鳥インフル 大分、和歌山でも 発生8県に広がる
2020年12月11日

農水省と大分県、和歌山県は10日、両県の養鶏場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。高病原性と確認されれば、大分県が20例目、和歌山県が21例目となる。発生は8県に拡大。警戒が必要な状況が続くことから、同省は全国の農場に緊急の一斉消毒を求めている。
野上浩太郎農相は同日、農水省の鳥インフルエンザ防疫対策本部で、全国一斉消毒について9日に都道府県に通知したと説明。「今後の全国的な発生に強い危機感を抱いている」とし、10日も防疫措置に必要な人員や物資、埋却地の確保を事前準備し「発生時の初動防疫に備えるよう都道府県に求めた」と述べた。
大分県佐伯市の農場では、肉用鶏5万6000羽の殺処分を始めた。9日に死んだ鶏が増加し、県に通報。10日にH5亜型と分かった。移動制限区域(半径3キロ圏内)は3戸が3万2000羽、搬出制限区域(同3~10キロ圏内)は8戸が11万1000羽を飼育する。
和歌山県紀の川市でも採卵鶏6万7000羽の殺処分を始めた。9日に県に通報。10日にH5亜型と分かった。移動制限区域で1戸が440羽、搬出制限区域では6戸が2万2000羽を飼う。
高病原性のウイルスが相次いで見つかっていた福岡、宮崎に隣接する大分県。最大限の警戒心を持って防疫対策に取り組んでいただけに、発生は農家を落胆させた。
発生地の佐伯市と同じ県南部の竹田市で採卵鶏を飼養する40代の農家は「(隣県で多発していたことで)どこで出てもおかしくなかった」と受け止める。自身は週1回だった消石灰の散布を2、3日に1回に増やし、効率化のため消石灰をまく機械も入れるなど、対策を徹底してきた。「これ以上できることはない。後は天命を待つしかない」と諦念をにじませる。
大分県養鶏協会は10日、加入する85戸の農家に注意喚起の文書を送付。鶏舎内外の清掃、飲料水の汚染対策などをまとめた内容だ。協会は「何度も農家に呼び掛けてきたことだが、今は毎日の管理を徹底してもらうしかない」とこぼす。
和歌山県紀の川市の発生農場では10日午前9時から、飼養する全6万7000羽の殺処分が始まった。県職員に加え、県の災害派遣要請を受けた自衛隊員が常時合わせて280人体制で作業に当たる。
県家畜保健衛生所に通報があったのは9日正午。県によると死んだ鶏の数は「数羽程度」(畜産課)と限定的だったが、近隣の奈良県五條市で6日に発生していたこともあり、早期通報につながったという。
和歌山県養鶏協会は「今季は全国で多発しており、常に緊張感を持って警戒してきた。県内で発生したインパクトは大きい」と驚きを隠さない。
同県は渡り鳥が集まりやすいため池が5065カ所あり、全国で6番目に多い。県は11月下旬に県内養鶏場に消石灰を配り、緊急消毒をしており「飼養衛生管理基準の徹底を引き続き呼び掛けていきたい」と話す。
野上浩太郎農相は同日、農水省の鳥インフルエンザ防疫対策本部で、全国一斉消毒について9日に都道府県に通知したと説明。「今後の全国的な発生に強い危機感を抱いている」とし、10日も防疫措置に必要な人員や物資、埋却地の確保を事前準備し「発生時の初動防疫に備えるよう都道府県に求めた」と述べた。
大分県佐伯市の農場では、肉用鶏5万6000羽の殺処分を始めた。9日に死んだ鶏が増加し、県に通報。10日にH5亜型と分かった。移動制限区域(半径3キロ圏内)は3戸が3万2000羽、搬出制限区域(同3~10キロ圏内)は8戸が11万1000羽を飼育する。
和歌山県紀の川市でも採卵鶏6万7000羽の殺処分を始めた。9日に県に通報。10日にH5亜型と分かった。移動制限区域で1戸が440羽、搬出制限区域では6戸が2万2000羽を飼う。
最大警戒も…農家落胆
高病原性のウイルスが相次いで見つかっていた福岡、宮崎に隣接する大分県。最大限の警戒心を持って防疫対策に取り組んでいただけに、発生は農家を落胆させた。
発生地の佐伯市と同じ県南部の竹田市で採卵鶏を飼養する40代の農家は「(隣県で多発していたことで)どこで出てもおかしくなかった」と受け止める。自身は週1回だった消石灰の散布を2、3日に1回に増やし、効率化のため消石灰をまく機械も入れるなど、対策を徹底してきた。「これ以上できることはない。後は天命を待つしかない」と諦念をにじませる。
大分県養鶏協会は10日、加入する85戸の農家に注意喚起の文書を送付。鶏舎内外の清掃、飲料水の汚染対策などをまとめた内容だ。協会は「何度も農家に呼び掛けてきたことだが、今は毎日の管理を徹底してもらうしかない」とこぼす。
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和歌山県紀の川市の発生農場では10日午前9時から、飼養する全6万7000羽の殺処分が始まった。県職員に加え、県の災害派遣要請を受けた自衛隊員が常時合わせて280人体制で作業に当たる。

