エコフィード新基準 加熱処理を拡大、厳格に 豚熱対策 4月から運用
2021年01月07日

農水省は、食品残さから製造する飼料「エコフィード」の新しい加熱基準などをガイドラインにまとめ、2021年4月から運用を始める。豚熱やアフリカ豚熱の感染拡大を防ぐ対策の一環。新基準では対象となる食品残さの種類を広げ、加熱処理を厳格化する。
加熱処理の対象は「生肉などが混入している可能性があるもの」から「肉を扱う事業所等から排出されるもので、肉と接触した可能性があるもの」に拡大。加熱基準は「70度30分以上または80度3分以上」から「攪拌(かくはん)しながら90度60分以上または同等以上」に厳しくした。加熱処理の記録作成と2年間の保管も求める。
調理済みのハムやソーセージなどの肉加工品も原則、新たな加熱基準の対象とする。ただし、食品製造段階で中心温度が70度で30分以上加熱されたと確認できる場合や、豚以外の家畜の飼料で豚用とは別の製造ラインで作る飼料は対象外となる。
飼料製造業者だけでなく、食品残さを自ら収集して豚に与える農家も、新基準の加熱処理が求められる。加熱処理が必要な残さは、農場内の衛生管理区域内に持ち込まないことも定めた。
これまで食品残さの飼料利用は通知で規定していたが、今回の見直しで省令により規定し制度化した。違反した場合は、罰則の対象になる。
加熱処理の対象は「生肉などが混入している可能性があるもの」から「肉を扱う事業所等から排出されるもので、肉と接触した可能性があるもの」に拡大。加熱基準は「70度30分以上または80度3分以上」から「攪拌(かくはん)しながら90度60分以上または同等以上」に厳しくした。加熱処理の記録作成と2年間の保管も求める。
調理済みのハムやソーセージなどの肉加工品も原則、新たな加熱基準の対象とする。ただし、食品製造段階で中心温度が70度で30分以上加熱されたと確認できる場合や、豚以外の家畜の飼料で豚用とは別の製造ラインで作る飼料は対象外となる。
飼料製造業者だけでなく、食品残さを自ら収集して豚に与える農家も、新基準の加熱処理が求められる。加熱処理が必要な残さは、農場内の衛生管理区域内に持ち込まないことも定めた。
これまで食品残さの飼料利用は通知で規定していたが、今回の見直しで省令により規定し制度化した。違反した場合は、罰則の対象になる。
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ドラレコ記録を提供 犯罪解決へ県内初協定 宮城・JA古川と県警
JA古川は、業務車両に設置したドライブレコーダーの記録データを宮城県古川警察署に提供する。地域の犯罪や事故の早期解決に協力して、安全・安心な地域社会の実現を目指す。14日、JAと同署は協定を大崎市の同署で締結した。同署によると、県内で同様の協定を締結したJAは初。同署が事業所などとこのような協定を結ぶのも初めて。
JAがドライブレコーダーを設置するにあたり、同署に協定締結を提案した。……
2021年01月15日
焼け焦げたがれき、白い花束、線香のにおい、手を合わせる人
焼け焦げたがれき、白い花束、線香のにおい、手を合わせる人▼1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災の記憶である。大火災に襲われた神戸市長田区を取材した。あれから26年。町並みは復興しても災害は続いていることを『希望を握りしめて 阪神淡路大震災から25年を語りあう』で知る。高齢化する復興住宅と孤独死、心身に障害を負った「震災障害者」とその家族の苦しみ…▼編者の牧秀一さんは「よろず相談室」を立ち上げ、被災者を訪問し、生活支援を続けてきた。本書はその活動の記録と被災者の人生の証言集。「ひとときでも話し相手になることは、『置き去りにされていない』と実感できる時間になる。少しでも気持ちが晴れれば、少しずつ前を向けるようになる。そう信じてやってきた」。遠くにいても手紙を書くことがつながり続ける支援になるという▼東日本大震災をはじめその後も震災は相次ぎ、気象災害は頻発。コロナのような疫病は世界同時災害をもたらす。一方でボランティアや寄付、クラウドファンディング、ふるさと納税、応援消費など支援の仕方は多様化し、ネットの普及でつながり方も広がった▼誰もが被災者になり、誰もが支え手になれる時代。大切なのは「お互いさま」の精神と「忘れない」との思いだろう。
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2021年01月17日
