大雪で物流停滞 ジャガイモ6割高に 貨物列車運休
2021年01月14日
強い寒波による大雪で物流が乱れ、ジャガイモの供給が全国的に不足している。主産地の北海道産が、積雪の影響で鉄道の運行が止まり、道内に荷物が滞留。本格的な運行再開は週末にずれ込む見込みだ。緊急事態宣言を受けて小売りの仕入れが増える中、需給が逼迫(ひっぱく)し、相場は急騰している。
北海道産のジャガイモやタマネギの輸送は、鉄道が約7割を占める。大雪で7日以降、輸送を担うJR貨物は、道内と本州を結ぶ路線の運行が停止。同社北海道支社によると、全面的な運行再開は、15日になる見通しだ。
同社によると「積雪の影響で1週間以上も運行が止まるのは近年ない」異例の状況。低温のコンテナ内で滞留するとジャガイモやタマネギは凍結する恐れがあり、発送した荷物を産地の倉庫に戻す動きもある。ホクレンが輸送で扱う農産物は、12日時点で3000コンテナ(1コンテナ約5トン)滞留しているとみられ、影響が懸念される。
物流の乱れを受け、産地も対策を講じている。道内のJAは、鉄道からフェリー輸送への切り替えを実施。ただ、「フェリーも先週は一時止まっていたし、港まで運ぶトラックの手配も十分ではない。荷物を出しきれず、選別・出荷作業を止めざるを得ない」という。
品薄の影響は、相場に表れてきた。13日の日農平均価格(各地区大手5卸のデータを集計)はジャガイモが1キロ173円と、過去5年平均比の57%高に高騰。卸売会社は「玉付きが少なく不足感がある中で物流も停滞し、逼迫の度合いは増した。日頃取引のないスーパーからも注文が入るほど小売りは荷動きが良く、当面は相場の反発が続く」とみる。タマネギは同11%安の76円だが、今後上昇が見込まれる。
果実は、寒波による供給の影響は限定的だ。青森のJAつがる弘前は、リンゴの出荷先の1割強を占める北海道と九州向けを貨物利用しているが、トラック輸送に切り替えて対応している。
北海道産のジャガイモやタマネギの輸送は、鉄道が約7割を占める。大雪で7日以降、輸送を担うJR貨物は、道内と本州を結ぶ路線の運行が停止。同社北海道支社によると、全面的な運行再開は、15日になる見通しだ。
同社によると「積雪の影響で1週間以上も運行が止まるのは近年ない」異例の状況。低温のコンテナ内で滞留するとジャガイモやタマネギは凍結する恐れがあり、発送した荷物を産地の倉庫に戻す動きもある。ホクレンが輸送で扱う農産物は、12日時点で3000コンテナ(1コンテナ約5トン)滞留しているとみられ、影響が懸念される。
物流の乱れを受け、産地も対策を講じている。道内のJAは、鉄道からフェリー輸送への切り替えを実施。ただ、「フェリーも先週は一時止まっていたし、港まで運ぶトラックの手配も十分ではない。荷物を出しきれず、選別・出荷作業を止めざるを得ない」という。
品薄の影響は、相場に表れてきた。13日の日農平均価格(各地区大手5卸のデータを集計)はジャガイモが1キロ173円と、過去5年平均比の57%高に高騰。卸売会社は「玉付きが少なく不足感がある中で物流も停滞し、逼迫の度合いは増した。日頃取引のないスーパーからも注文が入るほど小売りは荷動きが良く、当面は相場の反発が続く」とみる。タマネギは同11%安の76円だが、今後上昇が見込まれる。
果実は、寒波による供給の影響は限定的だ。青森のJAつがる弘前は、リンゴの出荷先の1割強を占める北海道と九州向けを貨物利用しているが、トラック輸送に切り替えて対応している。
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世界の協同組合事業高 上位にJA系8組織 ICA
国際協同組合同盟(ICA)は、世界の協同組合の事業高(2018年)ランキングをまとめた。発表した上位300組織のうちJA関連は、新たに3JA経済連が加わって合計8組織がランク入りした。事業別のランキングでは、JA厚生連なども上位に入った。報告書「世界協同組合モニター」で公表した。
新たに加わったのは、鹿児島、愛知、宮崎の各JA経済連。……
2021年01月27日

