回調査から18ポイント下落した。不支持率は56%で同20ポイント増え、支持率を逆転。菅内閣の農業政策、新型コロナウイルスに関する政府の対応を評価する人はそれぞれ26%、27%にとどまり、これらが支持率の急落にも影響したとみられる。
農政「評価」26%
他の報道機関の調査でも、発足当初に6、7割台だった菅内閣の支持率は直近で3、4割台に下落している。……
2021年01月12日
地域の新着記事

農業施設被害5000棟超 大雪で東北・北陸など
記録的な大雪で東北3県と新潟、北陸3県では13日までに、合わせて5000棟を超えるパイプハウスなど農業施設の損傷、損壊の被害が報告された。除雪が追い付かず全体を把握し切れていないため、被害はさらに拡大する恐れがある。
各県が12日時点で把握した被害状況によると、岩手県では県南部を中心にパイプハウス2346棟に被害が出た。秋田県ではパイプハウスなどの農業施設1019棟が被害を受け、農作物を含めた被害額は3億円を超えた。山形県はサクランボや西洋梨など約65ヘクタールで枝折れなどの樹体被害や、パイプハウス474棟の被害が報告された。
新潟県は13日、大雪・暴風雪による農業の被害状況を発表。昨年12月14日から今年1月12日までの被害を取りまとめ、22市町村でパイプハウス785棟が損傷・損壊した他、6市でライスセンターや育苗ハウスなどの共同利用施設35棟が被害を受けた。ハウスの被害は強風によるビニールの破損などが多い。
北陸3県でも13日正午現在の各県のまとめによると、富山県ではパイプハウスや畜舎、農作業場は、全壊244棟を含む336棟が被害を受けた。石川県は累計で農業用ハウス307棟などの被害を確認した。福井県では農業用ハウスの損壊が130棟に上った。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月14日
「災害強い地域」切望 島根・江の川氾濫から半年 移転決定も課題山積
広島県と島根県を流れる1級河川・江の川が豪雨で氾濫してから14日で半年がたち、流域では災害に強い地域づくりを望む声が高まっている。平成以降でも8回の大きな水害に見舞われるなど、危険と隣り合わせの江の川流域。常態化する災害を乗り越えようと、集団移転や堤防建設が進みつつあるが、費用がかさむなど課題は山積みだ。(鈴木薫子)
美郷町
「腹を決めた。もうここには住めん」。江の川と支流の君谷川が流れる島根県美郷町港地区。自治会長を務める屋野忠弘さん(78)ら5戸は、地区内の高台にある安全な場所への集団移転を決断した。
江の川の直近の氾濫は2020年7月14日。同県だけでも8市町で全半壊42戸、床下浸水43戸、水田は213ヘクタールが冠水した。農林水産関係被害額は約20億円に上る。
同地区は川沿いに13戸が点在するが、地形が低い上に堤防がなく、農地冠水などの水害が毎年起きる。7月の豪雨では本流が増水して支流の水をせき止める「バックウオーター現象」が起き、家屋も浸水した。
住み慣れた土地を離れたくないという思いを抱えながらも、次世代を優先させた屋野さん。集団移転は、国の防災集団移転促進事業を利用。同年9月の町議会で請願書が採決され、移転先として地区中心部の集会所近くを希望した。
だが事業は思うように進まなかった。移転先は山を切り崩して造成する必要があるが、費用が想像以上に膨らんだ。造成費用の国の助成上限は1戸約1000万円だが、試算した費用は4倍近い。高齢の移転希望者が多く、高額の持ち出しは厳しい。屋野さんは「中山間地で条件に合う所を探すのは難しい。地形に見合った助成をしてほしい」と切実だ。
同町建設課の担当者は「住民の負担を減らしたいが、町の持ち出しが膨らむ」と頭を抱え、町は費用見直しや別の移転先の選定を進める。屋野さんらは「年寄りが今から新しい場所に溶け込むのは難しい」と考え、地区内での移転を希望している。
堤防建設急ぐ 江津市
2020年7月の豪雨による江の川氾濫で浸水した島根県江津市桜江町(中国地方整備局提供)
長さ194キロ、流域面積3900平方キロの江の川。堤防が必要な区間は154キロに上るが、20年3月末現在で27%に当たる41キロ分の堤防がない。水害が常態化している地域が多いが「堤防規模が大きく建設に時間がかかる」(国土交通省中国地方整備局河川計画課)ため、整備が遅れていた。
20年7月の大規模な氾濫を受け、江津市桜江町では建設が急ピッチで進むことになった。水田やカボチャ畑が冠水した同町小田地区では、今年6月に念願の堤防が完成予定だ。支流の田津谷川流域でも用地・建物調査が進む。
田津谷川が流れる同町川越地区の渡田自治会では、18年の西日本豪雨で被災した若い世帯2組が地区外へ転居するという苦い過去がある。自治会長の小松隆司さん(64)は「(これ以上の災害は)地区が衰退しかねない」と懸念。堤防の早期建設を望む。
<メモ> 防災集団移転促進事業
災害危険区域などの住居を安全な場所へ集団移転させるもので、事業主体は市町村。20年4月に住宅団地の規模要件が「10戸以上」から「5戸以上」に緩和された。移転先の用地取得や造成、住宅建設などの費用は、国が実質94%、市町村が6%を負担する。東日本大震災を除く同事業の実施状況は、35市町村で移転戸数1854。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月14日
鹿児島で鳥インフル 今季初、3・3万羽処分
農水省と鹿児島県は13日、同県さつま町の肉用鶏農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。……
2021年01月14日

