筋肉スーツ 続々販売 各社農業向け意識 腕上げる動作補助 都内でロボット展示会
2021年01月22日

農業を意識して開発された、腕の上げ下げを支援するアシストスーツ。イノフィスは「マッスルスーツ」の新機種を展示した(東京都江東区で)
京都江東区の東京ビッグサイトで22日まで開かれている産業ロボット関係の展示会「ロボデックス」で、梨の収穫など、腕を上げる作業を助けるアシストスーツの新製品を、各社が展示している。他産業に比べ安価にするなど、農業向けを意識した。今春の農作業シーズンに向けて販売を本格化させる。
イノフィスは電気を使わず空気圧式の人工筋肉で腰の負担を和らげる「マッスルスーツエブリィ」を販売してきた。今春発売予定の機種は、腕の上げ下ろしや腕を上げたままの姿勢を助ける。「マッスルスーツに“腕”誕生」とPR。会場では農作業の様子を映像で流し、農業での利用を促す。11万~12万円台の販売価格を狙う。
ダイドーも、モーターを使わない機種を販売。これまでの「TASK AR2・0」は重さ5キロ以上の工具を頭上に持ち上げて作業をする場合を想定していた。価格は40万円台。農家には高価なので今春には安価な「AR3・0」を売り出す。
動力は従来のガススプリングに対し、ショックコードというゴムを利用。導入コストを大幅に下げるとともに、より軽くし「軽快な装着感」をうたう。「農業を意識してます」と同社。価格は十数万円程度になりそう。
ユーピーアールは、腰の負担を軽減する電動式のアシストスーツを販売してきたが、今月から腕の動きもモーターで助ける「MODEL Y +kote」を発売する。荷物の上げ下げなど、腰と腕の両方を助ける。130万円程度になる。
イノフィスは電気を使わず空気圧式の人工筋肉で腰の負担を和らげる「マッスルスーツエブリィ」を販売してきた。今春発売予定の機種は、腕の上げ下ろしや腕を上げたままの姿勢を助ける。「マッスルスーツに“腕”誕生」とPR。会場では農作業の様子を映像で流し、農業での利用を促す。11万~12万円台の販売価格を狙う。
ダイドーも、モーターを使わない機種を販売。これまでの「TASK AR2・0」は重さ5キロ以上の工具を頭上に持ち上げて作業をする場合を想定していた。価格は40万円台。農家には高価なので今春には安価な「AR3・0」を売り出す。
動力は従来のガススプリングに対し、ショックコードというゴムを利用。導入コストを大幅に下げるとともに、より軽くし「軽快な装着感」をうたう。「農業を意識してます」と同社。価格は十数万円程度になりそう。
ユーピーアールは、腰の負担を軽減する電動式のアシストスーツを販売してきたが、今月から腕の動きもモーターで助ける「MODEL Y +kote」を発売する。荷物の上げ下げなど、腰と腕の両方を助ける。130万円程度になる。
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米検査見通し 生消・流通の理解不可欠
政府は米の農産物検査規格の見直しを進めている。年間の検査数量は500万トンで、生産量の7割に上る。生産・流通の重要なインフラで、ルール変更の影響は大きい。農家の所得向上と需要拡大に役立つよう、生産者や流通業者、消費者らの十分な理解を得ることが不可欠だ。そのために、検討や周知に必要な時間を確保すべきである。
米は外観での品質評価が難しい上、広域流通するため検査制度がある。全国統一の規格で専門の検査員が「産地・品種・産年」を確認、精米時の歩留まりを判断し1等、2等などと格付けする。農業者は品質改善の目標にし、卸など買い手は購入の判断材料として活用する。
見直しは政府の規制改革推進会議が提起したのが発端で、昨年1月に着手。政府は7月に閣議決定した規制改革実施計画に重点事項の一つとして盛り込んだ。具体的には、農業者の所得向上を目的に、検査等級区分と名称の見直しや、検査コストの低減、機械的計測への早期変更を打ち出した。また、検査米で認めている小売りでの「産地・品種・産年」の3点表示や一部補助金の交付を未検査米にも認める方向を示した。
見直しの具体案を巡っては農水省の検討会が昨秋、論議を始めた。検査等級区分などの見直しでは、従来の目視検査とは別に機械鑑定を導入する方向だ。