鳥インフルエンザの発生を受け、防疫作業に当たる関係者(10日、和歌山県紀の川市で=和歌山県提供)
和歌山県養鶏協会は「今季は全国で多発しており、常に緊張感を持って警戒してきた。県内で発生したインパクトは大きい」と驚きを隠さない。
同県は渡り鳥が集まりやすいため池が5065カ所あり、全国で6番目に多い。県は11月下旬に県内養鶏場に消石灰を配り、緊急消毒をしており「飼養衛生管理基準の徹底を引き続き呼び掛けていきたい」と話す。
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2021年03月04日

下田豚カレー・こくわカレー 新潟県三条市
新潟県三条市下田地域の山間で自生している果実「コクワ」(サルナシ)を食材に使ったカレー。農家カフェこくわ屋が提供する「下田豚カレー」は、地元のブランド豚とコクワとの相性が良い。2020年秋に発売され、手軽に食べられるためファンを増やし、土産用としても喜ばれている。
同カフェでは60度で2時間加熱した真空低温調理で豚肉のうま味を引き出している。コクワはビタミンやポリフェノール、食物繊維が豊富で、美肌や免疫力を高める働きが期待されている。
「下田豚カレー」(200グラム1袋入り)800円(税別)、「こくわカレー」(100グラム2袋入り)500円(同)。問い合わせはこくわ屋藤兵衛工房、(電)0256(46)4931。
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2021年03月04日
農政の新着記事

歌って踊って日本酒飲んで 農水省チャンネル新動画を公開
新型コロナウイルスの影響で落ち込む日本酒の消費を喚起しようと、農水省がユーチューブ公式チャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、新たな動画を公開した。同省の若手職員や酒造好適米の生産者らが次々に登場し、日本酒で乾杯を呼び掛けるダンスを全力で踊る内容だ。
日本酒造組合中央会が制作した動画「日本酒ダンス」を基に、ダンス動画で人気のユーチューバーの指導も受けながら制作し、5日に公開。その日のうちに数千回の視聴があった。
動画には、若手を中心とする同省職員40人超が出演。ラップ音楽と共に、同省の大臣室前や地方農政局の事務所など、次々に舞台を変えて踊る様子が流れる。宮城県内の酒米生産者3人も出演し、ダンスを披露している。
日本酒はコロナ禍を受け2020年は前年比で国内出荷量が11%減、輸出量は13%減。こうした苦境を背景に、ラップの歌詞では「酒米、来年は作れないかもしれない」と危機感を強調。会食が困難な中で「リモート飲み会」を呼び掛けるなどで、消費拡大を訴える。
ばずまふの運営メンバーで動画制作を提案した同省鳥獣対策・農村環境課の吉村真里菜さんは「皆が酒米や日本酒の産地が元気になることを祈りながら踊った。特に、日本酒になじみの薄い若い人たちに魅力を届けたい」という。
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2021年03月08日