農畜産物トレンド 変化に対応 業界連携で
日本農業新聞の2021年「農畜産物トレンド調査」がまとまった。販売キーワードの1位は「コロナ対応」。新型コロナウイルス感染の終息が見通せない中で、国産回帰の潮流が確認された。難局を乗り切るには産地だけでなく、川中、川下との連携が重要だ。関係業界が一丸で消費動向の変化に対応すべきだ。
トレンド調査は、米、野菜、果実、食肉、牛乳・乳製品、花きの6部門で実施した。全国のスーパー、生協、外食、卸売業者などの販売担当者を対象とし、140社から回答を得た。毎年行い、今年で14回目。
今回の特徴は、コロナ関連のキーワードに注目が集まった点だ。「ネット取引・宅配」やコロナ不況を受け「値ごろ感(節約志向)」が上位にランクインした。「ネット取引・宅配」はこれまでも関心項目だったが、外出自粛や人との接触を控えたい消費動向の強まりで、コロナ下での販売手法として欠かせないものになっている。
部門別に見ると、トレンドのキーワードは多彩だ。野菜は「栄養価」。健康志向を受け、栄養価が高いとして知られるブロッコリーやニンジンといった品目に注目が集まった。野菜はそれぞれの品目で特徴的な機能性がある。研究機関などと連携し、販売戦略に生かしたい。
果実は「ギフト需要」と「地域性」。専門家は「果実は県独自ブランドが豊富で地域性を打ち出しやすい。特色ある果実で旅行気分を味わってもらうなど、付加価値型で地域の魅力を丸ごと売り込む視点が重要」と指摘する。
需給緩和が懸念される米は、パックご飯とインターネット販売が、消費拡大の手法として注目度が高い。米は炊飯や持ち帰りの負担といった課題がある。簡便性に対応した商品づくりが重要だ。食肉は、節約志向を受けて値ごろ感が求められる。牛乳・乳製品は家庭用が堅調で、大容量に勝機がある。花きは業務需要が伸び悩む中、業務用と家庭用の両方の用途に使える商材に注目が集まる。
農畜産物の一つの品目で、さまざまなキーワードを全て満たすのは難しい。産地は自らの農畜産物の特徴をつかみ、どのキーワードで産地づくりに取り組むか考える必要がある。例えば野菜。「ネット取引・宅配」ならばeコマース(電子商取引)に産地が挑戦したり、宅配業者との連携を強化したりすることなどが想定される。「健康(機能性)」なら機能性成分の高い品種の産地化や機能性表示制度を活用した販売もよい。「値ごろ感(節約志向)」に対応し、多収や低コストの産地づくりを目指すのも選択肢となる。
販売キーワードの「国産志向」(14%)「地産地消」(10%)「産地との直接取引」(8%)からは、国産を見直す動きが読み取れる。コロナ終息後も見据えて産地は、取引先などと連携して消費者や実需者のニーズに対応する体制を構築しよう。
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2021年01月15日
次期全国大会議案 大転換期のJA像示せ
世界と日本を取り巻く情勢は新型コロナウイルスで激変した。そうした中でJAグループは10月、第29回JA全国大会を開き、中期指針を打ち出す。大転換期になくてはならない協同組合の存在感を示す「目指すJA像」を発信すべきだ。
ピーター・ドラッカーが半世紀前に書いた『断絶の時代』を改めて読み直したい。われわれが今直面している状況と重なる点が多い。彼は四つの「地殻変動」が始まったことを挙げ、これまでの経済・社会とは「非連続」の時代の到来を展望した。その一つ目は新技術・産業の出現。二つ目は経済のグローバル化。三つ目は政治と社会の多元化。四つ目は知識社会の到来。知識は情報と置き換えていいかもしれない。
まさにその時代を生きてきたわれわれは、インターネットなどの情報技術が劇的に私たちの暮らしや経済を変えたことを知っている。世界は近づき、国境の壁は取り外され、そして農産物輸入大国の日本が輸出拡大の旗を振っている。グローバル化は一方で、ウイルスや細菌といった病原体があっという間に世界を席巻するリスクを高めた。
コロナ禍が生活、経済、人々の意識に本質的な変化をもたらすかは見定める必要があるが、テレワーク、オンライン会議、ネットショッピングといったスタイルは収束後も定着すると考えられる。東京から地方への転出、田園回帰の流れが続く可能性も高い。これを一層太いものにすることが求められている。
また、コロナ禍が加速させた格差の拡大、社会の分断をどう乗り越えていくか。新自由主義的な経済から持続可能な経済への転換、地球温暖化防止といった地球的課題への関心も高まりつつある。今、転換期に立つとの意識を持つべきである。