新潟・北陸地方 記録的大雪 農業被害相次ぐ ハウス・物流影響大きく
冬型の気圧配置が強まり記録的な大雪となった新潟県や北陸地方では12日、懸命の除雪作業が続いた。ただ、生活道路や農道の多くは除雪が追い付かず、農家やJA職員が農地や農業施設に近づけない状況。被害の全容を把握するには、時間がかかる見通しだ。
新潟県上越市のJAえちご上越本店では、雪の影響で職員の出勤が通常の半分以下に限られる中、午前7時半ごろから職員約30人が雪かきに追われた。JA総務課の高橋一彦次長は「数日で2メートル超の大雪が降ったのは驚いた」と明かす。
管内の農業被害の把握はこれからだが、既に育苗ハウス8棟が雪による重みでつぶれたという報告が上がっている。県内では7日からの暴風雪により18市町村でパイプハウスの損傷などの被害が出ている。被害はさらに拡大する見込みだ。
福井県では、農産物の物流が滞るなどの影響が出た。
花き卸の福井中央花卉(かき)市場(福井市)は主要な道路が軒並み通行止めになった影響で11日のせり取引を中止。13日から通常通り行うが、入荷量は例年の5分の1以下になる見込みだ。
JA福井県直売所「喜ね舎愛菜館」(福井市)は8日ごろから出荷者が来られない状況が続き、12日には入荷も途絶えた。商品が少なく、短縮営業を続けている。
石川県でも、11日時点でビニールハウスなどの被害を確認した。
気象庁によると、日本海側を中心に降り続いた大雪で、新潟県上越市高田では10日午後2時までの72時間に187センチの雪が降った。この他、岐阜県白川村白川や富山県砺波市砺波など、6県13地点で72時間降雪量が観測史上1位を記録した。
富山、石川、岐阜の3県では、倒木や積雪で集落の孤立が発生した。
育苗間に合うか…岩手
雪の重みでハウスがつぶれ、ぼう然とする農家(12日、岩手県奥州市で。高内杏奈写す)
岩手県では県南地域を中心に農業被害が出ている。奥州市では園芸用や水稲育苗用のハウスなどが倒壊した。同市をエリアとするJA岩手ふるさと、JA江刺によると、直近10年では最も大きな被害。規模によっては、ハウスの撤去・再建を考えると、春の育苗作業に間に合うのか心配する農家もいるという。
JA岩手ふるさとの農業被害金額は、4億5700万円余り(8日現在)。雪が一気に降り、その後断続的に降り続いたという。JAは雪が消えなければ支援に動けず、全容把握を第一に取り組む。
JA江刺は6日時点での農業被害予想額は、2億4700万円余り(解体撤去費用を含まず)。積雪のため、現場に立ち入れない所があるため、さらに増えるとみている。
12日も市内で早朝にまとまった雪が降り、降ったりやんだりを繰り返した。雪の重さにつぶれたハウスに農家は一様に落胆していた。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月13日