飼料米 立て替え払い推進へ 10アール5万円 栃木・JAなすの
年間10万トン減るといわれる米の需要は、新型コロナウイルスの影響で減少に歯止めがかからない。2021年産の主食用米は大幅な下落が予想され、非食用米への作付け転換が求められている。JAなすのは、21年産の飼料用米を作付けする出荷契約者を対象に、10アール当たり5万円を立て替え払いする独自の対策に乗り出す。米農家の経営安定・維持の後押しを目的に、昨年10月から検討を進め、12月下旬の理事会で最大4億円を立て替え払い金に充てることを決めた。
2021年01月22日

葉の成分 「フィトール」 新防除剤に有望視 ネコブセンチュウに効果 農研機構
農研機構は、葉から抽出できる成分の「フィトール」がネコブセンチュウ対策に使えることを発見した。トマトなどの根に付けたところ、抵抗性が高まって被害を抑えられた。新たな線虫防除剤の成分として有望視し、農薬メーカーなどと開発を進めたい考えだ。
「フィトール」は、葉緑体に含まれるクロロフィルを構成する天然物質。……
2021年01月26日

狩猟 動画で“体験”ふるさと納税返礼に 兵庫県養父市
ふるさと納税で狩猟体験はいかが──。兵庫県養父市は25日、ふるさと納税の返礼品として、リモート形式で狩猟を体験できるサービスを始めると発表した。地元猟師が遠隔操作型の囲いわなを使って鹿などを捕獲する様子を、動画で中継する。市によると、リモート形式で狩猟を体験できる返礼品は全国初。2月1日から募集を始める。
中山間地域を多く抱える同市は、県内でも野生鳥獣による農作物被害が多いのが特徴。毎年1200頭以上の鹿やイノシシが駆除されている。今回、市は「農作物被害の軽減に向けて活躍する猟師の活動を多くの人に知ってほしい」と、狩猟現場に触れられる返礼品を考案した。
同サービスでは、市内に設置された遠隔操作型の大型囲いわなを中継する。利用者はスマートフォンの専用アプリで、わなの様子をリアルタイムで見ることができる。わなにはセンサーが付いており、鹿やイノシシが入ると通知される仕組み。
動画を見ながら、チャット形式で猟師と自由にやりとりすることもできる。囲いわなを作動させる際には、事前に日時が伝えられ、捕獲時の様子を見ることができる。
寄付額は5万円。2月1日からの募集分(定員20人)では、4、5月の2カ月間、中継動画を楽しめる。終了後には鹿肉400グラムが手元に届く。市は「(返礼品を通して)猟師がどのように狩猟をしているのか、肉になるまでの一連の流れを知ってほしい」と話す。
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2021年01月26日

「愛妻の日」にチューリップを 主産3県が合同展示
JAグループなどチューリップの主産3県(新潟、富山、埼玉)と花き卸の大田花きは25日、東京都中央卸売市場大田市場でチューリップの合同展示を始めた。31日の「愛妻の日」に向け、来場する買参人へ主力品種や産地独自品種など、多彩な色や形のチューリップをPRする。29日まで。
JA全農にいがたとJA全農さいたま、富山県が協力し、大田花きへ出荷する11JAのチューリップを展示する。「クリスマスドリーム」など主力のピンク系のほか、黄色や白、紫や複色など100種類以上を陳列する。普段は指名買いでしか出回らない珍しい咲き方の品種や、近年人気のミニチューリップも並んだ。
大田市場での合同展示は3年目。今年は新型コロナウイルス禍で、人を配置する売り込みを見合わせた。29日には仲卸売り場に無人のフェア台を設置してアピールする。
チューリップの主力産地、新潟県の1月以降の出荷計画は前年比で2割近く少ない。新型コロナ禍による需要減を懸念し、作付けを減らした農家が多かった。直近の強い冷え込みで生育はやや遅れているが品質は良好。3月中旬の出荷ピークに照準を合わせる。
JA全農にいがたは「産地も品種もそろってくる時期。暗い話題が多い中、家庭で色鮮やかなチューリップを飾り、晴れやかな気持ちになってほしい」と勧める。
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2021年01月26日
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多彩なサラダを販売 ロック・フィールド「愛菜の日」応援
総菜大手のロック・フィールドは、1月31日の「愛菜の日」に合わせ、多彩なサラダを全店舗で販売する。多品目、加熱野菜、豊富な栄養素、キット商品など、各メニューにテーマを付け、家庭での野菜摂取を応援する。28日から31日まで。
メニューは4種類。……
2021年01月28日