リーフ茶「飲む回数増えた」 コロナ下で若者の行動に変化
若い世代(18~29歳)の26%が、新型コロナウイルス下でリーフ茶(茶葉からいれた緑茶)の飲用頻度が「増えた」と回答したことが、農水省の調査で分かった。家で過ごす時間が長くなったことや健康への関心が高まったことが背景にある。ペットボトル緑茶飲料の浸透で茶葉離れが課題だった消費に、変化が見られた。
農水省が「緑茶の飲用に関する意識・意向調査」を、昨年10月中旬から11月上旬にかけて実施し、18歳以上の男女1000人から回答を得た。
リーフ茶の飲用頻度が「増えた」と回答した人は全世代合計では14%(143人)だったが、18~29歳の世代では「とても増えた」「少し増えた」と回答した人が26%(36人)に上った。
増えた理由(複数回答)として、18~29歳世代では「自宅で食事する時間が増えたから」(67%)が最多。「自宅でくつろぐ時間が増えたから」(47%)、「健康機能性に魅力を感じたから」(44%)、「家族と過ごす時間が増えたから」(22%)と続いた。
リーフ茶飲用頻度が「増えた」と回答した全世代で、茶葉購入先(複数回答)として「増えた」のは「スーパー」(75%)、「インターネット販売」(30%)、「茶専門店」(29%)、「ドラッグストア」(21%)。
ネット購入が増えたと回答した人の割合は60代がトップ(42%)、次いで70代(36%)と高齢層の電子商取引(EC)利用の急伸も見てとれる。18~29歳の世代は33%でそれに続いた。
茶葉は緑茶飲料や他の飲料にシェアを奪われ、需要が減少している。コロナ下での業務需要の落ち込みも拍車を掛け相場が低迷し、消費喚起が課題となっている。
農水省は「リーフ茶飲用の機会増加を捉えて、茶業界には若者がさらにお茶を飲むような取り組みを期待したい」(茶業復興推進班)と話す。
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2021年03月08日