検討会では、食味に関するデータなど品質の機械計測には利点があるとする一方、機械の導入費が発生、生産者負担の増加や小売価格への転嫁などを懸念する声も上がる。機械に習熟した人材の確保や、機械と目視の検査が併存し生産・流通に混乱が生じないかといったことを不安視する意見もある。
海外市場の開拓や高付加価値化を目的に新たな日本農林規格(JAS)も検討。需要拡大への期待とともに生産コストが増えないよう求める意見が強い。
全体的に急いでいるように見える。同実施計画で示した、2021年度上期に結論を出し速やかに措置するとの期限が重しになっているのではないか。
先行した米の3点表示の規制緩和は、7月の同実施計画を受けて1月には内閣府の消費者委員会食品表示部会が未検査米でも可能とする食品表示基準の改正案を了承し、7月には施行する速さだ。同部会やパブリックコメントでは、準備・周知のために移行期間の設定を求める意見があったが、見送られた。懸念が残ることから同委員会は菅義偉首相に対する改正案答申の付帯意見で、表示監視の強化と農産物検査と改正内容の普及・啓発、周知を念押しした。
「改革」の名の下に性急かつ安易な見直しを行えば、1700の検査機関、1万9000人の検査員、80万戸の米販売農家、1億人を超す消費者に大きな影響を与える。拙速は避けるべきだ。目的に照らし最善策を慎重に検討し、見直す場合は十分な説明と周知期間が必要だ。
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2021年02月25日

都市農業の今 映像化 一橋大・農林中金寄付講義 現地へ行けない学生向けに
東京の都市農業の魅力を映像化しインターネット上で公開するプロジェクトに、農業関連ウェブメディアの運営会社「ぽてともっと」(東京都国立市)が取り組んでいる。新型コロナウイルス禍でフィールドワークができない大学生に、都市農業の現状を伝えるのが目的だ。新規就農者やベテラン農家、JA関係者のインタビューを中心とした動画を公開し、一般の人にも農業への理解を深めてもらう。
農家ら取材 魅力深掘り ネットでも広く発信
動画作成は、同社代表の森田慧さん(25)の母校でもある一橋大学の経済学研究科で行われている、農林中央金庫の寄付講義「自然資源経済論」のプロジェクトから相談されたことがきっかけ。5分半~8分の動画を計8本作成した。
コロナ禍の影響で、学生は農業現場のフィールドワークができない状況が続いていた。プロジェクトの担当者から「学生に現場を知ってもらう手段はないか」と相談され、映像で伝えることを提案した。
取材には昨年秋から取り掛かり、生産緑地で新規就農した東京都日野市の川名桂さんや、八王子市で酪農を営む磯沼ミルクファームの磯沼正徳さんら農家を当たった。東京の地場産野菜の集荷・販売を手掛ける国立市の「エマリコくにたち」や、販売・購買・指導など事業が多岐にわたるJA東京むさしも取材した。
農家の車に1日同乗させてもらって話を聞いたり、JAや流通関連会社に1週間かけて取材・撮影したりした。現場の様子を深く知ることができたという。
同大では昨年末、動画を基に学内でシンポジウムを開催。森田さんも交えて都市農業について理解を深めた。
動画は同社制作の都市農業をテーマにしたサイト「モリタ男爵の農業まるごとリポート」でも、1月下旬から公開している。
以前から日本の農業に関心があり「今後は全国の農業現場を映像に残すことに取り組みたい」という森田さん。「農家の話を聞き、撮影することで、立体感のある記録として残せる」と、映像の持つ効果を生かして次の世代に農業を引き継いでいきたい考えだ。
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2021年02月23日
就農後の収入は? 試算サイト夏にも開設 品目・面積入力で 兵庫県
兵庫県は、就農後の収入を手軽に試算できるサイトを今夏にも開設する。栽培品目や作付面積を入力すると、年間の売上高や労働時間が算出される。複数の栽培品目を組み合わせて試算することも可能にし、県は就農希望者に活用してもらいたい考えだ。
2021年度一般会計当初予算案に計上した。これまで、農業所得は実態がつかみにくく、就農後の生活設計を立てづらいとの課題があった。
サイトで入力が必要なのは、①米やトマト、イチゴといった栽培品目②各品目の作付面積③JAや直売所といった農産物の販売先――などを想定。県内でも地域ごとに販売価格に差がある品目もあるので、就農する地域の入力なども検討する。