こうした大きな視座から、協同組合の中核であるJAグループは何をすべきか。「食と農を基軸に、地域に根差した協同組合」が持つ資源とヒューマンパワーで何ができるか。次期大会議案づくりでは、今日的な課題への骨太の構想を示すべきだ。「地域になくてはならないJA」の具体的な姿と、そのための行動を提示してもらいたい。
過去2回の大会議案は、官邸主導の農協改革への対応に追われ、JA自己改革を前面に打ち出した。具体的には農業者所得の増大、農業生産の拡大、地域の活性化。これらは成果を上げたが、JAの原点として引き続き実践の手を緩めてはならない。同時に、協同組合の側から、大転換期に日本はどう対応すべきか前向きなメッセージを発信してほしい。
世界の協同組合はその存在意義が問われている。国際協同組合同盟(ICA)が掲げた「2020~30年戦略計画」の主題は、アイデンティティーの強化・深化である。あまり内向き志向にならず、協同組合らしさの発揮を組織の内外に伝える議案にすべきである。
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2021年01月18日

所得向上、労働力不足対応…提案通じ農家に貢献 TAC大会表彰
JA全農が14日にオンラインで開いたTACパワーアップ大会の発表で、受賞JAは地域に応じた提案を通じ農家の所得向上や課題解決に貢献していると報告した。新型コロナ禍を受けた労働力不足対応や多収品種の普及、コスト減・省力化、スマート農業活用などを支援。TACは行政や他団体との連携でもリーダーシップを発揮している。
最優秀のJA表彰全農会長賞となった岐阜県のJAぎふは、高収益な米・小麦の3年5作体系を提案。……
2021年01月16日
農政の新着記事
介護報酬改定 ほぼ全て引き上げ 訪問系で認知症対応拡充
厚生労働省は18日、2021年度の介護報酬改定に向け、各サービスの増減内容を明らかにした。ほぼ全てのサービスの基本報酬を引き上げた。訪問サービスの認知症やみとり対応を拡充。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように支援する体制「地域包括ケアシステム」を推進する。
同省が同日開いた社会保障審議会介護給付費分科会で改定案を示した。……
2021年01月19日
首相、輸出拡大に意欲 初の施政方針 産地支援を強調 通常国会召集
第204通常国会が18日、召集された。就任後初の施政方針演説に臨んだ菅義偉首相は、農業政策の柱に農林水産物・食品の輸出を改めて提起し、「27の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地を支援する」と強調。2030年に輸出額を5兆円とする政府目標に向けた実行戦略の着実な推進に意欲を示した。……
2021年01月19日

日本酒・焼酎 無形文化遺産めざす 輸出や消費拡大期待 施政方針で首相 登録は24年以降
菅義偉首相が18日の施政方針演説で、日本酒や焼酎について国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録を目指すと表明した。新型コロナウイルス禍で酒類や原料の酒造好適米などの需要が落ち込む中、登録されれば輸出や国内消費の拡大が期待される。政府は申請に向けた準備を既に進めているが、登録は早くても2024年以降となる見通しだ。
無形文化遺産は、地域の歴史や風習などと深く結び付いた芸能や工芸技術などの形のない文化を保護し、重要性への意識を高めることを目的とする。……
日本では歌舞伎や能楽などが登録されている他、13年には「和食」が日本人の伝統的な食文化として登録され、日本食や日本産食材の人気にもつながったとされる。
政府は日本酒や焼酎について、こうじを使った伝統的な醸造技術として申請する方向で検討。技術の保護措置なども検討し、22年2月にも申請したい考えだ。ただ、ユネスコは同遺産の登録が無い国の審査を優先している。登録件数が多い日本の申請は、実質2年に1回の頻度で審査しており、登録は早くても24年になる。
政府は、日本酒や焼酎を輸出の有望品目とみており、昨年策定した農林水産物・食品の輸出拡大に向けた実行戦略で、どちらも「重点品目」に設定している。同戦略でも、無形文化遺産への登録に向けた検討を加速すると明記していた。輸出量が増えれば、原料の酒造好適米などの需要拡大にもつながる。
