救え忙殺の保健所 コロナ感染の子ども観察 注目集める「静岡市方式」

保健所に代わって電話で診察する静岡厚生病院の田中医師(本人提供)

 JA静岡厚生連静岡厚生病院(静岡市)の小児科診療部長、田中敏博医師は、新型コロナウイルスに感染して自宅やホテルで療養する中学生以下の子どもに対し、保健所に代わり電話で診察している。静岡市保健所などによると、同様の取り組みは全国で同病院が唯一。子どもや保護者らの不安を取り除くとともに、感染者への対応で多忙を極める保健所職員の業務軽減の一助になっている。(前田大介)

 診察のきっかけは昨年8月、市が地元の医療関係者らと、日本小児科学会の考えに準じて、新型コロナに感染した子どもは比較的軽症なため、原則「自宅などで療養する」と申し合わせたことだ。

 ただ、自宅療養になれば相談できる主治医が周りにいないことになる。田中医師は、子どもらの不安を拭うためにも「電話などで対応できる臨時の主治医が必要」と提案、自ら診察を買って出た。

 昨年10月から診察が本格始動。2月17日現在、新生児から15歳までの55人(濃厚接触者含む)と、保護者ら52人(同)を診察した。

 まず対面で初診した後、療養する自宅などに田中医師が連絡し、体温、心拍数、酸素濃度、病状などを確認した上で、今抱えている悩みなども聞く。時間は午前9時ごろと午後5時ごろの1日2回で、結果は保健所に報告する。現時点で症状が悪化して入院した例はないという。

 田中医師は、この診察を市内の公的機関などと連携して構築したことから「静岡市方式」と命名。「どうやってやるのか」などと、県外から問い合わせが来ているという。「保健所の負担が減るこの方式が全国に広まればうれしい」と力を込める。

 市保健所はこの動きを歓迎する。同保健所は、新型コロナ関連(患者、濃厚接触者)で1日最大約600人の健康観察をしている。1人につき確認事項が10以上あり、10分程度要することもある。保健師数人で対応しているため、1人ずつ丁寧に向き合うのは至難の業だという。

 加治正行所長は「業務が軽減し助かっている。通常は保健師が聞き取るが、小児科の医師が診察するだけに、子どもや保護者の安心感が違う」と話す。

 全国の保健所の業務に詳しい浜松医科大学(静岡県浜松市)の尾島俊之教授によると、コロナの影響で患者が多い地域では業務が逼迫(ひっぱく)し「労働時間が過労死ラインを超える職員が目立っている」という。

 保健所数が多い時に比べ半減していることにも触れ「行財政改革などで保健所の数を減らし、職員数も減ったことが、この事態の一因」と指摘。その上で「臨時で主治医を買って出る医師がもっと増えてほしい。小児科に限らず、高齢者にも対応できる医師が出てくれば、全国的な業務軽減につながるはずだ」と期待する
 

<メモ>


 厚生労働省の統計(速報値)によると、国内の10代以下の新型コロナ感染者は、10日現在で3万8226人。感染者全体(41万3495人)に対する割合は9%となっている。死者は1人も確認されていない。
 

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