バレンタイン商戦 “花贈ろう”PR本格化 SNSで拡散、製菓と連携 物日需要高まり狙う
新型コロナウイルス禍で切り花の需要が低迷する中、花業界挙げた家庭向けの売り込みが活発化している。1月31日の「愛妻の日」や2月14日のバレンタインデーに合わせた商戦が本格化。コロナ禍でイベント開催が難しいため、インターネット交流サイト(SNS)などを活用して記念日に花のプレゼントを促す。産地や業者は相場回復に向け、贈答機運の高まりに期待している。(柴田真希都)
商戦は、3月14日のホワイトデーまでを視野に販促を強める。花の国日本協議会の調査によれば、2020年のバレンタインデーに花を贈った男性は13年に比べ約6倍(7・5%)となり、特に20代は2年連続で1割を超えた。
新型コロナ禍の家庭需要で、都市部を中心に若年層が生花店に足を運ぶ動きも進んでおり、同協会は「次の10年を見据えて新規の人にも花を贈る習慣を伝えていきたい」と、フラワーバレンタインの訴求対象や方法を刷新した。
ポスターでは男性から女性への花贈りだけでなく、性別を問わない花贈りや、贈られる人と一緒に花を選ぶことも提案。「一本だっていい」「ワンコインで」といったコピーを使い、家族や友人間で気軽に花を贈る様子をイラストで表現する。
製菓会社のグリコからのオファーで、ポッキーとの共同販促も進める。特設サイトでは6種類のポッキーに、バラやガーベラなどの花と花言葉を合わせて提案する。「#花は自由なラブレター」のフレーズと一緒に、花やポッキーで気持ちを伝える写真付きエピソードを、SNSに投稿してもらうキャンペーンも始まった(2月26日まで)。
同協議会の小川典子プロモーション推進室長は「イベントの開催ができない分、リツイートキャンペーンなどSNSをフル活用して、若年層の花贈りを促していく」と力を込める。
25日の切り花の日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)は、1本当たり49円で平年(過去5年平均)比25%安。昨年7月以来半年ぶりに50円を割った。
3大都市圏を含む11都府県での緊急事態宣言の発令を受け、業務や仏花の需要低迷が響いている。バラの産地は「昨年の『母の日』のように、緊急宣言下でも宅配やオンラインなどで物日の贈答需要が高まってほしい」と期待する。
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2021年01月27日
農産物電車に“相乗り” 駅で販売集客向上へ JR西日本岡山支社
JR西日本岡山支社はJA晴れの国岡山やヤマト運輸と協力し、在来線の普通車両の客室を使って農産物を運ぶ貨客混載に取り組む。岡山県高梁市のJR伯備線の備中高梁駅から岡山市の岡山駅に野菜や果実などを定期輸送する計画だ。
岡山駅で新鮮な農産物を販売し、地域の魅力発信と駅の価値を高め、集客につなげる狙い。29日に輸送を実証実験し、安全性などを確認して本格運用を目指す。
新型コロナウイルスの影響で旅客数が減る中、車両を有効利用するため、同支社が2015年から地域産品の魅力発信で取り組む「ふるさとおこしプロジェクト」の一環で企画した。
農産物は、JA晴れの国岡山びほく統括本部管内でヤマト運輸が集荷し、台車で運べるサイズの専用の配送ボックスで備中高梁駅へ届ける。JR西日本は、配送ボックスを列車の客室に載せ、岡山駅まで運ぶ。
備中高梁駅を午後2時27分に発車し、約50分後の午後3時19分に岡山駅に着く。農産物は主に夕方の通勤、通学者向けに駅で販売。輸送の頻度や販売場所、配送ボックスの容量などは実証実験の結果を踏まえ検討する予定だ。
JR西日本岡山支社は「備北地域の特産をPRするとともに、朝取り野菜を定期的に販売することで、岡山駅の集客を増やしたい」(広報室)と期待を込める。
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2021年01月27日