島の豚 海風熟成 生ハム 3月初出荷へ 香川・小豆島出身の三好さん
CFで資金、特産化手応え
香川県小豆島町出身で隣の土庄町に住む三好昭浩さん(59)は、小豆島の食材や気候を利用した長期熟成生ハムの製造を始めた。2019年の12月から仕込んだ豚の骨付きモモ肉など計50本を、クラウドファンディング(CF)で建てた海風が当たる工房で熟成中。3月には初出荷できる見込みだ。
三好さんは、43歳まで商社で加工品の商品開発をした後、神奈川県内の飲食店に勤めた。ファーマーズマーケットなどで全国のこだわりの食品に出合う中、「生産者の思いが伝わる、その土地でしかできない特産品を作りたい」と思うようになったという。
島に帰郷したのは5年前。島内で豚を放牧する鈴木農園を訪れた際に生ハム製造を思い立ち、すぐに肉の購入を申し入れたという。
三好さんによると、生ハムの産地は乾燥した高冷地が多い。小豆島は製造の適地とはいえないが、試作してみるとまずまずの出来だったという。島の特産であるしょうゆのこうじを使うなど改良を重ね、3年かけて商品化の手応えを得た。しょうゆの風味がほのかに残るためか「日本酒にも合う生ハム」と三好さん。ハムの表面には、小豆島産のオリーブオイルを塗って乾燥を防ぐ。
19年9月、土庄町に「草壁ハム製作所」を設立。工房の改装や材料の購入資金は、クラウドファンディングで調達した。熟成中の生ハムに使うのは、鈴木農園の放牧豚と県内産「オリーブ夢豚」が半分ずつ。瀬戸内海に面した山の斜面にある工房で、空調管理せず自然の空気に当てて、14カ月熟成させる。
骨付きの「原木」と、500グラムのブロックの直販を予定している。飲食店との契約も決まっており、今後さらに広げていく考えだ。
三好さんは「生ハムをきっかけに、イベントやコラボレーション企画などができると考えている。島の観光産業に貢献したい」と意気込んでいる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月13日

いくえ農園12年目 学びの場で心豊かに 農への思い深まる タレントの榊原郁恵さん
タレントの榊原郁恵さんが、神奈川県厚木市で農園活動を始めて12年目を迎えた。農園を“自分を成長させてくれる学びの場”と捉え、忙しい仕事の合間を縫って通い続ける。今では「農作物ができるまでどれほど時間も手間もかかるか、体で分かる」ようになった。育った作物に「感動の連続」だという。
農園は約10アール。地元のJAあつぎを仲介して借り、仲間4人で運営する。「土が合っているのか、すごくいいサトイモが取れるの」と榊原さん。仲間の70代男性は「最初はいつまで続くかなあと思ったけど、農作業に誰よりも熱心なんだよね。もう一通りの野菜作りはできるよ」と目を細める。
高校生の時に芸能界に入って以来、仕事一筋だった。「この世界以外知らないし、趣味も特にない。何か新たに学びたい。どうせなら生活に身近なもの」と考えたとき、日本の自給率の低さや耕作放棄地の問題などが目に付いた。
自分で作った農作物を食べたくなり、JAが当時開いていた農業塾に参加。出身地の厚木を活気づけたいという思いもあった。修了後も農作業を続けたくて、仲間と農園を始めた。
大好きなアスパラガスが収穫まで3年ほどかかることや、小松菜やシュンギクの種の小ささに驚いた。野菜作りについて「子育てをしているみたい。過度な愛情も、気に掛けないのも駄目。生き物を育てているんだなあ」とつくづく感じる。
在来種の栽培や加工品作りなど、やりたいことにどんどん挑戦。日本農業新聞にも活動の様子を連載した。農家と知り合い自ら農作物を作る中で、作り手と買い手の距離感にもどかしさも感じるようになった。「食べる側は野菜を当たり前にあるものと思いがちだけれど、農家が時間をかけて地道な作業をして作っている。“育てられたもの”をいただいているという感覚を一人一人が持てるように、農業に触れ合う機会が増えるといいな」
農園を続けてこられた理由に、仲間の存在を挙げる。農業について教わるだけでなく、作業も互いに協力し、励まし合ってきた。「心が豊かになり、私自身を育ててもらえた」と感謝する。仲間も年を重ね、体力的にきついと感じることもあるが、まだまだ続けたい。農への思いは深まるばかりだ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月12日