19年の輸出額は、日本酒が234億円、焼酎が16億円。同戦略では25年の目標額をそれぞれ600億円と40億円に設定した。政府は同遺産の登録を通じて「現場のモチベーションを高めると同時に、日本酒と焼酎の海外での認知度が向上し、国内の需要創出や輸出拡大につながってほしい」(国税庁)と期待する。
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2021年01月19日

農業の特定技能「派遣」 広がる 短期雇用も柔軟 手続き負担減
外国人の新在留資格「特定技能」の農業分野で認められた「派遣」が広がっている。農家は直接雇用に比べ事務手続きなどの負担が少なく、雇用期間を柔軟に調整できる。農繁期が異なる北海道と沖縄など地域間で連携した受け入れも進む。派遣に参入する事業者も増え、専門家は「これまで外国人を入れてこなかった家族経営でも受け入れが広がる」と指摘する。(望月悠希)
外国人材 大きな力
畑作が盛んな北海道浦幌町の選果施設。次々とコンベヤーで流れてくるジャガイモを段ボール箱に手際よく詰めるのは、カンボジア人のレム・チャントーンさん(26)だ。「将来は帰国してビジネスを立ち上げたい。分からないことも周りに聞くと、よく説明してくれる」と笑顔で話す。
チャントーンさんらは特定技能の資格を得た外国人。道内各地で農業生産・販売の他、作業受託をする「北海道グリーンパートナー」が、人材派遣会社の「YUIME(ゆいめ)」から受け入れた。
8~10月の農繁期には150人もの人手が必要な北海道グリーンパートナーは、YUIMEからの提案で、技能実習生だった特定技能の派遣を2019年に11人、20年に23人受け入れた。
YUIMEの派遣は、夏は北海道、冬は本州や沖縄で働くのが基本だ。ジャガイモの選果など冬場でも仕事がある場合は、道内で通年で働くこともある。
直接雇用では通年で仕事を用意しないと外国人の受け入れは難しいが、派遣なら必要な時期を決めて契約を結べる。北海道グリーンパートナー代表の高田清俊さん(59)は「外国人にとっても、さまざまな農家で働くことで、より豊かな経験を積むことができる」と評価する。
受け入れ側は面接や入国手続きなど事務負担が少ないのもメリットだ。北海道グリーンパートナーに組合員の農作業を委託するJAうらほろの林常行組合長は「人手不足を解消し、付加価値の高い販売に力を入れたい」と期待する。
各地で参入の動き
一定の技能を持ち、即戦力としての労働が認められている特定技能の仕組みは、19年に始まった。農業分野では、農業者が雇用契約を結び直接雇用する方法と、雇用契約を結んだ派遣業者が受け入れ機関となり農家に派遣する方法の、2種類がある。派遣では、繁忙期の違う地域に季節ごとに人材を送り出せる。
農業分野の特定技能は、制度発足から1年半の20年9月末時点で1306人。農業分野の受け入れ事業者が加入する「農業特定技能協議会」のうち、10社ほどが派遣事業者だ。
YUIMEは、農業分野の技能実習生だった外国人を採用。給料や待遇は日本人と同等の扱いで、現場のリーダーになる人材を育てている。住まいは、受け入れ農家に住宅の敷地内にある持ち家などを用意してもらい、YUIMEが借り入れる。
北海道以外でも派遣は進む。アルプス技研は、2019年4月から特定技能の派遣事業に参入。現在は子会社の「アグリ&ケア」が9道県に49人を派遣する。
JA北海道中央会も、特定技能のあっせん・派遣をする新組織の立ち上げを目指す。北海道稚内市の酪農家・石垣一郎さん(39)が経営する「アグリリクルート」は、21年から派遣事業に乗り出す。
家族経営も 活用しやすい 北海学園大学の宮入隆教授の話
入国手続きや労務管理の一部を派遣事業者に任せられるため、家族経営が外国人を受け入れるハードルが下がった。季節雇用、通年雇用問わず、広がっていくことは間違いない。一方で事業者は、各地に移動する特定技能の外国人の心理的な負担を考慮すべきだ。
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2021年01月19日

20年産米販売 家庭向けもブレーキ 10、11月支出額 過去20年で最低
2020年産米の販売が低迷している。新型コロナウイルス下で業務用需要の苦戦が続き、頼みの家庭用需要も勢いを失っている。10、11月の米の家計支出額は過去20年で最低水準だった。緊急事態宣言の再発令で、販売環境は不透明さが強まる。需給の均衡に向けて、需要に応じた生産だけでなく消費喚起対策が求められる。(玉井理美)
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