酒米のパックご飯と粥 味良く好評、販路拡大へ 石川の法人
新型コロナウイルス禍による日本酒の消費後退を受け、石川県白山市の農業生産法人ヤマジマが酒造好適米のパックご飯とパック粥(がゆ)の製造を企画し、JA松任(同市)の食品加工場で完成した。市内の酒蔵が、全国の酒販店などに非売の贈答品として送ったところ、評判がよく、ヤマジマはさらに増産する考え。販路開拓の一策となりそうだ。
できたのはご飯(200グラム)、粥(250グラム)の各2500パック。ヤマジマで収穫した2020年産「五百万石」を使用。うるち米同様に常温保存でき、レンジの加熱2分で食べられ、霊峰白山の伏流水で炊いた点を包装で紹介している。
酒造好適米を契約購入している吉田酒造店(白山市)が全品を購入。PRを兼ねて昨年末、取引先の酒販店などに発送した。同店によると、「おいしい」との感想が相次ぎ、「購入できないか」と商品化に期待する問い合わせもあったという。
白山市は酒造好適米の産地。地元の「山島の郷(さと)酒米振興会」は昨年49ヘクタールを栽培し、前年より約1ヘクタール減ったが、コロナ禍を見越し、作付け農家は33戸から10戸減少した。
加工の実現には、JAの食品工場で無菌包装のラインを備えることも幸いした。加熱処理に比べ、食品本来の香りや味覚を損傷しにくいとされる。
ヤマジマの亀田正弘社長は、「味わいは『コシヒカリ』のパック米以上との評判も聞く。他品種の『石川門』や『百万石乃(の)白(しろ)』でも試作し、うまさを比較したい」と話している。
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2021年01月27日

レタス平年並みに トマト3割安 消費喚起探る
レタスが、寒さと干ばつの影響で不足感のある取引となっている。相場は平年の2割安だった上旬から上昇し、平年並みに回復。一方、同じく生食消費が多いトマトは平年並み以上の入荷があり、平年の3割安を付ける。両品目とも消費は伸びにくい中、産地は厳寒期の消費喚起に取り組む。
レタスの1月下旬(26日まで)の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、1キロ202円と平年(過去5年平均)比2%安。……
2021年01月27日

狩猟 動画で“体験”ふるさと納税返礼に 兵庫県養父市
ふるさと納税で狩猟体験はいかが──。兵庫県養父市は25日、ふるさと納税の返礼品として、リモート形式で狩猟を体験できるサービスを始めると発表した。地元猟師が遠隔操作型の囲いわなを使って鹿などを捕獲する様子を、動画で中継する。市によると、リモート形式で狩猟を体験できる返礼品は全国初。2月1日から募集を始める。
中山間地域を多く抱える同市は、県内でも野生鳥獣による農作物被害が多いのが特徴。毎年1200頭以上の鹿やイノシシが駆除されている。今回、市は「農作物被害の軽減に向けて活躍する猟師の活動を多くの人に知ってほしい」と、狩猟現場に触れられる返礼品を考案した。
同サービスでは、市内に設置された遠隔操作型の大型囲いわなを中継する。利用者はスマートフォンの専用アプリで、わなの様子をリアルタイムで見ることができる。わなにはセンサーが付いており、鹿やイノシシが入ると通知される仕組み。
動画を見ながら、チャット形式で猟師と自由にやりとりすることもできる。囲いわなを作動させる際には、事前に日時が伝えられ、捕獲時の様子を見ることができる。
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2021年01月26日

「愛妻の日」にチューリップを 主産3県が合同展示
JAグループなどチューリップの主産3県(新潟、富山、埼玉)と花き卸の大田花きは25日、東京都中央卸売市場大田市場でチューリップの合同展示を始めた。31日の「愛妻の日」に向け、来場する買参人へ主力品種や産地独自品種など、多彩な色や形のチューリップをPRする。29日まで。
JA全農にいがたとJA全農さいたま、富山県が協力し、大田花きへ出荷する11JAのチューリップを展示する。「クリスマスドリーム」など主力のピンク系のほか、黄色や白、紫や複色など100種類以上を陳列する。普段は指名買いでしか出回らない珍しい咲き方の品種や、近年人気のミニチューリップも並んだ。
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JA全農にいがたは「産地も品種もそろってくる時期。暗い話題が多い中、家庭で色鮮やかなチューリップを飾り、晴れやかな気持ちになってほしい」と勧める。
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2021年01月26日

香港に「いちごさん」 生花や洋菓子でPR さが県産品流通デザイン公社
佐賀県産農畜産物の販売支援などを手掛ける、公益財団法人佐賀県地域産業支援センターさが県産品流通デザイン公社は県イチゴブランド品種「いちごさん」を香港の消費者にPRしようと、現地で人気の生花店や洋菓子店とのコラボ企画を始めた。イチゴをそのまま組み込んだ花束の販売や限定スイーツの提供などを展開する。
「いちごさん」は2018年に市場デビューした県ブランド品種。……
2021年01月26日