TACブログで情報発信 毎週更新、アクセス10倍も 滋賀・JAグリーン近江
滋賀県のJAグリーン近江は、地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)全員がブログを活用し、新型コロナウイルス下の情報発信につなげている。組合員へ訪問できないときも、栽培の注意点や研修会の案内など営農に関する情報を毎週欠かさず更新。新型コロナの支援に関する記事などは、普段の約10倍のアクセスを記録するなど注目を集める。
ブログは「JAグリーン近江TACブログ」で、今年度で10年目。……
2021年01月12日

富山で記録的大雪 安全確保し除雪を 施設被害懸念
富山県内は9日も雪が降り続き、富山地方気象台(富山市石坂)では1986年以来35年ぶりに1メートルを超える積雪を記録した。大雪となり、農家はハウスなど農業施設の被害に警戒を強めている。市内の用水路で死亡事故も発生し、関係機関は除雪中の安全確保を徹底するよう呼び掛けている。
同気象台によると、9日午後1時現在の積雪は富山120センチ、高岡伏木110センチなど。
葉物を中心としたハウスを7棟所有する富山市金屋の寺家久雄さん(72)は「こんなに降るとは思わず驚いている。ハウスがつぶれないか心配だ」と話し、周囲の除雪に余念がない。深い雪に覆われていることや交通障害もあり、県や関係機関も農業施設の被害を把握しにくい状況が続く。
県内では用水があふれて床下浸水するなど建物被害の他、雪かきに伴う人身事故が相次いだ。富山南警察署によると8日午後7時ごろ、富山市善名で80代男性が田んぼの間を流れる用水の集水ますで倒れているのを家族が見つけ、死亡が確認された。除雪作業中に転落した可能性がある。
県によると除雪機で指を切断する事故や、屋根からの転落などが各地で相次ぐ。除雪中の事故などに引き続き注意を呼び掛けている。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月10日

生物多様性が危機 今後の国家戦略とは 実効性あるSDGSに WWFジャパン事務局長 東梅貞義氏に聞く
世界の生物多様性の状況が、危機的な状況だ。対策として各国政府は新たな国家戦略を検討している。長年にわたり自然保護に取り組んできた世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の東梅貞義事務局長に、生物多様性の現状や復元に必要な取り組みについて聞いた。(聞き手・金哲洙)
弾力的な社会 形成を
──生物多様性の現状をどうみますか。
世界の生き物の豊かさは、50年前の3分の1になっている。WWFが4392種、2万811個体群の脊椎動物を対象に……
2021年01月10日
豪雪で枝折れ被害 秋田県湯沢市 積雪平年の4倍
北日本から西日本の日本海側を中心とした、記録的な豪雪で、秋田県湯沢市では8日午後6時現在の積雪が147センチと平年の4倍を超えた。同市でブドウやリンゴを栽培する果樹農家、山下久悦さん(71)は地域で協力して雪かきに追われた。「今までにない雪の降り方だ」という。
山下さんによると、同市では2晩で1メートル超積雪。就農して50年以上だが、「年明けすぐにこんなに雪が降ったのは初めて」と言う。「ブドウ棚の上の方まで雪がすっぽり埋まっている」(同)。高さにして180センチほど。リンゴの木も雪に引っ張られて枝が折れているという。
山下さんの頭によぎるのが2010~11年の豪雪被害だ。当時も枝が折れる被害が発生し、その年の収穫量は3分の1にも満たなかった。積雪量が多い年に大きな被害があるネズミによる食害も気にかかる。
「家を守るために雪下ろしをしなければいけない。畑にも行けない」と肩を落とす。
秋田県によると、県内では横手市や湯沢市など県南部を中心にホウレンソウの他、セリや花きなどに被害が発生した。行政やJAが確認できていない被害農地も多くあり、被害額はさらに拡大する見込みだ。
山形県でも新庄市で菌床シイタケやタラの芽のハウスが倒壊する被害が発生。寒河江市では昨年末に降った雪の除雪が終わらず、山間地の果樹地帯の被害が懸念されている。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月09日