入力後は年間の売上高や労働時間の他、資材費や販売手数料といった経費が瞬時に算出される。売上高と経費は1000円単位、労働時間は10時間単位で示すことを想定。売上高と経費から年間の収益が見通せる他、年間労働時間から必要となる労働者の人数も把握できるという。
サイトは、ひょうご就農支援センターのホームページに開設する。利用料はかからない。県は「(同サイトを通じて)就農希望者が就農後の生活設計を立てやすくなる。就農の追い風にしたい」(農業経営課)と話す。
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2021年02月22日
梨の収穫量2割減 主産地で天候不順 20年産
2020年産の日本梨の収穫量が17万500トンとなり、前年から3万9200トン(19%)減ったことが農水省の調査で分かった。主産地の関東で、天候不順などから収量が落ち込んだことが響いた。果実を収穫するために実らせた結果樹面積は1万700ヘクタールで、同400ヘクタール(4%)減。農家の高齢化などを背景に、減少が止まらない。
10アール当たり収量は1590キロで、前年を300キロ(16%)下回った。収穫量が全国3位の茨城、5位の栃木などで、開花受粉期の低温で着果数が減ったことや、夏場の天候不順で生育障害が多発し、収量が大きく落ちたことが影響した。茨城は1460キロで同30%減、栃木は1540キロで同37%減った。全国4位の福島も同17%減、6位の鳥取も同23%減った。
全国の出荷量は15万8500トンで、同3万5400トン(18%)減った。農家の高齢化など生産基盤の弱体化を背景に結果樹面積は減り続けており、10年間で3200ヘクタール(23%)減っている。
同省は、昨年改定した果樹農業振興基本方針で、日本梨を含む果樹の生産基盤強化に向け、生産性の向上が見込める省力樹形の導入を推進する方針を掲げた。21年度予算案には、日本梨の改植でジョイント栽培を導入する場合に10アール当たり33万円を助成するなど、果樹の支援対策事業に51億円を盛り込んでいる。
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2021年02月22日
鳥インフル管理点検結果 大規模「順守」97%超 農水省
農水省は19日、鳥インフルエンザの多発を受けて全国一斉に実施している飼養衛生管理の自己点検の3回目の結果を公表した。今回から鶏で100羽以上を中・大規模農家、同羽未満を小規模農家として区分。合計1万4633農場のうち、中・大規模農家の約7377農場で全7項目の順守率が97~99%となり、いずれもこれまでより改善した。全農場での順守へ向け調査を続ける。
調査は12月から毎月行っている。……
2021年02月20日
営農の新着記事
営農技術アイデア大賞 黒壁さん(北海道)に栄冠
日本農業新聞は24日、「営農技術アイデア大賞2020」の審査会をオンラインで開き、大賞に北海道新篠津村の黒壁聡さん(64)が考案した、水稲育苗箱の運搬器具「はこらく」を選んだ。自作した金属の枠で3、4枚重ねた育苗箱を挟み込み、まとめて持ち運ぶ仕組み。機械化できていなかった育苗箱の運搬に、効率化の道を開いた点が評価された。
黒壁さんは水稲農家でシーズンには約8000枚の育苗箱を使う。……
2021年02月25日

20年度全国農大校プロジェクト 大臣賞に田中さん(大阪)
全国農業大学校協議会は24日、2020年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会の結果を発表した。最高位の農水大臣賞には、大阪府立環境農林水産総合研究所農業大学校2年の田中麻綾さんの「『高齢者生きがいづくり』につながる、高齢者によるぶどう栽培方法の検討」が輝いた。
田中さんは生きがいを持った高齢者が減少する現代で花蕾(からい)から大きな房ができる喜びは心を豊かにするきっかけになると考えた。……
2021年02月25日
ジャガイモシロシスト 抵抗性品種「フリア」の効果確認 北海道の産地 21年度に本格導入へ 農研機構