コロナで明暗分かれる 農畜産物販売内食がけん引 20年食品業界売上高
食料品を扱う各業界の2020年売上高が出そろってきた。新型コロナウイルス下でスーパーや宅配を手掛ける生協は家庭内の食事(内食)ニーズをつかみ好調だった。コンビニエンスストアや外食、百貨店は苦戦したが、生鮮品の扱いやテークアウト対応などで活路を探る。農畜産物の販売先は、引き続き内食向けがけん引する。(宗和知克)
各業界・団体が23日までに公表した20年の売上高(外食は11月まで)をみると、スーパー(食品スーパー3団体の販売統計)が、内食需要を捉えて大半の月で売り上げを伸ばした。宅配も、主力の日本生活協同組合連合会(日本生協連)の供給高が2月以降11カ月連続で前年を上回り好調が際立った。
一方、外食(日本フードサービス協会)は4月に底を打つも、前年を下回ったまま推移した。感染再拡大に伴う各地の時短要請で客足が遠のき、書き入れ時の12月も振るわない見通しだ。
百貨店(日本百貨店協会)は食料品の年間売上高が前年比16%減。4月は半減したが、6月以降は内食ニーズを踏まえた精肉や鮮魚、総菜の販売で回復に向かっている。
コンビニ(日本フランチャイズチェーン協会)は既存店ベースの年間売上高が5%減の約10兆円で、3年ぶりのマイナス。全店ベースでは比較可能な05年以降で初のマイナスとなった。
全体的にみると、新型コロナの影響が表面化したのは政府の臨時休校要請が出た3月からだ。スーパーでは消費者の巣ごもりから家庭調理ニーズが高まった。宅配も小麦粉や冷凍米飯など日持ちする食品を中心に注文が大きく伸びた。
4月に1度目の緊急事態宣言が発令されると、外出自粛や在宅勤務の増加でコンビニは客足が低迷。百貨店もインバウンド(訪日外国人)を含む観光客需要が止まり、果実など高級食材の苦戦が広がった。
6月以降も巣ごもり傾向が続き、各業界が対応を進めた。外食は生き残りへテークアウトやデリバリーなど事業を多角化した。しかし11月に、感染が再拡大すると外食などは再び鈍化し、現状も緊急事態宣言再発令による営業縮小などで、依然厳しい状況にある。
各業界は底堅い需要がある内食対応に注力する姿勢だ。コンビニ大手は野菜など生鮮食料品の扱いを強化している。食品スーパー3団体は「家庭内消費は引き続き堅調に推移する」、日本生協連は「今後、宅配の利用がさらに高まる想定が必要」とみている。
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2021年01月24日

穀類の国際相場上昇 逼迫長期化する恐れ
小麦、トウモロコシ、大豆の国際相場が値上がりしている。年末から上昇基調にあったが、年明け以降も逼迫(ひっぱく)感が続く。予想以上に少ない米国の在庫、中国の盛んな買い付け、一部の輸出国による輸出規制の動きなどが相場を押し上げている。業界関係者によると長期化する可能性もある。(特別編集委員・山田優)
中国需要増、輸出規制も
米農務省が1月中旬に発表した世界食料需給予測によると、2020・21年度のトウモロコシ、大豆は消費量が生産量を上回り、いずれも期末在庫が減る見通しだ。特にトウモロコシ、大豆ともに業界の予想に比べ在庫が少ないことが判明した。
相場上昇の背景には中国のトウモロコシと大豆の活発な輸入がある。疾病で頭数が落ち込んだ肉豚の生産増強が続いているため、飼料需要が急増したといわれている。今後も穀類の大量輸入が続くとみられる。
小麦は世界で史上最高の生産量になり、消費量も増えるものの、期末在庫量が史上最高の多さになる見通しだ。ところが、年末になって世界最大の輸出国であるロシアが、突然小麦輸出に関税をかけると発表し波紋を広げた。その後、アルゼンチンやウクライナもトウモロコシや小麦の輸出を規制するというニュースが報じられ、小麦、トウモロコシ、大豆の需給に逼迫感が強まった。21世紀に入って2回あった食料価格の高騰は、いずれも輸出規制が引き金になった。
こうした国々は、自国通貨の下落で国内でインフレ懸念が高まったことから、輸出規制を導入して国内消費者を優先する方針を打ち出している。混乱の広がりを見越し、米シカゴや欧州の相場がいずれも6、7年ぶりの高値水準まで急上昇した。
現在生育中の南米の大豆やトウモロコシは、干ばつの影響で生育が遅れている。北半球で進む品薄を解消するには力不足という見方が支配的だ。急な値上がりが続いたことで国際相場は一進一退状態になっているものの、日本国内の商社関係者の多くは「当面需給が緩和する要素は見当たらない」と解説する。
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2021年01月24日