協同へのまなざし 地域連携鍵握るJA 摂南大学農学部教授 北川太一

北川太一氏

 今から20年以上前のことであるが、当時、西日本の農山村地域で広がりつつあった「集落型農業法人」に関する調査を行ったことがある。

 それは、集落農場型生産法人など地域によってさまざまな名称で呼ばれていたが、1集落もしくは複数集落を範囲として、集落営農やむらづくりの活動が基盤となって、地域に住む人たちの合意によって設立された法人であり、構成メンバーの多くが、出資や運営に関与し法人が行う事業に従事するものであった。
 

住民主体が基礎


 事業の内容は、地域が抱える課題解決を目指しながら、法人ごとにさまざまな活動が展開されていた。農地の利用調整や農機の共同利用など、通常の集落営農組織が取り組む活動にとどまらず、農産物の加工・販売、住民向けの生活支援や福祉、資源や環境の保全、都市住民との交流、日用生活品の販売(小店舗の運営)などである。

 2007年産から国によって開始された品目横断的経営安定対策(後に、経営所得安定対策)を契機として、「担い手」の要件を満たすための集落営農組織の設立とその法人化が急ピッチで進められた。

 しかし、集落型農業法人は、その多くが、国の政策が始まる前に設立されたものであり、政策対応型の集落営農組織とは内容がやや異なる。自治体や団体などの支援を受けながらも、その大部分が地域農業の維持、農地の保全、さらには地域における暮らしの防衛や都市との交流を目指したむらづくりなど、住民による自律的な動きがベースにあった。
 

労協新法と合致


 さて、昨年12月に労働者協同組合法が成立した。本紙(20年12月5日付「論説」など)でも解説されているように、労働者協同組合は、「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織」(第1条)と規定されている。働く仲間たち自らが出資し、意見を述べ合いながら運営し、自らの事業に従事する。まさに、集落型農業法人の特徴とほぼ合致する。また、労働者協同組合法では、届け出制で比較的容易に組合をつくることができるとともに、組合と組合員とが労働契約を締結することで労働法規が順守される。

 協同組合であるJAは、組合員の利益増進を目的とした経済組織である。と同時に、地域に開かれた存在でなければならない。事業の効率化や、経営の合理化だけに力を注ぐだけでは、いずれ一般企業との差異はなくなってしまうであろう。

 集落型農業法人に限らず、地域においては、さまざまな有形・無形の資源を活用する活動が存在している。そこでは、人と人とがつながる関係が重視されている。JAが、こうした地域の活動とそこに関与する人たちに向き合い、新しい協同の仕組みを創出するためにも、労働者協同組合に関心を持って、それを生かしていくことが重要である。

 きたがわ・たいち 1959年、兵庫県生まれ。鳥取大学、京都府立大学、福井県立大学の勤務を経て、2020年4月より現職。福井県立大学名誉教授。放送大学客員教授を務める。主な著書に『新時代の地域協同組合』『協同組合の源流と未来』など。
 

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