ジャガイモの品種「フリア」が、難防除害虫のジャガイモシロシストセンチュウの土中密度を大幅に減らせることを、農研機構・北海道農業研究センターが確認した。2015年に同線虫が見つかり、今年2月時点でも道内468ヘクタールで発生している。産地のJAでは効果的な対策として21年度から本格導入を見込む他、同センターはさらに経済的に有望な品種開発を目指す。
2021年02月24日

ビールかすで大幅増収 黒大豆 最大5割 岡山市の若手農家グループ
岡山市の若手農業者クラブ「アグリドリームSETO」は、黒大豆の栽培でビールかすを施すと、慣行栽培に比べて10アール当たりの収量が最大で5割増えることを確かめた。化学肥料との組み合わせで生育が早まり、大粒の割合も増えた。土壌の養分バランスの改善で課題だった連作障害の対策にも期待する。
同クラブは同市東区瀬戸町の若手11人で構成する。地元のキリンビール岡山工場から出るビールかすを土づくりに活用し、2020年産に市の助成を受けて試験した。……
2021年02月24日

「南農ナシ6号」育成 病害に強く高糖度 長野県
長野県は、中生品種の梨「南農ナシ6号」を育成した。黒斑病や黒星病といった病害に強い。高糖度で果汁が多く、すっきりとした甘味としゃきしゃきした食感が特徴。県では県オリジナル品種「南水」につなぐリレー品種として期待を寄せる。
県南信農業試験場が育成した。……
2021年02月24日
食品残さリサイクル飼料化 加熱新基準でセミナー 中央畜産会など
中央畜産会と全国食品リサイクル連合会は19日、食品残さでつくるエコフィードの製造業者や養豚農家に向けて「食品リサイクル飼料化セミナー」をオンラインで開いた。4月から加熱の新基準が施行されるのを前に、手続き面での注意点や、栄養成分変化などについて農水省や有識者らが説明した。
新基準では、生肉などが混入している可能性があるものについて「攪拌(かくはん)しながら90度、60分以上かこれと同等以上の加熱処理」が必要となる。……
2021年02月23日

酪農に欠かせぬパートナー ヘルパー確保へ環境改善 北海道で運動 全組合に就業規則整備
北海道で酪農ヘルパーが安心して働けるよう、労務管理の改善を呼び掛ける運動がスタートした。道内86の全ての酪農ヘルパー利用組合で就業規則を整備。酪農家の働き方改革や規模拡大に伴う人手不足対策につなげる。都府県でも酪農ヘルパーが逼迫(ひっぱく)する中、酪農ヘルパー全国協会は運動は全国のモデルになるとみている。(尾原浩子)
北海道酪農ヘルパー事業推進協議会が、職場のルールを明確にするため就業規則整備率100%運動を始めた。就業規則が既にある場合は、雇用実態や働き方改革に対応しているかの点検を実施。ない場合は就業規則を作成する。新型コロナウイルス禍でヘルパーの確保が難しくなったことを踏まえ、環境整備に乗り出した。
協議会によると、2019年8月時点で道内の酪農ヘルパーは832人。必要数に比べ156人足りない。働き方改革関連法のうち、有給休暇5日以上の取得は酪農ヘルパー利用組合にも適用されることも踏まえ、労働環境を改善してヘルパーの確保や定着につなげたい考えだ。
道内では酪農家1戸当たり年間平均23日、酪農ヘルパーを利用する。稲作や畑作などと比べ酪農家の労働時間は2倍以上で、酪農家の後継者対策にも酪農ヘルパーは欠かせない存在だ。
農水省は来年度、新たに待遇改善に取り組む組合を支援する「酪農経営安定化支援ヘルパー事業」を始める。協議会は事業を活用し、「酪農ヘルパーを職業の一つとしてPRしていく。地域を挙げて環境改善を進めたい」(事務局のJA北海道中央会)とする。
酪農ヘルパーの不足は道内だけでなく全国的な課題だ。酪農ヘルパー全国協会によると、ヘルパーは必要な人数に比べて2割程度足りない。就業規則の整備を呼び掛けているが、地域を挙げて整備を目指す運動は先進的という。
JAオホーツクはまなすが事務局の「酪農ヘルパー組合はまなす」は、就業規則を整備し、ボーナスなど給与体系も改善してきた。関東での就農フェアやハローワークなどで酪農ヘルパーを募集。現在、13人が100戸の酪農家で作業を担う。
20年ほど前は、冠婚葬祭や子どもの行事などで搾乳ができない場合、近所の酪農家の応援などで対応した。しかし、近年は1戸当たりの経営規模が拡大し、手伝う余裕がなくなってきている。
