国産麦に過剰感 増産に出口戦略不可欠

 食料自給率の向上を目指して政府は、小麦など国産麦類の増産の旗を振る。しかし2年連続の豊作で過剰感があり、価格にも影響が出ている。麦作の安定には、新たな需要を開拓する出口対策が急がれる。

 農水省によると4麦(小麦、二条大麦、六条大麦、裸麦)の作付面積はこの数年微減または横ばいだが、2019年産は豊作で、収穫量は小麦が前年産比36%増の103万7000トン、大麦・裸麦が同27%増の22万3000トンだった。20年産も豊作で、例年より国産在庫が多い。

 過剰感は価格にも影響。全国米麦改良協会のまとめによると昨年9月の21年産国産小麦の播種(はしゅ)前入札では、平均落札価格が前年産比12・8%安と、上げ基調から一転した。輸入麦の価格低下にも引っ張られた。大麦・裸麦も販売で苦戦。二条大麦も、1月時点で「精麦業者などが19年産の在庫を抱え、20年産の荷がまだ動いていない」(JA関係者)という。

 一方、食用麦は小麦で約9割、大麦・裸麦で約8割を輸入している。食料・農業・農村基本計画で政府は、30年度までに小麦を108万トン(18年度76万トン)に、大麦・裸麦を23万トン(同17万トン)に増やすとの生産目標を定めている。しかし、21年産でも過剰感が解消されなければ、今秋播種する22年産の作付けに影響しかねない。官民挙げて、輸入麦から国産への切り替えを強力に進めるべきだ。それには需要と供給のミスマッチの解消が求められる。

 例えば小麦。タンパク質含有量の高い順にパン用(強力粉)、中華麺用(準強力粉)、うどんなど日本麺用(中力粉)、菓子用(薄力粉)に分かれる。国産は8割強で中力粉、薄力粉向け品種が栽培され、消費量の多い強力粉、準強力粉向けは少ない。輸入麦との価格勝負は難しく、需要に応えられる生産・供給体制の構築が必要だ。

 中華麺用の福岡県の硬質小麦「ラー麦」(品種名=「ちくしW2号」)は、実需と一体で県や産地が栽培技術を確立したことで新たな需要を開拓した。生産が拡大するパン用小麦も同様だ。健康志向の高まりで裸麦やもち性大麦(もち麦)の需要も伸びている。需要を見極めた品種・品目の選定と、それに応じた栽培技術の導入が麦作経営を安定させる常道である。

 西日本では、米麦・大豆を柱とする土地利用型農業を集落営農組織が担う地域が多い。21年産米では主食用米からの品目転換に加え、酒造好適米の減産も重くのしかかる。過剰感から麦類の生産意欲も低下することになれば、大規模な不作付けが起こりかねない。

 政府は、需要を捉えた生産拡大と安定供給の実現に向けて「麦・大豆増産プロジェクト」を推進。団地化と営農技術の新規導入、備蓄倉庫の整備、産地と実需とのマッチングや新商品開発などを支援する。成果を早期に上げることが重要だ。
 

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