ICA声明25年 横の関係を太くしよう

 今年は国際協同組合同盟(ICA)が「協同組合のアイデンティティーに関する声明」を採択して25周年に当たる。ICAが掲げた新たな指針は協同組合らしさの強化である。それにはまず、組合員や各組合の横のつながりを強めるのが有効だ。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響から、節目の年に協同組合に関する関心が高まらなかったのは残念である。危機の時代であるからこそ、関係者は組合員と地域社会に対し何ができるかを、今年の締めくくりに考え、来年につなげてほしい。

 このICA声明は協同組合の定義・価値・原則を含み、最も重要な指針である。レイドロー博士が協同組合の「三つの危機」と21世紀の進路を示した報告をしたのは1980年のモスクワ大会。それから15年かけて協同組合関係者が議論を重ね、95年のマンチェスター大会でこの声明に結実させた。

 協同組合を「共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人びとの自治的な組織である」と定義。正直や他人への配慮など倫理的な価値を重視した。原則は自発的で開かれた組合員制、自治と自立など7項目ある。JA綱領は同声明を反映し、97年の第21回JA全国大会で決議した。

 組合員の意思に基づく自治・自立は協同組合の肝である。だが、政府が常に尊重すると限らないことは前政権での農協改革で経験済みである。一方で、積み残し課題である准組合員の事業利用規制の要否については、運動の結果、政権与党が「組合員の判断に基づく」と約束した経過もある。原則の重要性を粘り強く訴えていく必要がある。

 ICAは向こう10年の指針「2020―30戦略計画」で、協同組合のアイデンティティーの強化・深化を柱に据えた。平たく言えば協同組合らしさのこと。国連の持続可能な開発目標(SGDs)以降、環境保全や社会的責任を重視する企業が増え、NPOなど非営利団体の活躍が存在感を増している。同戦略は、裏返せば協同組合の「埋没の危機」の表れといえる。

 各地の総合JAは経営の健全化という課題と併せ、「らしさ」を発揮して地域社会にどう貢献できるかが問われている。二つ提案したい。一つは組合員と組合員とのつながりの強化。事業を優先すると、どうしても組織と組合員との縦の関係になりやすい。だが協同組合は人と人とのつながりを基盤とする組織だ。生産組織、助け合い組織、サークルなどを活性化し、横の関係を強めるべきだ。

 もう一つは協同組合間連携の強化。事業面での新展開を期待する。例えば移動購買車のような事業は生協と組める余地がないか。労働者協同組合法が成立した。今後設立される小さな協同組合をJAが応援する新しい連携の風を起こしてほしい。

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