桃 初の10万トン割れ せん孔細菌病が多発 20年収穫量
2020年産の桃の収穫量が9万8900トンとなり、前年産より9000トン(8%)減ったことが農水省の調査で分かった。4年連続の減少で、同省の統計開始以降初めて10万トンを割り、過去最低となった。主産地の福島県や長野県などで、葉や果実に穴が開く「せん孔細菌病」が多発したことが要因。同省は20年度第3次補正予算に同病の防除対策を盛り込み、生産継続を支援する。
都道府県別の収穫量は、全国1位の山梨県がほぼ前年並みの3万400トン。同2位の福島県は2万2800トンで同16%減、同3位の長野県は1万300トンで14%減った。果実を収穫するために実らせた結果樹面積は全国で9290ヘクタールで、3%減った。一方、全国の10アール当たり収量は6%減の1060キロだが、福島県、長野県では、ともに12%の減少だった。
両県の収穫量の減少について、同省はせん孔細菌病の多発を要因に挙げる。対策として同省は、20年度第3次補正予算で、同病などを対象とした「重要病害虫等早期防除対策事業」に4億6300万円を計上した。福島や長野など、同病の被害が拡大している地域のJAや複数の農家でつくるグループが対象。発生状況の調査や枝葉の病斑の除去などの経費として、最大半額まで補助する。
希望者は、防除の時期や取組内容などを盛り込んだ事業計画書を地方農政局に提出する。予算の限度額に達していない場合、年度をまたいでの申請でも認められるが、同省は「まん延を早期に防止するためにも、早めに申請してほしい」(植物防疫課)と説明する。
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2021年03月07日
規制会議議論始まる 准組利用「組合員の判断」 農水省が方向性表明
政府の規制改革推進会議農林水産ワーキンググループ(WG)は5日、改正農協法施行5年後の見直しに向けた議論を始めた。農水省やJA全中などから意見を聴取。同省は今後の検討の方向性として、JA准組合員の事業利用については「組合員の判断に基づく」との考えを示した。WG側は、農家所得増大に向けたJAの自己改革の成果を詳細に示すよう求め、数値目標による進捗(しんちょく)管理の必要性も指摘した。
WG 所得増「数値目標を」
会合は非公開。同省は各分野の改革の実施状況を総括し、方向性を示した。……
次ページに農水省が示した農協改革の検討方向の表があります
2021年03月06日
有機農業 50年に100万ヘクタール 新戦略中間案 環境負荷軽減へ 農水省
農水省は5日、環境負荷の軽減と農業生産力向上の両立を目指す中長期的な政策方針「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめ案を公表した。2050年までに①化学農薬の使用量半減②化学肥料の使用量3割減③有機農業を全農地の25%に拡大──といった意欲的な数値目標を提示。技術革新や農家・消費者らの理解などを前提とし、生産体系を大きく転換する方針を打ち出した。
次ページに新戦略のポイントの表があります
2021年03月06日
食料安保など重点に 中国の全人代が開幕
中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は5日、北京で開幕された。2021年からの14次5カ年計画に加え、35年までの長期目標も議論し、食料安全保障などを柱に政策を定める見通しだ。食料安全保障では、種子と耕地が重要と強調。種子の遺伝資源の保護や優良品種の選抜、普及を強化し、農家支援も拡大する。……
2021年03月06日
農地所有適格法人 現行要件 「支障」2割 規制会議に調査示す 農水省
政府の規制改革推進会議農林水産ワーキンググループ(WG)は5日、農地所有適格法人の議決権要件緩和を巡り、農水省に意見を聞いた。同省は、現行要件では資金調達などに「支障がある」とする法人が約2割だったとの調査結果を提示。農業関係者が今後も経営権を確保する必要性を示しつつ、一定の条件下で出資による資金調達の在り方についても検討する必要があるとの考えを示した。
同会議は、「農業者の資金調達の円滑化」を名目に、同法人の議決権要件緩和に関心を示す。……
次ページに調査結果の表があります
2021年03月06日

[米のミライ](7) 消費拡大 米卸・ミツハシ 「ご飯食=健康」発信 アスリートに照準
米の消費減少の要因の一つが、「米は太る」といった健康に関するマイナスイメージだ。しかし、米は健康的な体づくりには欠かせない食べ物。スポーツ選手をターゲットとし、米を売り込む動きが出てきた。
米卸のミツハシ(横浜市)は、大学の運動部などスポーツチーム向けの米飯宅配事業を2019年から始めた。運動前後に不足する栄養を補う「補食」に、米の需要を見いだしたためだ。……
2021年03月05日
広域捕獲 国が支援 鳥獣特措法改正で骨子案
自民党が議員立法に向けて検討している鳥獣被害防止特別措置法改正案の骨子案が4日、判明した。都道府県が市町村の枠を超えて広域的に捕獲を進める際に、国が財政支援を行うことを明記。猟銃所持許可を更新する際に必要な技能講習の免除特例の延長や、捕獲した鳥獣の有効利用の促進強化も盛り込んだ。
特措法は2007年に議員立法で成立し、今国会で4回目の改正を目指している。……
次ページに骨子案のポイントの表があります
2021年03月05日

[米のミライ](6)加工用米 産地と地元実需 協力 活用の裾野広げる 新潟、熊本県
「パンやカップ麺のように、手軽に食べてもらえる商品にしたい」。JA熊本経済連は、県産の加工用米を使った冷凍米飯を売り込む。ご飯を炊く手間から国内の精米消費量が落ち込む中でも、電子レンジで調理できる商品ならば、消費者の簡便ニーズに応えられると商機をみる。
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2021年03月04日