管内の滝上町で60頭を飼育する同組合の長屋辰之介組合長は「酪農家の一人一人が意識改革し、作業員ではなく、パートナーなんだと感謝するような受け入れをしたい」と話す。希望すれば就農も支援。「就農者や酪農ヘルパーがいると、次の移住者につながり好循環ができる」と見据える。
3年前から働き、大阪府八尾市から移住した酪農ヘルパーの瓦渚紗さん(23)は「就業規則が整備されていると安心して働ける。働く上では酪農家との意思疎通が一番大切。やりがいがある仕事だと、都会の人にも知ってほしい」と話す。
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2021年02月22日

白未熟粒米の発生予測 早期対策へ 花を解析、 特許出願 新潟県農総研
新潟県農業総合研究所は、採取した稲の花のサンプルから白未熟粒の発生率が予想できる診断技術を開発した。見た目では分かりづらい高温障害のリスクをいち早く判断し、品質が低下する前に水管理などの対策実施につなげる狙い。診断技術は現在、特許出願中だ。……
2021年02月21日
和子牛 5年ぶり60万円台 枝肉下落が影響 20年
2020年に全国の家畜市場で取引された和牛子牛の平均価格が前年を1割下回り、5年ぶりに1頭60万円台となったことが、日本農業新聞の調べで分かった。新型コロナウイルス禍による枝肉価格の下落が影響した。現在は再び上昇し1頭80万円に迫るが、価格の乱高下は高齢の繁殖農家の離農や肥育農家の経営圧迫につながりかねない。価格安定に向けた対策が改めて求められている。
農畜産業振興機構のデータを基に本紙が調べた。20年に全国103市場で取引された黒毛和種の子牛は前年比0・6%減の31万228頭で、平均価格は同12%安の67万3808円だった。
新型コロナ禍による枝肉価格の低迷で、購買者である肥育農家の資金繰りが悪化し、子牛価格も5月に前年比2割安の約59万円に下落。6月以降も10月まで60万円台での取引が続いた。再生産が難しい価格ではないが、急激な下落で「高齢繁殖農家が離農するきっかけになりかねない」(市場関係者)との声も多かった。
枝肉相場が回復し、子牛価格も現在は前年を上回る高値で推移しているが、今後の動向は楽観視できない状況だ。「景気悪化で消費者の節約志向が強まり、年明け以降スーパー向けの和牛の販売に苦戦している」(大手食肉メーカー)との声もあり、和牛の消費環境には不透明感が漂う。
肥育農家の経営が悪化し、再び子牛価格が大幅に下がれば、離農の加速による生産基盤の弱体化につながる。全国肉牛事業協同組合は「和牛の消費拡大と、子牛の価格下落時に繁殖農家をしっかり支えられる両輪の対策が重要」と提起する。
[解説] 価格安定へ基盤強化を
2020年の子牛価格の下落は、肥育経営の苦境の表れだ。コロナ禍による和牛の販売環境の急激な悪化に、高値で導入した牛の出荷が重なり、多くの生産者が赤字に陥った。
今後、肥育農家の資金繰り対策として措置されていた肉用牛肥育経営安定交付金制度(牛マルキン)の生産者負担金の納付や、コロナ禍で借り入れた資金の返済などが始まれば、さらに厳しくなる。肥育農家の経営悪化は子牛価格に直結する。両者が共存できる安定した子牛価格の実現へ対策を急ぐべきだ。
子牛価格はこれまで、頭数不足による高値が続いてきた。輸出やインバウンド(訪日外国人)需要で枝肉相場が高かったことで、肥育農家も高値の子牛を買い支えることができた。だが、コロナ禍で様相が変わった。和牛の外食需要は低迷が長期化している。国内の家庭消費は活発化しているが、安価な輸入牛肉との競合は激しい。
再生産を可能にしつつ消費者が求める価格で安定的に和牛を供給していくためには、基盤となる子牛の安定供給が欠かせない。繁殖農家の戸数はこの5年で2割弱減ったが、畜産クラスター事業などを活用した増頭が進み、繁殖雌牛の数は増加傾向にある。この流れを止めないことを前提に、家庭消費の高まりなど、消費の変化に合わせた和牛生産の在り方を、国、業界が一体となって考えていく時だ。
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2021年02月20日
鉄欠乏土壌でも大麦育つ謎解明 東京農大グループ
東京農業大学の樋口恭子教授らの研究グループは、大麦の一部の品種で、鉄が欠乏する土壌で育つ仕組みを解明したと発表した。
光合成に関わる遺伝子が通常より……
2021年02月19日