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2021年01月18日

通常国会きょう召集 コロナ対策 最重点
第204通常国会が18日、召集される。新型コロナウイルス対策が最大の焦点で、政府・与党は対策を盛り込む2020年度第3次補正予算と21年度当初予算の成立を急ぐ。緊急事態宣言を受けた農業への影響を巡っても論戦が繰り広げられる見通しだ。政府は農水省の4法案の他、企業による農地所有特例の延長を盛り込む国家戦略特区法改正案、地域的な包括的経済連携(RCEP)の承認案などを提出する。
農林関係法案審議 予算成立後に本格化
会期は6月16日までの150日で、18日は菅義偉首相の施政方針演説などを行う。20~22日には衆参両院の本会議で各党が代表質問する。
政府・与党は補正予算の月内成立、当初予算の年度内成立を目指す。補正予算は農林水産関係で1兆519億円を計上。園芸農家向けの「高収益作物次期作支援交付金」や感染防止への投資を支援する「経営継続補助金」など、コロナ対策を盛り込んだ。当初予算の農林水産関係は前年並みの2兆3050億円とした。
農林関係の法案審議は予算成立後に本格化する見通しだ。農水省は畜舎の建築基準の特例措置を盛り込む新法案や、輸出促進に向けた事業者の投資を支援する「農業法人投資円滑化特別措置法」の改正案など4法案を提出、早期成立を目指す。
国家戦略特区法改正案は、特区の兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例を2年延長するのが柱だ。同特区諮問会議の民間議員らが求めていた特例の全国展開は見送った。審議では、農地取得の必要性の他、諮問会議の在り方も議論になる可能性がある。
RCEPは昨年、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国で署名。農産物の重要5品目は関税削減・撤廃の対象から除外したが、中韓とは初めての経済連携協定(EPA)となるため、影響の検証が課題になる。
議員立法では、狩猟者の技能講習の免除措置の延長などを盛り込む鳥獣被害防止特措法改正案や、過疎地域を財政支援する過疎地域自立促進特措法が3月末に期限を迎えることを受けた新法案が提出される予定だ。
7月には東京都議会議員の任期満了、7月23日には東京五輪の開幕を迎えるため、会期の延長は難しい見通し。政府・与党は提出法案の会期内成立を目指す。
衆院議員の任期満了が10月に迫る中、衆院解散の時期も焦点になる。4月25日には、吉川貴盛元農相の議員辞職と羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う衆参の補欠選挙が行われる。こうした政治日程も絡むとみられるが、コロナの収束は不透明で、菅首相の解散戦略は依然見通せない。
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2021年01月18日
鳥インフル 移動制限全て解除 厳重警戒続く 香川県三豊市
香川県は16日、三豊市で集中発生した今季12事例の高病原性鳥インフルエンザについて、発生農場から半径3キロ圏内で設けた鶏などの移動制限を全て解除した。通常は防疫措置完了後、最短21日の経過で解除できるが、狭い範囲で続発して埋却などの作業も難航。制限解除は昨年11月5日の初発生から約2カ月ぶりになる。今後は感染防止とともに、養鶏場の経営再建が課題となる。
今季の高病原性鳥インフルエンザは発生が15県に広がり、殺処分の羽数は36事例(48農場)で約600万羽となった。1シーズンの被害としては過去に例がない事態。直近でも全国屈指の養鶏産地、千葉県や鹿児島県で発生している。
香川県内の制限区域の解消により、今季発生した36事例のうち31例目まで(全体の86%)は鶏などの移動制限が全て解除された。現時点で制限区域が残るのは32~36事例の発生農場がある千葉、岐阜、宮崎、鹿児島の4県となる。
三豊市内では、県によると、12事例で約179万羽を殺処分した。鶏などの移動が制限された半径3キロ圏内では今も33農場が、約129万羽を飼養。制限が長期化したことで、県は「一部の農場では、ブロイラーが出荷できる日齢を超えたため処分された」と説明する。
移動制限の解除を受け県養鶏協会の志渡節雄会長は「(感染源とみられる)渡り鳥は、まだ周辺にいる。気を緩めず、感染防止に取り組む」と強調。その上で、「発生農場は、経営再開のめどが全く立っていない。国や県には支援や補償を早く示し、農家の不安を払拭(ふっしょく)してもらいたい」と要望している。
ため池が多い香川県では、渡り鳥が飛来する時季に発生が集中した。今後は春に渡り鳥が北へ移動する時季にウイルスが拡散する可能性がある。
北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授は「渡り鳥がシベリアに帰っていく、5月の大型連休ごろまでは厳重な警戒が必要。人、物の消毒や野鳥、野生動物の侵入防止など飼養衛生管理を徹底すべきだ」と話す。
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2021年01月17日

本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
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2021年01月17日
豪州と米国 市民農園ブーム コロナ禍契機に 食材自給 注目集める
新型コロナウイルス禍を契機に、海外で市民農園が注目されている。物流が混乱しても自給自足をすれば食材調達が可能だからだ。政府支援が加わり、今後はさらに拡大しそうだ。オーストラリアと米国の事例を紹介する。
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州。広さ5000ヘクタールに上る自然保護地区ウエスタンシドニーパークランズで、市民農園が徐々に増えている。州の委託で保護地区を管理するウエスタンシドニーパークランズ財団がコロナ禍対策として推し進めていることが背景にある。
同財団は、2006年に地区内の13・2ヘクタールを農地に転用し始めた。16都市から訪れた市民がキュウリなどを栽培し、同州シドニー市内の直売所などで販売。コロナ禍の拡大以降はスーパーの品ぞろえが悪かったことがあり、近隣の消費者が直売所に殺到。売り上げは通常の20倍に増えた。同財団は今後、さらに52ヘクタール分を拡大する予定だ。
食品システムに詳しい同国メルボルン大学のレイチェル・キャリー教授は「自然災害や供給チェーンの混乱に備え、都市は保険政策として都市農業能力を高めるべきだ」と指摘する。
米国東部のシアトル市では、主に黒人と先住民族の間で都市農業が流行。失業者や生活困窮者にとっての自給自足手段として広がっている。
きっかけは、黒人差別抗議運動(ブラック・ライブズ・マター=BLM)を主導する社会活動家のマーカス・ヘンダーソン氏が、小さな野菜畑を作ったことだ。畑は、20年6月に機動隊とデモ隊の衝突が頻発していたキャピトルヒル自治区(デモ隊が自治を宣言した地域)の公園内にある。同氏はBLM問題を巡り警察や機動隊と激しくぶつかり合う暴力的な日々を問題視し「殴り合いよりも、差別や失業で苦しむ黒人を助けるのが優先だ」と行動を起こした。
同氏に賛同する黒人農家らが「本格的に都市住民のための農業を興そう」と集まり、シアトル市からキング牧師記念センター敷地内の空き地を正式に借り入れた。農機具や資材はインターネットで市民から寄付を募って購入。「自分の食料を自分の手で作ろう」をスローガンに、人種差別やコロナ禍で失業した生活困窮者の参加を呼び掛けた。現在、約1ヘクタールの作業に430人以上が参加しているという。
収穫する農産物は、参加者の家族に加え、市内の生活困窮者にも配る予定だ。同氏は「シアトル市内では9人に1人が生活に困窮している。まず畑の周辺7000戸の困窮家庭のうち約半数の3500戸に提供できる量は収穫できるはずだ」とみている。
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2021年01月17日
農地特区 特例2年延長決定 「全国展開前提でない」 担当相
政府は15日の国家戦略特区諮問会議で、兵庫県養父市で認めている企業による農地取得の特例について、8月末の期限を2年間延長する方針を決めた。2021年度中に特例のニーズや問題点を調査し、全国展開の可否について調整する。坂本哲志地方創生担当相は同日の閣議後記者会見で、調査は「全国展開を前提にしたものではない」と述べた。期限の延長を盛り込んだ同特区法改正案は、18日召集の通常国会に提出する。
書面開催した同特区諮問会議で政府は、同市の特例措置について、「ニーズと問題点の調査を特区区域以外においても来年度中に実施し、その結果に基づいて全国への適用拡大について調整し、早期に必要な法案の提出を行う」との方針を提示した。……
2021年01月16日